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テレワークな日々

 週はじめから、テレワークというものをやっている。会社のパソコンを持ち帰って自宅から会社のネットワークに繋ぎ、データと向き合う数日。ロフトの隅に置いた古い机にパソコンを設置し、自室から階段を上って数歩で出勤終了。通勤時間は不要だし、ジャケットを着る必要も化粧する必要も無い。何たる気楽さ、これは癖になる。 と、思ったのはほぼ初日だけであった。
 在宅勤務ということは移動しないということ。自宅から職場までの移動が何を含んでいたか、家に居て再発見する。歩くこと、外の空気を吸うこと。肩にかけたバッグがずり落ちないよう時折手をやり、信号、すれ違う通行人、バスの時刻を気にする小さな緊張感。通りすがりの民家の玄関先に咲く花の鮮やかな色と微かな香り、街路樹の小さな芽、電線に止まる鳥。バス停までの5分、車内の5分に頭の中をかすめ過ぎる色々な考え。通勤中、体だけでなく五感も働いている。仕事のために場所を変える時間が、自分の感覚に刺激を与えて覚醒させていたのだと気付く。
 自宅で仕事をすると、同じ机の前にずっと座り、見回しても目に入るのは家の壁だけ、トイレに行くのも15歩で着いてしまう。体を動かさないと頭の働きも何となく弛緩してくる。同じ座っているのでも、職場の方が広い場所に沢山の人がいて刺激がある分、外に向けた感覚が起きているらしい。
 リラックスし過ぎの状態は、どうも仕事には向いていないらしいです、私の場合。

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