見出し画像

【ハイファンタジー小説】復讐の女神ネフィアル 第6作目『ため息の響く丘』 第6話

 メイスは神聖なる武器である。他の武器とは異なる。それはみだりに武力を用いぬと決意した者の武器である。

 ただし、用いる時には最大限の威力を発揮させるのだ。普段からそうした覚悟を持つようになる。

 それゆえに神官となる道を選んだ者は好んでこの武器を使う。他の武器を使う者は、神技の力に陰りを生じる。ゆえにメイスは神聖なる武器である。

「神聖なる武器を用いる者には自制心が生まれる。そう、例えばだライナス、愚かで自惚れ屋の堕落したジュリアン神官を見ても、即座にその頭上に武器を振り下ろしたりはしないような、だ。君に分かるだろうか? とりわけ、そうして欲しいと望む者がいる場合に自制心を発揮する重要性が」

 アルトゥールは内心のつぶやきを誰にも聞かせなかった。もう何度もライナスとはこのやり取りをした。友人が分かってくれたようには思えなかった。

「もちろん、君はそんな短絡的な解決策を僕にやって欲しいわけではないな。僕は、日々これ周囲に目配りをして、おのれを見失わず、さりとて暴走して止まらない馬のようにもならずに生きている。そうやって生きる重要性を、出来れば君には分かって欲しいな」

ここから先は

1,481字
この記事のみ ¥ 100

お気に召しましたら、サポートお願いいたします。