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為打銘は刀工の歴史を紐解く鍵

刀の茎に所持銘を入れてこの刀は俺のものだ!と言い始めたのはどうやら室町頃から増えてくるようで、古名刀などにも切付銘(後から彫った)で所持銘が刻まれている事もある。
この場合は刀の作者とその刀の所有者の関係性はないわけだが、新刀以降になると「○○為之造」のように注文を受けて作者がその人の為にこの刀を作った、という事が分かる刀が増えてくる。
為打などとも呼ばれている。

ちょうど先日「かえってきた堀川國廣」展(2023/5/7まで古河歴史博物館にて開催中)の図録を入手したが、その中に掲載されていた論文の中に「豊田安宗所持銘について」と題した論文があった。

カタログは数に限りがあるようですが、丸英刀剣さんのサイトからも購入出来ます


國廣の刀にはまま所持銘があるが、長らく不明であった豊田安宗について、
國廣が有力者と関わりがあった事を示す内容でとても楽しめた。
考えてみれば同じ所持銘でも「為打」は作者と注文者の繋がりが直接あった事を示すわけであり、所持銘(依頼者)を調べる事で作者の人間関係、交流関係が見えてくるというのは確かにその通りだと感じました。

源清磨にしても「為窪田清音君 山浦環源清麿製 弘化丙午年八月日」という太刀が現存しており、窪田清音という人物が実際に清磨と関係があった事をこの太刀を通して伺い知る事が出来ます。

この為打銘の入った刀は、例えば本多平八郎(本多忠勝)のように有名な人の名であればもてはやされますが、誰それ?という人の所持銘の入った刀は意外にお店にポンと置いてあったりします。

例えば以下の長船清光の作には「播州住人為大塩右京亮作之也」と為打銘が刻んであります。

(画像出典:銀座誠友堂

この大塩右京亮という人物が誰かは分かりませんが、こうした事を一つ一つ調べていくと刀剣本には載っていない刀工の歴史が得られそうです。
そういう意味でも為打銘の刀というのはその刀工の歴史を紐解く非常に貴重な物なのかもしれません。
但しあくまで為打銘でないといけません。
「○○所持」というただの所持銘は冒頭に書いた通り作者との関連性があるとは言い切れませんので。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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