京都の満腹論
昨年末、「京都の食べ歩きを記事にする」と放言したまま年を越し、はや3ヶ月が経とうとしている。「あとで描く」と言っていたイラストも未だ完成していない。私ゃもうダメダメである。
ところで、坂本真綾の刊行しているエッセイに『満腹論』という本がある。
内容は、色んな国や地域の料理が食べられる大都会・東京で生まれ育った坂本真綾が、現地の本物の味、その地域の暮らしに根付いた食文化、さらにはその味が生まれた背景について、知的探究心の赴くまま書き綴っていく、というもの。
土井善晴先生の著作や京都の食文化の本をはじめ、昨年から食にまつわる書籍を読んでいた私にとっては、まさしく自分の読みたい内容のど真ん中ストレートな本で、たいへん楽しく読ませて頂いている。
そんなら、私もそういうテーマで書いてみよう、となった。
大阪の"食い倒れ"、京の"着倒れ"、神戸は"履き倒れ"、なんて言葉があるが、別に京都でだって食い倒れる事があっても良いじゃないか、と最近思う。だっておいしいもんたくさんあるし。
そんなわけで今回は、倒れるほどの"満腹"を目指した私の食べ歩きについて書き記していく。
ワイが京都の食い倒れ人形じゃい。
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【鳳舞楼 『からしそば』】
からしそば、というと、京都の花街文化の中心、祇園のメインストリートを少し外れた路地にひっそりと佇む「平安」をはじめ、京都の広東料理店での定番メニューだ。
場所はというと京都御所の西側。今出川と丸太町のちょうど中間地点にあたる中立売通を新町通で南下した所にある。
店名の"鳳舞"というのは、昨年の中華料理屋巡りでちょくちょく目にしてきた名前で見覚えがある。
それもそのはず、このテの広東中華は、界隈では"鳳舞系"と呼ばれるカテゴリーに属するため、その名を冠した中華が西陣の外れに存在したことに少々驚きを感じる。
食べてみた印象としては「ネオ・鳳舞系」といった趣だった。
「平安」のからしそばは、使用するからしの分量が"べらぼう"なのでそりゃもう胃に鼻にと刺激がツーンと突き刺さってくるわけだが、こちらのからしそばは餡のマイルドさのおかげか、そこまで胃に負担は来ない。加えて、鶏からも油っこくなく、さっぱりとした食べやすさだった。
店のコンセプトなどは特に訊ねなかったわけだが、こういった広東料理屋の元々のルーツにあった、「舞妓・芸妓さんに供するための匂いや刺激の少なめな料理」という初心に立ち返ったような素朴な味わいだった。
くわい入りの焼売も美味しかった。これ10個くらい注文できないんですかね?
【華祥 『卵白あんかけ炒飯』】
場所は変わり、元田中へ。
確か、銭湯に寄った帰りに行った気がする。
「元田中に一風変わった炒飯を出す店がある」との情報を耳にして、来店。
卵黄で作られた炒飯の上に卵白で作ったあんかけを載せた代物。
店主は、四川料理を日本に広めた立役者、陳建民氏のお弟子との事で、ふんわりとしたあんかけがほのかに味ついてて美味しい。
左の水餃子はもちもちした分厚い皮にエビと豚肉の餡が入っており、ゴマの香りのするオリジナルのタレと相まってたいへん美味であった。
陳建民というと、エビチリや四川麻婆豆腐を日本風にして広めた人との事なので、今度行くときはそれも注文してみたいな、と思う。
【駱駝 『雲白肉』(ウンパイロウ)】
こちらは以前、麻婆豆腐を食べに行った四川料理のお店。京都芸術大学のお膝元で、学生の出入りもよく見かけた。
前回の麻婆豆腐はといえば、紅に染まった花椒がまるまるぶちこんであって食べ切るのに大層苦労した覚えがある。何かに追われるようであった。
で、前回は夜来店だったわけだが、ここで出されるメニューにはランチ限定のものもある。
それが、山盛りの豚スライスにキュウリを載っけた「雲白肉」。
見映え的にも申し分ないボリュームだ。
ところが、そのお味はというと、
なんか…こう…薄味だった。
前回の四川麻婆豆腐が"アレ"だったので、もっと濃い味を予想したが、よくよく考えてみると、キュウリの熱冷まし作用との組み合わせ的に、夏バテ予防のヘルシーメニューなのかもしれない。
日本でいう豚しゃぶみたいなもんだと思われる。
そうか…ガッツリではないか…
というわけで、ガッツリなメニューも注文することにした。
最初に申し上げたとおり、この記事は身も心も「満腹」になるのが目的だ。
かかってこい。お前の全力で……
焼飯はというと、ほどよいパラパラ具合でたくさんの卵と少し辛みのある濃い味が心地良い。
水餃子は、先ほどの華祥の水餃子より更に分厚い。肉厚なボリュームと噛めば皿にじゅわっと染み出す肉汁の味付けにやみつきになる。スープは前回の来店でも述べたが、レシピが気になるくらいには透き通っていて味わい深い。
満足した。ご馳走様でした。
【カレー製作所カリル 『バターチキンカレー』】
ホムカミのライブに行った日、ライブ前に立ち寄った。
というのも、ホムカミのメンバーである福富優樹さんが、ラジオでオススメのカレー屋として紹介していた。場所は地下鉄丸太町駅から歩いて5分程度。
初めてだったので、定番のバターチキンカレーを注文した。
実を言うとパクチーって生では食べたことなかったので不安だったのだが(オーダー時に入れていいか訊かれる)、何事も経験だと割り切って頼んでみた。まぁ普通に食べれる。
次の日行ったSONGBIRD COFFEEというカレー屋でもパクチーが食べられたので普通に追加した。
ここのカレー自体も美味しかったのだが、特筆すべきは右上に置いてあるセルフのサイドメニューだ。塩だれキャベツとらっきょうらしき何かが置いてあるが、これがまぁ〜〜美味い。
カレーを食べる隙に容器の半分くらい食べまくったところで、はしたないのでセーブした。あれのためにまた食べに行きたいと思える。そんな求心力があった。
スパイスとか結構凝ってるところなのでそれも目当てに是非再来店したいが、結構並ぶので行く際には注意されたし。
【永正亭 『親子丼』】
こっちはホムカミのライブの後に行った。
あとでラジオで聴いた話だが、ライブの後にホムカミのメンバー4人が行ってたらしい。1日違いのすれ違いだった。
場所は、四条通の寺町の入り口を南下して少し行った所にあるのだが、京都に住んでいた頃は全く認知していなかった。
というか、ちゃんと「行くぞ」という固い意志を持って訪ねたにも関わらず、見つけるのに凄く時間がかかった。それくらい風景に埋没している。
中はというと、縦に長い定食屋の趣。
席に着くなりメニュー表と長らくにらめっこする珍客と化していたが、意を決して親子丼を注文した。
結論から言うと、目を剥くくらい美味しかった。
色の地味さからは想像できないが、出汁が効いているのか旨味が丼全体に染みており、海老天もネギも良いアクセントとなっていた。
のちに仲間内に「アレを食べたらもうなか卯の親子丼では満足できなくなる」と熱弁していたのだが、「そう…」みたいな適当な返事しか返ってこなかった。本当だってば。
しかしながら、一方をサゲて一方をアゲる評価の仕方自体、あまり褒められたものではなかったと今では反省している。なか卯さんすんません。これからも親子丼食います。
その後、あまりに美味しかったので、看板メニューの田舎そばと日本酒を追加で注文した。
は?今食ったばっかだろ。と思うかもしれない。
最初に申し上げたとおり、この記事は(以下略)
この田舎そばは具をぐるぐる混ぜて食べるものなのだが、大根おろしやら卵やらのとろみがつく具材と、ネギ・鰹節の薬味的な具材の役割がしっかりと立っており、味わい深い。
そしてよく締められた歯応えのあるそばと日本酒のマリアージュ。合わないわけがない。
が、さすがに炭水化物の量が多すぎた。退店時は「とても美味しかったです」と爽やかに伝え店を去ったが、実際は腹の中が鉛のように重かった。でも味はちゃんと美味しかった。また来ようと思う。
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以上が、昨年訪れた美味しかったお店である。
昨年のタスクを終えたので、着実に2023年が終わろうとしている実感はあるが、まだやり残したことはあるので、私の2023年はこれからです。
年度末までには終わらせたいですね。
今後も気になるお店があったら積極的に入っていこうと思う。満腹。
以上。
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