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銀布目象嵌鐔

一見小汚いがよく見ると全体が銀の布目象嵌で華やかに彩られている鐔を鑑賞。
覆輪部には唐草模様がデザインされている。
素材は特定が難しいが、鉄などの素材に思えるが匂いから山銅かもしれない。いまいち自信がない。
横72.7㎜×縦74.6㎜×耳厚6.3㎜、切羽台厚5.3㎜


布目象嵌部の拡大。耳部も縁まで丁寧に象嵌が施されており、錦布を触っているような感触が鐔から得られる。

茎孔や櫃孔を覗くと3枚合わせなどの張り合わせではない事が分かる。

切羽台付近は普通卵型に縁取られるイメージがあるが四角く縁取られているのは何か理由があるのだろうか。
布目象嵌の作業性からだろうか。

象嵌のデザインに目を向けると耳全体は唐草模様であるが、以下の赤丸で囲った部分には龍らしき何か生き物にも見えるようなデザインの布目象嵌も見て取れる。
龍の眼と口らしき部分には金を用いているようである。


覆輪の接合部分は見つからず、但し鋤出しで掘り下げて耳部を作っているような気も感じられない。
布目象嵌の線が多く接合部が分からないが、やはりどこかに接合部があるものと思われる。

さてこの鐔はどこ系統のものなのだろうか。
南蛮系の鐔、もしくは加賀象嵌系の鐔だろうか。
古正阿弥系の鐔にも銀の布目象嵌は見て取れるのでそっち系統の鐔だろうか。
櫃孔の形状が左右で同じというのも何かヒントになり得そうでもある。
この場合、小柄と笄孔がどちらでも使える(両面を使える)というメリットがあるが、こうしたものは京物に多いと以前刀屋さんで聞いた事がある。
桃山時代あたりに文化の中心部であった京で当時の南蛮文化を取り入れた鐔なのだろうか。
しかし布目象嵌がかなり状態良く残っている事もあり結構新しく幕末頃と見るべきか悩ましいところ。

安くてつい衝動的に買ってしまったが丁寧な造り込みで良い鐔に感じる。



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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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