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善性バッドトリップ~副作用~

はじめに

この記事は音声作品「善性バッドトリップ『https://hear.jp/sounds/uteoPw』のけっこうな部分を制作した片二重による編集後記です。作品ごとへの思い入れや関係者各位への感謝をこの場を借りて綴っておきたいなと思い、noteを立ち上げました。

きっかけ

こんな作品を作ろうという目標になったのは、アニメ映画『SHORT PEACE』や『MEMORIES』、『迷宮物語』といったオムニバス作品集です。


早いはなしが、いろんな作品を一本にまとめるという「形式」を作ることが一番の目的でした。単品のコラボ音声から、もうひとつ枠組みを広げたような総合的なモノづくりがしたかった、という帰結だったと思います。
「HEAR上で前例がなかったから」がこれまでの僕の目的意識の根底でしたし、たぶん今後も変わらないことだと思ってます。
前例があったらすいません。

ちなみに上で挙げた3本の中だとSHORT PEACEの「火要鎮」、迷宮物語の「工事中止命令」がオススメです。

OP/ED『無釉~Muyu~』

編集に一番時間をかけた作品で、それでいて編集がとても楽しかった作品。

 先ほどの記事の続きで、じゃ~そういった作品を作ろうぜ!と思い立った時、何が一番に来たのか。オープニングでした。
 上で挙げた三本にも全てありましたし、全てに対して僕は「印象派な感じ」という感想を持ちました。
 なんというか、それ単品で成り立っているオープニングというか・・・「オープニングという作品」が正しいでしょうか。特にアニメのオープニングで求められているような、これから見せるもの/見せてきたものを匂わせる役目はここでは必要ないんだなって思った時に、なんかすごくオンリーワンな物を作れるんじゃないかと思いました。
 正直なところ、意味がありそうで意味のないものを作る能力に関してはことHEARにおいてはトップクラスの能力があると自負してます(?)

 これを制作するにあたり、たくさんの人にお力をお借りしました。一人当たりのセリフは多くても3つくらいで、編集の都合でほとんど聞こえない大きさに加工されてしまったりと、HEARないしは誰かとコラボする舞台上では考えられないレベルでぞんざいに扱っているところもあります。この場を借りてお詫び申し上げます。それでもこの作品が成り立っているのは協力してくれた皆様のおかげであることも確信を持っております。
 この場を借りて改めてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 いろんなセリフを重ねてありますが、そのどれもがフレーバーテキストとして丁寧にひねり出した文章たちなので、ひとつひとつ耳をすまして傾聴いただけたら、と思います。

タイトルの無釉ですが、陶芸の仕上げに使われる釉薬というものを使用せずに仕上げた作品の事を無釉と呼ぶらしいです。僕個人としては夢遊にかけた面もありますが。
これの制作を決める少し前にまぁいろいろしんどいことが個人的にありまして。整理のつかない感情を根底に制作を決意した作品だったので、なんかそれっぽいなと安直につけました(笑)

SF落語『猫』

構想自体はかなり前からあったのですが、形にする機会をずっと逃し続けた作品でした。
今回ついに手を出してみたわけですが、まぁ前途多難でしたね(笑)
先ほどの無釉が編集が一番楽しかったと言いましたが、こっちは手探りで作っていく感じがとても楽しかったし、モノづくりと研究って感じの部門でしたね。打ち合わせも何往復としましたし、試作した声を聴いてもらったりして手探りで方向を固めました。
演じていただいたのは百舌鳥さん。以前、講談の音声をHEAR上に挙げてみえまして(https://hear.jp/sounds/_47LMA )、その時すごく衝撃を受けたんですよね。
「流す」ことによって能動的に次を聴く意識をもたせるのがボイスドラマや朗読なのだとしたら、「引き込む」ことで感情で続きを聞きたくさせるのが講談なのか、と。
 これ、演技力じゃなくてその人の言霊といいますか、音声上では出力できてない魅力やエンターテインメント性がなせられる技だと思うんですよね。
気に入りすぎてなんと外出用のMP3プレーヤーにこの音声入れてます(笑)

高座を敬遠していたわけではないのですが。ただ縁がなかっただけといいますか、機会があったら聴こうと思ってたらそのまま20数年経ってましたね。つまるところちゃんとそういった芸能に触れたのがそこがはじめてで、これを聞いた時に沸いた感情が「俺もこういう台本作ってみたい」だったんですよね。ただ、せっかくやるんだから独自要素を織り交ぜてオンリーワンなことしたいなぁっていう面倒くさいタイプの作り手なので僕は。
いろいろ試行錯誤してSF落語、そして「猫」という台本ができました。アンドロイドは電気羊の夢を見るか、という小説のエッセンスを取り込んでます。

というわけで今作のメインコンテンツとして制作し、野望成就のために百舌鳥さんのお力もお借り出来て、結果として、かなり納得のいくものが完成しました。

改めまして、百舌鳥さんご協力ありがとうございました。

ポエトリーリーディング『4K罵倒』

実は企画当初、採用する予定のない作品だったんですよね。
本当はここに「宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島でラップバトルをする」という作品を入れるつもりで、一部関係各所の人にもそういう話はしていたんですよ。
ただ、作品全体のバランス、時間配分(後述)、僕と収録予定だった人のお互いの予定の折り合いがつかない、などのたくさんの要因から今は作る時ではないと判断し、急遽これが入りました。お流れになった方はいずれまたどこかで、ね。
僕は以前「スノウ・クラッシュ」という作品をHEAR上に投稿していたのですが、これ自体は音楽の体裁だけど音楽ではないよなと考えていたところ、多分ポエトリーリーディングだなという結論に落ち着きました。正しい定義は正直わかんないです。
「明るく罵倒されたい」という謎コンセプトで作り始めました。これの前に聞くであろう『SF落語』は声と文を楽しむ作品になるので、聴く側もカロリーが高いだろうという懸念がありました。
そこで、頭からっぽで聴けるような、休憩目的にサラッとした作品を準備することに決め、製作に取り掛かりました。30分アニメで言うCMみたいなものだったと思います。
 もう一つのコンセプトに「死ね」を使わない、というのがありました。プロトタイプには「死なない程度に死んでほしい」という詩も入れていて気に入っていたのですが、断腸の思いでカットしました。
ちなみに作中で言及された輝きを意味する英語のローマ字表記とは「SHINE」です。
 ノストラダムス並みの精度、どれくらいか知ってますか。

朗読『言葉の行方』

 以前、僕となす君とハラヒ君の三人で東京オフ会を開いたいのですが(https://hear.jp/sounds/2o6lHQ)。その際になす君に今作の構想を打ち明け、作品を1つ監修してくれないかとオファー。
 
 最初期の打ち合わせ以外は全てを彼に委ねてあるので、作品自体の裏話や思うところはなす君の口から告げられる時を待ちましょう。僕もいちリスナーと「善性バッドトリップ」を制作した立場からしかものを語れません。
 先ほどから何度も話題にしますが、『SHORT PEACE』や『MEMORIES』、『迷宮物語』は短編作品集です。
 特徴として、その収録作を全部ちがう監督が監修するんですよね。ですからすべての作品にその監督の感性やクセが反映されて初めてオムニバスは完成します。
 全てが独立した作品だと銘しても、同じ人が監修すると、どこかうっすら芯みたいなものが見えてくる。それを壊したくて今回なす君に声をかけました。
 結論としては正解に他ならなかったかなと。なんやかんやネットでのつき合いが長い僕なりの分析なのですが、僕が感性や雰囲気を重視した、いわば作り手目線のモノづくりをする人間だとしたら、なす君は整合性やユーザビリティを重視したや受け取り手目線のモノづくりをする人だと思ってまして(今作だけではなく、他のラジオとかでも)、まさにこれまでとは違う毛並みの作品で、僕では間違いなくたどり着けなかった境地だと思ってます。
 編集にもやはりクセや特徴があり、これまでの作品とは明確に空気感が違う事がわかります。特にボイロの活用方法は「その手があったか!」と頭をガツンと殴られたような・・・おっとこれ以上はやめておきましょう。

 また、是非ゆで太さんの演技にも注目してみてください。置いてきぼりにせず、それでいてすぐ隣のような空気感もなく、なす君の台本を読むのではなく物語を案内するようなタッチの語り口で、主題とのマッチしている感には完成品をはじめて聞いた時に舌を巻きました。

 今作がただの作品集にとどまらず、「モノづくりの枠組みを拡張した、オムニバスたるオムニバス作品集」と名乗ることができたのはなす君とゆで太さんのご協力あってこそのものだと思っております。改めてご協力ありがとうございました。

おわりに

 作品にも触れてくださった上、こんな長い文章にも目を通してくださり本当にありがとうございました。これでも推敲はしたのですが(笑)
 クリエイターのみなさんがHEARが好きな理由、HEARに居座る理由って千差万別だと思います。僕にもあります。それは身も蓋もないこと言うなら「歴史が浅くユーザーが少ない。故に前例がないことがたくさんある」という環境が作品を完成させ発表したいという僕のエゴとかなりマッチしているという背景があります。

 1つのナンバーワンより10個のオンリーワンが欲しいのです。 間違いなく今作はHEARの歴史で新しいオンリーワンを作り上げることができた事に大変満足しています。

 今後、僕はどういう展開をHEARで行っていくかは決めていません。しかし、何かしらの形で発信して、また皆さんの前に顔を出せたらなと思います。
改めまして、制作に協力いただいたみなさま、視聴してくださったみなさま、このページに目を通しているみなさまに厚く御礼申し上げます。

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