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囚人と看守の実験

海外で有名な囚人と看守の実験をご存知でしょうか?
ただの一般人でも役を与えられたらその通りの振る舞いをするようになるというやつです。

北鎌倉を拠点とする造形作家さんの個展に足を運びました。
猫の置物の後ろには綺麗な鳳凰が描かれた屏風。
なんとも神々しい作品でした。
作家さんご本人もいらしたので少しお話しをしました。
そこで屏風の絵について作家さんにこんな質問をしたんです。

「これは背景を全て描いてから中央の鳳凰を描くのですか?」

なんとも初心者丸出しの質問。
それに対して作家さんは

「そりゃそうでしょ。背景から描かないでどうやって描くの?」

私はしばらく固まってしまいました。
たしかにレベルの低い質問をした私も悪いですが、どうして「そうです背景から描きます」と普通に答えられないのか。
感じ悪い人だなあと思い、その場を離れました。

別の日、私は喫茶店に行きました。
店員さんが陶芸にハマっているという話で盛り上がってる中、私はここでも質問。

「陶芸って、カップ以外も作れるんですか?」 

しまった!また低レベルな質問をしてしまった。
ちょっと考えればわかることなのに。
すると店員さんは

「そうなんです、いろいろ作れますよ!箸置きなんかもできます!」

と笑顔で答えてくれました。

この2人の違いはなんだろうと自宅で考えて、ひとつの結論を出しました。
それは「先生」と呼ばれてるかどうか。

北鎌倉の造形作家さんはみんなから「先生」と呼ばれて海外からもバイヤーが来るほどの人です。
悪い言い方をすれば、そのような環境に身を置けば態度も大きくなります。
一方で喫茶店の店員さんは陶芸歴20年のベテランではあるものの趣味の範囲でやってるだけなので、おそらく「先生」と呼ばれたことはないはず。

看守役を与えられた人は傲慢になり、囚人役を虐めるようになる。
まさにこれと似ています。
たかが呼び名、されど呼び名なんです。
私も何かの分野で「先生」と呼ばれるようになったらあの造形作家さんのように嫌な人になるのでしょうか。
そうならないように気をつけたいものです。

私はもう二度と造形作家さんの個展には行かないことにしました。
そして陶芸好きの店員さんがいる喫茶店にはちょくちょく通おうと思います。
いつか彼女が作ったカップでコーヒー飲みたいな。

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