Gartic 性癖 Phone

絵描きの五大栄養素をご存知だろうか。


知らない人もいると思うので、以下に順番に列挙していく。


①『画風や絵の上手さを褒めてくれる人の言葉』

これは一般的だ。絵描きに限らず大概の生物は褒められて伸びるタイプである。

②『思ったとおりの線が引けたときの快楽物質』

これもまぁ一般的だと思う。イラストにせよ漫画にせよ、「あっそれっぽい」と出来ばえに感動できた瞬間の気持ちというのは貴重なものだ。

③『敬意を抱いている絵描きの方が偶発的に自分の好きなジャンル・キャラクター・シチュエーション・関係性で絵を描いているのを見つけたときに発生する脳汁』

あれすごいよね。

④『普段絵を描かない人が自主的に描いてくれた絵』

これは割とマジ。声優がお絵描きに挑戦、みたいなのも部分的にこれに該当するが、大事なのは出力してくれた事それ自体にある。普段絵を描かない人が絵を描くときというのは、「これ描きたい」という気持ちが日頃から描いてる絵描きより前面に出ているものが多い傾向があり(当社比)、我々絵描きとしてはその気持ちに何物にも代え難い価値を見出している。フォロワーにも3人くらい心当たりがある。ありがとうございます。



そして5つ目。
これが本日の本題であるが、それは…



⑤『己 の 性 癖 に 忠 実 な イ ラ ス ト を 他 人 に 同 意 の 上 で 描 い て も ら っ た と き の 愉 悦』


これである。

「絵描きじゃなくてもそういう気持ちあるくない?」というのはこの際置いておく。絵描きには絵描きの業があるのだ。

なぜこんな話をするのか。

世の中にはこれらの栄養素を摂取するために多大な労力、もしくは運の良さに起因する巡り合わせが必要であるが、こと⑤の栄養素に至っては合法的な手段で手軽に摂取できるツールが存在する。

『Gartic Phone』というゲームがそれにあたる。

Gartic、という言葉は造語であり、G-Art、すなわちグラフィックアート、2次元的な絵で電話をするというのが直訳的な意味合いだ。

端的に言えば『お絵描き伝言ゲーム』である。

複数人のプレイヤーが最初に任意のお題を提出し、それらはランダムに他のプレイヤーへ渡される。受け取った側はお題の文章に沿った絵を描き、その絵がさらにランダムに各プレイヤーに割り振られ、絵を受け取った人はイラストから最初のお題の文章が何だったのかを推測し、回答する……

これらを参加人数分ひたすら繰り返していく。シンプルなゲームだ。

私はこの素晴らしいゲームシステムにいたく感動し、隙あらば身内のオタクを集めてこの"ルール無用のデスゲーム"を行う機会を虎視眈々と狙っている。

今夏、お盆にdiscordでオタクが集まった際に実際にこれを行ったので、以下にその顛末を書き記す。


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まず最初に、このゲームにはちょっとした欠陥がある。

それは「お題の回答欄には何を書いても特に制限がない」という点だ。

別にいいじゃん、と思うかもしれないが、ここのリミッターを解除してしまうと結構な事故が発生する。

例えば、描かれたイラストを見た時に描いてある絵が何か全くわからなかった時、出力されたイラストを完全に無視して自分の欲望に従った文章を新たに爆誕させるという事が可能になる。

これを許してしまうと、そいつの"リビドー"に従ったお題だけが氾濫し、フェアではなくなる。

また、もうひとつの問題点に、エロやグロの解禁がある。
著しく公序良俗に反したお題の提出を許してしまうと、あんまりそういうのを描きたくない人間に要らぬ負担を強いる形になる。ネットで知り合った人とかにそういう絵を描かせる場面を想像するとまぁ普通にギルティな匂いがする。

以上の問題点をふまえ、暫定的にレギュレーションを制定することにした。それが下の画像である。

右の人物は当たり前にクラピカである

この画像を参加者に見せると、「免許持ってる後藤ひとりだったら人を轢いてもオッケーですか?」と質問が来た。 良いわけないだろ。

これはあくまで参加者を守るためのルールである。「お題で『思いっきり"致してる"任意のキャラクター2名』とか来たら嫌でしょ?」と説明すると、別の参加者から「いや、自分は仮に『描け』と言われればキャラのそういうシーンを描くことに関してはやぶさかではないですがね…」と返答が来た。 ソウスカ

前置きが長くなったが、そんなイカれたメンバーとのイラスト・バトルを以下に記す。ちなみに全部載せると膨大になるので、撮れ高のありそうなものだけ抜粋してお送りする。

あと、描いたイラストはスライドショー形式になるようにGIFで保存してもらっていたのだが、noteへのGIFの貼り方が分からなかったのでスクショで残っているやつだけ紹介することとする。まあ結果が分かればいいって事で…

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1枚目
まず最初はお試しでやってみよう、みたいな流れで適当に作成してみることにした。

初手これ?????

お試しにしては随分と業の深い1枚だった。

1枚目は、お題に対してイラストを描くだけで終わっているが、本来はこのイラストを受けて相手が何を描いたのかを当てるまでが一連の流れである。

ただ、私はこのイラストを見て、これが何を描いたのか言い当てられる自信がない。先行きに不安を覚える。

2枚目

なぜ熊と戦っているのか、それは誰にも分からない。
何ならイラストに置換される時点でスレッタも狸化している。
そしてそれを受けて回答する私も、なんか要らぬ拡大解釈をしてしまった。
ある意味、これこそがGartic Phoneの醍醐味と言える。解釈の広がりは無限である。

3枚目

カワイーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ

もともとお題を出すあたって「貸せ……っ Gartic Phoneは『こう』やる……っ」という『教育的指導』の名目のもと出したお題であったが、予想以上の成果を上げてくれたようである。パーフェクトだウォルター。
回答部分は映っていないが、残念ながら伝わらなかったと記憶している。まぁこれから超人気キャラにのし上がっていくんで……見てて下さいよ……

4枚目

『リトルウィッチアカデミア』からの1枚。
ダイアコの強火のオタクから要請された。描いてて思ったが、Gartic Phoneは時間制限があるため、1枚に2キャラ描くのって結構難しい。
こちらも回答部分は映っていないが、ダイアコであることは伝わっていたと記憶している。ダイアコは""覇権""なンで………


5枚目

『メダリスト』からの1枚。ここらへんから絵に対する回答が映ってくる。
ただ、結局熊と戦っている理由がよく分からない。
ちなみに、"熊vsスレッタ"のお題を出したのもこいつである。なぜ熊なのか、と問うてみると「だって熊と闘ってたら、おもしれーから…」と言われた。 もう何も言うまい。

しかしこの「わけの分からなさ」というのがGartic Phoneをカオスたらしめている一因である。それが良いか悪いかは置いといて。

6枚目

アーニャは将来酒豪になると思う。そんな淡い期待を文面にしたためた。

描き手のカマクラ氏は傍に『ダバダ火振り』を添えている。芸術点が高い。俺そんなん飲んだ事ないけど。


7枚目

カワイーーーーーーーーーーーーーーーーッ

絶対ゲーセンでこういう一幕あるだろ、という"確信"を文字に起こしたが、期待通りの仕事をしてくれたように思う。感謝するぜ お前と出会えた これまでの 全てに!

樋口楓っぽい、というのはまあモノクロだとそれもあるよな、という気持ち。

8枚目

何? これ?
こういうのに限って一言一句お題を言い当ててもらっているので完成度としては誇っていいものなのだろうが、なんだろうこの気持ち。
ぼっちちゃんの哀愁と本郷猛の哀愁とが交わった味わい深い1枚となった。

9枚目

いいですね、とてもいい。
久美子が若干困惑混じりの表情を浮かべているのにも加点が入る。こういうのでいいんだよこういうので。 うおォン 俺は人間火力発電(ry

10枚目

……何が目的なんですかね?
しかもまたしても一言一句違わずお題を言い当てられてしまっている。こんなことあるんだ。Gartic Phoneじゃないと出てこないだろこんな絵。

11枚目

『アイドルマスター シャイニーカラーズ』からの1枚。
芹沢あさひがマクド食べてるね、って事で深夜かと思ったらまさかの朝であった。まぁ"朝"っていうのは書いた人の誤植らしいけど。

イラスト描いた人によると、マフィンから時間帯を予測してほしかったのだそうな。すまない……貧弱な読解力で……

12枚目

こちらも『アイドルマスター シャイニーカラーズ』からの1枚。
これは他の参加者2人からやたら好評だった絵。 ほんとか?
サイズ感と佇まいが良い1枚、と評価して頂いた記憶がある。そっか…ゲンガーってアイマスと親和性あるんだ……勉強になります。



以上が今回の闘いの記録である。

なんでこんな記事を、という疑問に関しては、せっかく描いたし…っていうのと、みんなにも他者に好きなお題で絵を描いて欲しいという欲望あるよね、という気持ちを共有したかった、という動機が大きい。

特に総括も講評もない、得点したポイントも途中まで数えていたが、結局誰が勝者なのかはうやむやのまま終わった。この闘いで重きを置くべきは、そんな上辺だけの数値や点数ではない事は、参加者の全員もう理解しているから……………

満足したところで今回の記録を終える。おつかれさまでした。

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