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朝の思い

目覚まし時計が鳴る前に目が覚める。体温計をくわえながらふと、部屋の隅で丸くなっている飼い兎も、別の部屋で寝ている母も、いずれは居なくなるのだという気が起きて、圧倒的な寂しさに襲われる。自分自身もいずれは消えてなくなるのだと思いついて、人生の意味について考える。かつては未来の時間が限りなく存在する前提で生きていた。年をとるにつれ、経験と思い出が豊富になったとは思うものの、過去とはほぼ幻影にすぎない。私達にあるのは現在だけなのだ。手が届くのは、どうにかすることができるのは。だから今をできるだけ厚くしていくことが、人間に出来る全てのことなのだ。考えるうち、5分が過ぎる。起き上がって、一日を始める。

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