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レーザー彫刻機~ベルト調整によるブレの補正~

はじめに

Ortur Laser Master2の試運転の記事にも書いたんですが、動作スピードによっては彫刻した図柄にブレが出てしまいます。

これを軽減してみます。

ブレている状態とは

組み立て直後の状態のまま、彫刻のテストをしてみます。
使用ソフトウェアはLightBurn。
動作条件は速度6,000mm/min、強度100%で水平方向に移動させています。
ピッチは0.1mmで設定しました。
一見きれいに見えますが・・・

中央の文字を拡大してみました。
両サイドに彫刻が髭のように飛び出ています。
両サイドともおおよそ0.5mmほどの長さが飛び出ています。
この状態をブレていると表現しています。

なぜブレるのか

Ortur Laser Master 2は、X軸(横軸)が1本、Y軸(縦軸)がガントリーの2本のタイミングベルトで駆動しています。
ちなみにY軸は自分で組み立てますが、X軸は組立済み出荷です。
今回水平方向をネタにしている理由がこのX軸が組立済みであるということです。
Y軸は自分で組み立てる際に調整しますが、X軸はパッと見でしっかりしているように見えるのでついついそのまま使ってしまいがちです。
で、ブレる原因なのですが、ベルトの伸びが関係しています。

X軸の構造としてはこんなイメージ。
タイミングベルトの上を歯付きプーリーが回転して移動しています。


レーザーヘッドを右に移動させる場合、プーリーが回転することでタイミングベルトを引っ張って右に移動していくイメージになります。

するとタイミングベルトはゴム素材なのでレーザーヘッドの重さによる慣性の影響で引っ張られた分少し伸びます。
タイミングベルトが伸びきるまではレーザーヘッドは動かないことになり、その分だけプログラムが指示している位置から遅れて動くことになります。
その結果、プログラム上の位置が終点になってもレーザーヘッドはまだ終点に達しておらず、その時点でレーザーの照射が止まってしまうため終点付近で彫刻されないということになります。

たいていのレーザー彫刻機は往復動作で彫刻していくので、左から右へ移動するときは右側、右から左へ移動するときは左側に未彫刻ゾーンが発生します。
これがブレているように見える正体です。
ピッチが細かい場合は、彫刻のエッジがぼやけたように見えることもあります。

ちなみに始点側は一瞬長くレーザーが照射されるので、エッジが濃くなったりヤニが多く出たりすることがあります。

ブレずに彫刻するには

タイミングベルトで駆動しているのでどうしても伸びの影響は消せません。
(ボールねじでもバックラッシュがあるので似たような影響は出ることがあります。)
これを改善する方法は2つあります。

  1. 動作速度を遅くする

  2. ベルト張力を強くする

一番手っ取り早いのは動作速度を遅くすることですが、おそらく半分以下まで速度を落とさないと納得できる結果は得られないでしょう。
そうなると加工時間が伸びてしまうし、レーザー強度の調整も気を使わなければなりません。
今回はベルト張力を強めることでベルトの伸びの影響を小さくする対策をします。

ベルト張力を調整する

Ortur Laser Master 2のX軸ベルトは、写真のようにワッシャーを歯型に引っ掛けて留めているだけです。
ねじを緩めてベルトを引っ張り、掛ける歯を変えればベルト張力が変わります。

1歯引っ張り方向にずらしてみる

1歯分引っ張ってみた結果です。
動作条件は先ほどと同じです。
まだブレていますが髭の長さはだいぶ短くなりました。
もう少し何とかしたいですね。

2歯引っ張り方向にずらしてみる

2歯分引っ張ってみました。
手では引っ張り切れないのでペンチで挟んで引っ張りながらねじ留めしました。
少しだけ髭が見えますが、ブレはほぼなくなりました!
文字のエッジをライントレースすればほぼわからなくなるでしょう。
このようにタイミングベルトの張力を変えるだけでブレは改善することができます。

タイミングベルトの張力を変更するデメリット

このような調整を紹介するには、ベルト張力を強めるデメリットも把握しておかねばなりません。
端的に言えば、タイミングベルトの寿命がかなり短くなります。
具体的には、引っ張る力が強くなることにより、以下のような現象が起きやすくなります。
 ①ベルトが伸びきってしまう(永久変形)までの時間が短くなる
 ②ベルトが切れやすくなる
 ③ベルトの歯型が壊れやすくなる
今回は2歯分引っ張りましたが、これだけ引っ張るとベルトの寿命は半分以下になると思います。
交換用のベルトを常に準備しておいた方がよさそうですね!

さいごに

安価なレーザー彫刻機を使っていて、細かい文字がうまく彫刻できなかったり、円がいびつになったりする原因もタイミングベルトの伸びかもしれません。
うまく調整すれば高価な機材に負けない精度とクオリティを出すことも不可能ではないですよ!

それでは、またの機会に!


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