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新しい素銅鐔は経年で味わいが増して面白い

個人的な意見だが、素銅は経年変化してこそ味わいが増すものだと思っている。
銅は空気に触れる事で酸化が進み長い年月を経る事で、「赤褐色→褐色→暗褐色→黒褐色→緑青色」に変化していく。
10円玉の色を見れば分かりやすいが、新しい10円はピカピカだが、30年以上も前に作られた10円玉はくすんで黒っぽくなっている。


昔理科の実験で銅粉末を加熱すると黒くなったが、あれはつまるところ銅を過熱した事で空気中の酸素とくっついた為である。だから重さを測ると少し重くなっているはず。これは酸素の重さだ。

以下は以前手に入れた埋忠を写した現代鐔であるが、既に表と裏で色が変化してきている。
鐔箱にずっと入っていたのだろうが、表面の方が常に空気と触れていたからと推測する。

表側は酸素と触れやすかったからか徐々に黒くなってきている
裏側は布と接地し続けていたからか明るい赤褐色を維持している

これが更に時代を経る事で、きっと以下の右側の鐔のような色味になってくるはずである。その時にこの鐔に詫びが加わり真の良さが発揮されるのではないだろうかとワクワクしている。

ところで埋忠明寿はこうした素材の経年変化を見越した上で製作していたのだろうか。
以下は真鍮地であるが、実に良い味を出している。

埋忠明寿作。刀剣博物館にて。

何百年後に初めて自分の美が完成する、ともし考えて製作していたのだとしたら鳥肌が立つ。
結果として時代を経た事で更に詫び寂を感じる美しい作になっている事は疑いようのない事実である。
今後も以下の鐔の経年変化を楽しみながらこの鐔の真の良さを共に作り上げていきたいと思う。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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