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埋忠鐔を見て

桃山三名工として知られる信家、金家、埋忠明寿。
その埋忠明寿の作の中に、埋忠真鍮と呼ばれる黄色みがかった茶色っぽい真鍮に、墨絵のようなデザインが施された、まるで焼き物のような鐔がある。
墨絵の部分は赤銅で表現されているので、簡単に取れる事はなく、実の部分には象嵌なども施されて写真では伝わらない味わい深さを感じる。

以前ずばり明寿の作ではありませんが、埋忠銘の似たような鐔を拝見させて頂いた事があり感動したのでその時の事など書いてみようと思います。

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(画像出典:「特別展 埋忠 桃山刀剣界の雄」より)

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(画像出典:「特別展 埋忠 桃山刀剣界の雄」より)


①耳の肌触りが優しい

艶々となだらかに盛り上がった耳は手袋越しでも触った時に柔らかさが伝わってくる。
全ての耳の打ち返しにおいてそれぞれ異なった高低差があり、例えるなら以下のような茶碗を持った時に手で表面の凹凸を楽しめるような感覚に近いだろうか。
因みに茶碗についてずぶの素人なので細かい事は全く分からないがあくまで雰囲気という事で。

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(画像出典:古美術 永澤 作家 樂吉左衛門

以下が埋忠鐔の耳。

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(画像出典:「特別展 埋忠 桃山刀剣界の雄」より)


②皺が良い味を出している

埋忠真鍮という独特の色をしたこの黄色がかった色味は薬品により出しているとのこと。
その際に表面に皺のようなヒビのようなものが見られる。
これは必ず見られるそうで、無いと偽物と言っていいのだとか。
この皺がまた焼き物感を出していて素晴らしい。
この黄色がかった色とも雰囲気が合っている。
埋忠明寿の凄い所はこういった質感の鐔を生み出した上でそこに墨絵を赤銅で表現して絵画のような焼き物のような「和」を創造した事ではないかと感じずにはいられない。

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(画像出典:「特別展 埋忠 桃山刀剣界の雄」より)


③良く題材にされる九年母図

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九年母は俳句や短歌によく登場する果物で、古くから栽培されているミカンの一種です。とても酸っぱいらしい。

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(画像出典:花図鑑 九年母

九年母は子孫繁栄の意味があるとされ大名家などから特に好まれたようです
私が拝見させて頂いた鐔はこの実の部分に象嵌が施されており、オレンジや銀ぽく見えた記憶がある。
その象嵌部分や赤銅で表現された墨絵の部分も微かに盛り上がりを感じて楽しめるのも埋忠鐔の良い所


④終わりに

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(画像出典:「特別展 埋忠 桃山刀剣界の雄」より)

今写真で改めて見ていても葉先の表現に至るまで力強く描かれており構図も相まって味わいがあり素晴らしい。
そういえば他の画像で葉っぱがひょろひょろっとして雑な描かれ方をされたようなものがあったがあれは果たして同一人物による作なのだろうか?
埋忠明寿の鐔についてはまだまだ奥が深そうですが、出来る事ならこういった作を手元に置いて楽しみたいものです。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

明寿鐔と言えば表面に現れた細かな皺ですが、そういった物をルーペで見るとどう見えるのか?などについて書いていますので興味ある方はご覧ください。

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