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【あとがき】私を悩ませた『甘い男』

 ああ、やっと、あとがきを書けるところまで落ち着きました、というのが第一声です。書き上げてから、ありがたいことに読者様より感想やレビューをいただけて、ようやく客観的にこの作品を考えることができるようになりました。拙作『甘い男』はエブリスタ様、Pixiv様、ムーンノベルス様でお読みいただけます。

 私の中で、この作品において目指していたのは「拙作、ライオン男子とハムちゃん主任(以下、ライハム)をクオリティで上回ること」でした。自分は、いつも作品のクオリティは自分の過去作に比べて判断しています。ライハムは、一番最初に書き上げたという熱量もあり、この作品を好きだとおっしゃっていただける方が多いんですね。読者様が主人公のハムちゃんに感情移入して、恋人である獅子ヶ谷と結ばれることを応援してくれた。それって書き手として最高に嬉しいことだと思うんです。
 新しい作品を生み出すなら、過去作を超えていきたい。過去の自分に挑む、そんな気持ちで臨んだ作品でした。

あらすじはこんな感じです。
『老舗羊羹屋の三代目社長"寅山喜之助"(とらやまきのすけ)は、高校生のとき誘拐された過去を持つ。その際、複数の男たちに監禁され、犯され続け、それ以来、歪んだ快楽を忘れられない体になり、昼は淑女のように羊羹屋の社長を務めるが、夜は男を呼んで肉便器となる。寅山の同級生である龍崎コーポレートの敏腕社長"龍崎慎也"(りゅうざきしんや)はその性事情を唯一知っており、時々寅山に求められ体の関係を結んでいる。そんなある日、寅山の乱れた性を知る人物がもう一人現れた』
 これは、ほんの冒頭に過ぎず、このあと、主人公が誘拐されるまでに至った背景などが明らかになっていきます。家督争いに巻き込まれ、自分を見失い、性のはけ口として求められているときだけが幸せだった男が、改めて愛について考える、というのが、ざっくりとした話です。
 すでに過去、ライハムの中で寅山と龍崎は仲の良い二人として登場しています。そのときから寅山の背景は、ぼんやりと考えていて、裏側が薄汚れているという自覚があるからこそ、人に優しいという両面性を軸に置いて、お話を作っていきました。

 そして、一番手こずったのは、相手役である龍崎慎也です。自分で作り出したキャラなのに、本当に掴めない人間でした。書いたものを何度か読み直すと「龍崎はこんなこと言わないのではないか」と思ってしまい、書き直す。ラストに向かって書き出すたびに、何度も何度も書き直しました。
 基本、私は書き直しをしない人間なんですが、結末が、こんなに定まらなかったのは、初めてでした。

 作風としても、今まで自分が書いてきた作品(特にエブリスタ様に置いてある作品)とは、少し違います。どちらかというと、シリアスで、展開は絶望と苦難の繰り返し。本当にボーイズラブなのか、と(苦笑)
 けれど、もともと根暗な私は、こういう話が浮かびがちで、今まで書いた二次創作では、とにかく仄暗い話が多かったのです。

 正直、オリジナルで、受け入れてもらえるのか、心配でした。砂糖を舌で転がすような甘い話のほうが喜ばれるし、私だって読みたいと思うんです。それでも、書いてUPしていくうちに、皆様の反応を見て、エブリスタ様という場所は、様々な読者様がいて、読みたいものを取捨選択してくれるんだということがわかって、そう考えたら、書きたいものを自由に書いて、興味ある方に届けていけばいいんだという気持ちになりました。

 実際、私はプロではないですし、制約があるわけではないです。面白くなくて誰も読まない平凡な話よりは、自分が満足する、自分しか書けない話が誰かのお気に入りになれればいいのかなと思えてきました。そりゃ万人向けに読んでもらえるお話を書けることが一番なんですけどね(耳が痛い)

 そして、今回、表紙を描いてくださった春宮ゆずこ様には、本当に本当に感謝しています。
 この作品は、もともと誰にも表紙をお願いするつもりはなかったのですが、彼女の絵で寅山が見たいと私がワガママを申しまして、彼女には当時、自分の原稿もある中で表紙を引き受けていただいて、あの作品の価値観を最大限に表現した、要望通りの艶っぽい表紙を描いてくれました。
 赤い肌襦袢だったり、縄の痕だったり、私からの注文も多く、構図も何度もリテイクしてくれて、根気よくお付き合い頂きました。
 あと、やるからにはきっちり仕上げる彼女のプロ根性も見せてもらい、私自身もあの表紙に恥じない作品にしなければと震えました。

 彼女は私にとって、分野は違えど、同じ温度でお互いの実力を高め合っていける、戦友の一人です。これからも彼女の活躍を一番近くで応援したいし、微力ですが、何かあれば力になりたい。出会いにも感謝しています。本当に、ありがとう。これからもどうぞ、よろしく(愛の告白みたいだね?)

 拙作の『甘い話』が、過去作『ライハム』越えをしたかどうかは、皆様の判断にゆだねるとして、私は次回作に取りかかりたいと思います。

 ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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