中華料理を食べに行こう その③


こんばんは

最近フォロー頂いた方には、何で絵描きアカウントが急にnoteで1人語り始めたんだ、と思われただろう。

あと『その③』ってなに?とか

それについてはもう「発作なんです」としか言いようがない。不快でなければ、お付き合いください。

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その①とその②がもう6月くらいの話なので、ざっくりおさらいしておくと、

○京都には京都でのみ育まれた『京風中華』がある
○味は花街の舞妓・芸妓にも食べてもらえるように匂いのきつくない控えめな味
○その歴史は長く、創始者は1920年代に中国からやってきたとある料理人
○現在その料理人の弟子にあたる人々が営業する中華料理店が京都にいくつか点在している。

前の2つの記事もそれらを巡った話をしたが、当然全部は行ききれなかった。今回はその続きである。

おさらいおわり。

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【鳳飛】
京風広東料理といって代表的なのは、ツンとした辛さのあんかけが特徴の『からしそば』が有名であろうが、それと系統を同じくする料理に『からし鶏』がある。

市営地下鉄の北大路駅から10分ほど歩いた所にある「鳳飛」の名物メニューのそれは、からしの辛さと酸っぱさが特徴的な一品だ。
前回行ったときはまさかの定休日という雪辱を味わったが、今回は行けた。

左から餃子、中華丼、からし鶏


ご飯に合うかもと思い、『中華丼』も追加注文した。

実際かなりやみつきになりそうな、鼻に突きぬける辛さがクセになる味である。その日も繁盛していたが、私の両隣の人はどちらもからし鶏を注文していた。
中華丼は、あんかけに隠れて全容が見えないが、もやし・しいたけ・ピーマン・ネギ・エビ、そして筍が入っている。

京都の筍は質が良く、あくやえぐみが少ない。京風中華に採用するには十分なポテンシャルだと思う。

口当たりの柔らかなあんかけと酸っぱ辛いからし鶏とを交互に食べることで、食事に組み合わせを取り入れる楽しみができる。餃子も野菜たっぷりで美味しかった。

【芙蓉園】
阪急河原町駅から徒歩で3分ほど南下した所に居を構える芙蓉園は、ぼんやりしていると素通りしてしまいそうな外観をした質素な佇まいである。というか素通りした。

なんか見覚えがある道だな、と思っていると、そびえ立つ穴子天丼がSNS映えする例の『葱や平吉』の軒先が目と鼻の先にあった。どおりで。

だいぶ前の記事で、京都のソウルフードのひとつは「丼もの」なのではないか、みたいな事を言及していたが、京都の定食メニューはやたらめったら卵でとじるものが多い。味付けもシンプルな鶏ガラを使うことが多く、鶏が好きな県民性(府民性?)なのかもしれない。

芙蓉園の名物メニューはといえば、鶏肉を卵でとじ、鶏ガラで味付けをした『鳳凰蛋(ホウオウタン)』、これも鶏ばっかりである。黄前久美子がここへ来たら、好んで注文してそうだ。

鳳凰蛋のチャーシュー麺セット

味はといえば、これが結構甘い。
なんでも、甘みを出すのにみりんではなく砂糖を使っているのだとか。当時は砂糖も高価なものであったので、それゆえ余計に"鳳凰"なんていう立派な名付けをしたのではないか、という現店主の推測が本には書かれている。

当日は定食セットと迷ってチャーシュー麺セットにしたのだが、この甘さで以てご飯に合わないか、と言われると別にそんな事はないと思う。

久美子は卵焼きを作るなら、砂糖と塩どっち派だろうか、などと考えながら食べた。

チャーシュー麺はなんか素麺みたいなツルツルした麺なのだが、掴もうとするとやたらくっつくので、結局カワウソの頭を食べてるときの杉元佐一みたいになりながら食べた。

この手の中華料理店のカウンターには特に説明もなくからしが当たり前のように置かれているので、料理にちょい足しして"味変カンフージェネレーション"をしても良いと思う。

ちなみに、写真に撮るなと書かれていたので撮っていないが、メニュー表とは別に店の歴史が書かれたラミネート紙が置かれており、それによるとここの店は他とは違う、父の代から受け継いだ元祖『からしそば』を当代が今風に再現したメニューも供しているとの事であった。興味があれば行って注文してみるのも面白いかもしれない。

【番外編①  ますたに】
中華料理、という範囲で、ガラにもなく府内のチャーハンランキングなどを調べたこともあった。チャーハンは、おいしいので。

そこには、定番らしく京都駅東側の「新福菜館」の黒々としたチャーハンがランクインしていたりするのだが、それとは別に私の興味を引いたのは元祖京都風ラーメン店である「ますたに」のチャーハンが美味しい、という口コミであった。

京都のラーメンといえば、全国的に見れば背脂がたっぷり浮かんだ所謂「背脂チャッチャ系」が有名だが、その定番どころがここ「ますたに」である。

んじゃ食べに行くか、とさっそく調べるのだが、京都駅ビルの高層階にある京都拉麺小路に支店を構える方のますたにのメニューには、チャーハンの名前はない。
じゃあ本店に行けば良いのかな?と思い立ち、北白川くんだりまで足を伸ばしてみた。



なかった。


調べてみると、京都の昔ながらのラーメン店のメニュー表は「中華そば」か「チャーシュー麺」の2択しかないのがデフォルトらしく、なんなら京都拉麺小路のますたにの方がメニュー数は多い。

2015〜2016年あたりのブログを漁ったりすると、昔は拉麺小路の方ではチャーハンを出していたという記録があったため、私の聞いた口コミは数年前のますたにのものであり、現在のますたにではチャーハンというメニューは抹消されてしまったらしい。どうして……

味はといえば、脂はそこまでギトギトしているわけではなく比較的食べやすい。背脂がスープの表面をおおっているため、ラーメンの熱が気化によって逃げるのを防いでおり、出来たての熱さが食べ終えるまで持続する。

とはいえ、とんこつ由来の動物性の出汁独特のクセのある味と、オバチャンから「あついよ」と2回は念を押される程度のスープの熱さは多少人を選ぶかも、と思ったりした。

隣には私より若めの学生らしき男子が常連っぽい慣れた手つきで麺を啜っていた。素朴な味であった。

【番外編②  天下一品 総本店】
生粋の京都人であるくるりの岸田氏曰く、「京都でうまいもん教えて、と言われたらとりあえず天一の本店を薦める」との事で、京都に住んでいた頃1回も行ったことがなかったそこに足を運んでみることにした。

場所はラーメン激戦区たる一乗寺エリア。
一体どんなラーメンが待ち受けているのか。

結論から言うと、府内で今まで食べてきた他の天一の味とさして変わりはなかったように思う。
まろやかなこってりスープは京都に住んでいたあの頃と変わらずこってりしていたし、チャーハンは程よくパラパラしていてあじついてておいしい。

悪く言えばチェーン店的と言えるが、良く言えばどこでもこのクオリティの味が楽しめる、といった感じであった。
ぶっちゃけた話、京都以外で天一を食べたことがないので、京都府内の天一ならどこで食べても美味しい、という事なのかもしれない。

思えば、焼肉のチファジャは三条の本店が1番!と思ったことも、伊藤久右衛門は宇治の本店が1番!と思ったこともないので、まぁ聖地巡礼みたいなものか。と思うことにした。

ただ、味は一口で数年前食べたきりの天一の味を思い出させてくれるくらいにはちゃんと美味しかった。そこだけは名誉のため太鼓判を押しておく。

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以上でここ数ヶ月の京都中華紀行の締めくくりとする。なんだか尻すぼみなまとめ方になってしまった。

今のところ私が1番好きなのはカラシソバです。

四条の『平安』を除くと、新京極の『龍鳳』という店でも食べられるらしい。次回行ってみてもいいかもしれない。

その①〜③を通して行った中華料理店の地図を更新して今回のエッセイのおわりとする。ではまた。

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