Homecomingsのライブ覚え書き

本当はツイッターに書き散らす程度で済ますつもりだったのですが、思うところあって、気持ちを整理したうえで、先週のHomecomingsのライブについて忘れないうちに覚え書きを残しておきます。


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まず、前もってお伝えしておく事として、このライブに行く前の私は、1月に発生した能登地震に割とメンタルがやられていて、募金も既に2回したし、献血にも行っていた。

その主な理由が、能登が舞台の漫画、及びアニメ作品の、『君は放課後インソムニア』を昨年楽しませて頂いていたことと、そのアニメの主題歌をまさにHomecomingsが担当していた、という点にある。

更に言えば、ホムカミのVo.畳野彩加さんとGt.福富優樹さんの出身は石川県であり(元々その縁もあってのオファーだったと思われる)、色々と思う所があった。

単に被災地、というだけなら前向きにフォローしていこう、と思うのだが(「被災地」という点で言うなら『スキップとローファー』もこれに当てはまる)、この漫画に出てくるゲーセンやお好み焼き屋などの、いわゆる"聖地"は、実際に実在するお店がモチーフとなっている。

ネット上ではそれら実在する店舗の被災状況の過酷さが痛々しいほどに伝わってきていて、SNSを見るのがしばらく辛かった(念のため述べておくと、お好み焼き屋の方は、断水が続くなか2024.1.21までに営業が再開されている)。

そういう意味で、募金や献血だけでなく、いつか「観光」という名目でも、少しでも復興に役に立てたら、と思っている。

そして、だからこそ余計に、というべきか、今回の能登半島の、しかも「七尾」や「穴水」といった、作品に頻繁に出てきた地名が被災という形でメディアに出てくる事には少なからずストレスを覚えていたように思う。そしてそれは、バンドメンバーそれぞれも同じだったであろうと推測する。
(※ただ断っておくと、畳野さん福富さんの故郷のご家族に関しては、目立った被害はなかったと、バンドが受け持つラジオ番組内でアナウンスされている)

それを踏まえた上で、ライブの振り返りをしていく。不快でなければお付き合いください。


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当日のライブはメイン・ゲスト共に京都発のバンドで構成されていたわけだが、対バンのくるりがホムカミのバンド性について一貫して「嫌なところが一切ない」「同じ京都出身のバンドとして誇りに思う」といった褒め方をしていたのが印象に残っている。

以下両バンド合わせてのセトリ

最初の1曲目に『ブレーメン』という物語性の高い曲をセレクトしていた所に、ホムカミの作品の持つ"物語に対する慈しみ"というテーマへのリスペクトを感じられて良かった。続く3曲はどちらかというとゴリゴリのロック系の曲で、最初はホムカミファンの肌には合わないのでは?と少し危惧していた(後述)。

そこから『春風』に移り、ゆったりした曲へ転換。続く『琥珀色〜』のfeat.畳野彩加は、同じくるりの楽曲『コトコトことでん』でボーカル担当した経験のある畳野さんとはまた違った良さが伺え、ライブの場だけで実現する良さがあった。
(ちなみに、のちのラジオで言っていたが、この企画は本番3日前に急に打診されたらしい。んなアホな)


その後の『California coconuts』と『In Your Life』は、どちらもくるりの最新アルバムから抜粋した曲なのでくるりファン以外は分かりづらいのでは?と思いつつ曲自体は良い曲なので味わって視聴。

そしてのちに続く曲が、アルバム『坩堝の電圧』収録の『everybody feel the same』という曲。

この作品は、元々東北の震災を受けて制作されたアルバムだ。畳野さん福富さんの出身が石川である事をふまえると、能登での被災に向けて選曲したものと思っている。こういうさりげない曲選びをする所に、岸田さんの思慮深さが窺える。

なんなら、今回の対バンでドラムを担当したあらきゆうこさんは、アルバム『坩堝の電圧』制作時のドラマーだ。彼女は別のアルバム『図鑑』でもサポートとして参加されており、先に見せたセトリの、ブレーメン以降の3曲も、上記2つのアルバムからの抜粋。やたらとロックサウンドな選曲で、なおかつドラマーに、創立メンバーの森信行さんでも石若駿さんでもなく、彼女をこのライブに呼んだのは、そういった意図があったのだと推測している。

続く『飴色の部屋』からの『Remember me』は、この度Homecomingsを卒業するドラマーの石田さんを思って選曲したものじゃないかと勝手に思っている。というかほぼそうだろうと思う。


役者は代わりホムカミへ。


まず余談なのだが、バンド登場時のオープニングナンバーに、ウェス・アンダーソン監督の映画『ザ・ロイヤルテネンバウムズ』のサントラに収録されているnicoの『these days』が流れていた。

これはラジオ内で毎回これをやってる、という話を何度か聞いていたのだが、あ、ほんとに使ってるんだ…とちょっと感動していた。

1曲目は『Songbirds』。リズのオタクとしては多少動揺する選曲だが、これは2019年にくるりが主催する「京都音楽博覧会」に、ホムカミが招待された時に披露していた曲なので、それを意識したものなのかな、と推測している。

なんなら、ホムカミはラジオのオープニングで毎回流している自身のバンドの曲についても、例の事件に日付が近い放送回には必ずSongbirdsを流してくれていた。
そういうさりげない心遣いのようなものに、なんだか感極まってしまった。

続く『Cakes 』と『ラプス』。ラプスに関しては先述した『君ソム』の主題歌。
どちらも好きな曲で、ラプスについては漫画に出てくるメインの登場人物2人の名前がさりげなく歌詞に配置されており、そういう点でも好きな曲だ。

『PAINFUL』や『LIGHTS』は、ライブ前のラジオで「昔の曲やりたいね」って話をしてたのでこれか、と思った。LIGHTSなどはアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』の中では象徴的な作品なので、思い入れもあるのだと思った。

続けて『光の庭魚の夢』と『ユーフォリア』。ユーフォリアに関しては初視聴時からなんとなくシューゲイザーっぽいなーと思っていたが、ライブ会場の音圧でそれがさらに増幅されており、(こういうプレイできるんだ…)と感動していた。

その後『here』と『shadow boxer』、確かこのあたりから前奏にじっくり時間を割いてイントロに入るというプレイスタイルを見せてきており、オタクとしてはかなり美味しい状態だった。shadow boxerに関してはギターとベースの掛け合いが大変好きな曲なので、ライブでそれを感じられて良かった。

淡々と曲をこなしていった後、畳野さんが「次は、大好きな曲です」と言ってくるりの『ハローグッバイ』を歌唱された。

畳野さんは以前「スピッツだったら『フェイクファー』が1番好き」みたいな事を仰ってた記憶があるので、さもありなん、と思った。

お次は新曲だったわけだが、歌詞を聞き取ろうとしてあんまり記憶にない。Songbirdsと対になりそうな歌詞だな、とか適当な事を考えていた覚えがある。

続けて『blue hour』と『アス』。なんとなく、今回のライブタイトルのコンセプト的に『アス』は入るだろうな、と思っていたので、これで終わりなのかな、と思った。

ここである意味凄いな、と思ったのが、この時点まで、今回のライブで卒業される石田さんについての言及がほぼない所だった。

いやなんか…もうちょっと…あるだろ…!みたいに思っていたが、思い返すとそういうのはセトリの選曲とかに既に反映されていて、会場で無理に言葉にするものでもないと考えていたのかもしれない。

観客の拍手に応えてのアンコール。石田さんの卒業についてここで触れ「一旦卒業」という説明がなされる。それでも湿っぽい雰囲気は決してなく、いつも喋ってるテンションと変わらないまま、このバンドの始まりとなった曲『I want you back』が鳴り響く。

このとき、演奏が始まると同時に、KBSホールのカーテンが開かれ、壁一面のステンドグラスが現れた。

新たな門出を祝福するには十分過ぎるほどに綺麗な光景だった。ここでまた泣いた。

と思ったら、福富さんが演奏中、石田さんのバスドラムの上に急によじ登った。

え?!となると思うが、マジでやってた。

これについては、本番前のラジオで福富さんが「俺、本番当日感極まってなる(石田さん)のドラムに飛び込むかもしれん」みたいな事を言っており、その場では適当に流されていたが本当にやってて(マジでやりやがった…)という気持ちになった。

演奏を終え、再び去っていく4人。

と思ったら、またアンコールを求める手拍子が。
(こういうのってやっぱ2回くらいやるもんなの?)と思っていたが、ちゃんと出てきてくれたあとに福富さんが「本当はさっきので終わるつもりだったけど…」と言っていたので、(バンドのライブわからん…)になった。

最後の演奏は、バンドがヒットするきっかけになった『HURTS』。

ただこれ、(2回目のアンコールあらかじめ想定してた?)と思うくらいには刺さった。

この曲は英語歌詞なのだが、Youtubeの公式MVには映画みたいに日本語字幕が付けられている。

その一節、

"そのときそこにいられるといいね"
"ちょっとした運みたいなものなんだから"

の部分が、今この場では特別な意味合いを宿しているように感じられた。石田さんも最後の方は泣いていた。こちらも貰い泣きした。

演奏後、4人全員が笑っていた。この場に立ち会えて良かったな、と思う。


全体的に思うところはたくさんあるライブだったが、先述したように、それらはあくまで曲目やプレイスタイルで表現する、という姿勢がホムカミもくるりも徹底していたように思う。

ライブ後には4人全員参加で生放送ラジオをやっていたが、本当にいつも通りなんだろうなと思わせるほどには楽しそうに雑談していた。

このバンドを聴き始めた当初から、そういった人への寄り添い方は変わらなかったように思うし、そこに救われていた自分もいたと思う。

バンドは形態を変えていくし、もちろん私自身も変わっていくと思うが、これからもこのバンドの曲は聴き続けていきたいと思う。

ありがとうございました。

以上

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