高田馬場ジョージについて
ジョージは歌が歌えないプリズムスタァであり、それ故にGSとして池袋エィスを使っている。第5話では主に高田馬場ジョージの唄である池袋エィスの視点を通してジョージという人間がどういう人物であるかについてが描かれている。この話の面白いところは池袋エィスが主体として描かれているため、ジョージの心情について直接的に描かれておらず心情については描写から読み取ることしかできない。アニメ中でもあくまで高田馬場ジョージは本心を明かさない存在として描かれるのである。第5話の面白みはここにある。
夢を叶えるための行動力を持つジョージ
第5話ではジョージの過去、ミヨちゃんの存在が明らかになる。ジョージは昔は太っているというコンプレックスを抱えており、性格はどちらかといえばいじめられっ子で引っ込み思案な性格であった。そんな自分とは正反対の存在として、どんな汚い手を使ってでも賞をとり、完璧なショーをする法月仁のことを崇拝していた。そして、自身も法月仁のようなプリズムスタァになるべく、ダイエットを頑張り、親の反対を押し切ってまで生活費を切り詰めて上京するのである。
高田馬場ジョージはプリズムスタァになるという自分の夢を叶えるために自分自身を信じて行動したのである。この夢を勝ち取るために行動するという所に高田馬場ジョージというプリズムスタァの持つ煌めきの根源があると感じた。
夢というものは誰にでも叶えられるものではない。大抵の場合、自身の限界を感じたり、周囲からの理解が得られずに挫折してしまう。ジョージもミヨちゃん一家以外の理解者はなく、歌が歌えないというプリズムスタァとして致命的な欠陥があった。しかし、ジョージはその状況や欠陥を自覚しながらも自らの夢を諦めることはなかった。恐らく、そこにはどんな汚い手段を使っても栄光を勝ち取り続けてきた法月仁の存在があったことだろう。
そして、憧れの人のいるシュワルツローズに入り、池袋エィスという唄を得て、THE シャッフルのリーダーとして君臨するのである。
ミヨちゃんの存在
ジョージにはプリズムスタァになるという夢の他に、もう一つ目標があった。ミヨちゃんに凄いプリズムショーを見せるということだ。
この目標は自分を信じてくれている唯一の存在である大好きなミヨちゃんに夢を叶えた瞬間を見せるという約束であり、一つの到達点といえる。そして、その到達点に達した瞬間こそミヨちゃんに抱いていた恋心のようなものを打ち明ける時だとも思っていたのではないだろうか。
しかし、その恋心は「ウチ、結婚するんよ」の一言で打ち砕かれてしまう。
この一言でミヨちゃんとジョージの関係のすれ違いが浮き彫りになるのである。
ジョージは自分の夢とたった一人の幼馴染と交わした約束を守るためプリズムスタァになるべく努力を重ねてきた。そして、ミヨちゃんはそれを応援する立場として見守ってきた。しかし、父親の死があり、ミヨちゃん自身が大変な立場になった時にジョージは葬式に行くことすら出来なかった。ジョージはミヨちゃんよりもプリズムスタァであるための夢を選んだのだ。
ここが運命の分かれ道だったのではないかと思う。ミヨちゃんは夢を選んだジョージを応援し、自分とは別の道を歩む存在であると感じたのではないだろうか。そして、自身の恋心を諦めて別の人と添い遂げる道を選んだ。しかし、東京に行くと決めた時点ではどこかに迷いがあった。迷いを吹っ切るためにジョージに、ノリ君に会おうとしたのではないだろうか。
そんなミヨちゃんの心情を知らないジョージは自らがプリズムスタァになったことをアピールするかのようにサイン会を行ったり、沢山のファンと握手を交わしていく。スタァになったと証明することでミヨちゃんを喜ばせられると信じているからだ。
それがミヨちゃんにとってジョージは遠い世界の人間になったことを自覚させることになるとは知らずに。
そして、迷いを吹っ切ったミヨちゃんは自身の歩む道を告げるように「ウチ、結婚するんよ」とジョージに明かすのである。
ジョージにとって失恋の瞬間であり、描いていたであろうミヨちゃんのために最高のプリズムショーをするという到達点の先にある恋心を打ち明けるという夢が潰えた瞬間である。
しかし、そこで潰れてしまわないのが高田馬場ジョージである。
ジョージの過去を知り、ジョージの努力と意思の強さを知ったエィスの挑発的な発破により、自分自身の取り戻すのである。
「ミヨちゃん見に来ているんだろ」の一言で今まで精神的に支えてくれていたミヨちゃんの存在を思い出し、「お前が出ないなら俺が出る」の一言でミヨちゃんは自分を見に来ている=ミヨちゃんのためには他の誰でもない自分がショーに出なければならないと思いだすのである。
「俺を誰だと思ってる」
「俺はTHE シャッフルのリーダー…高田馬場ジョージだ!」
そして、プリズムスタァ高田馬場ジョージとして舞台に立つことを選んだのである。
ジョージの唄、池袋エィス
高田馬場ジョージとして舞台に立つことを選んだジョージだが、ジョージの唄である池袋エィスは迷っていた。歌を歌うべきかどうか。ミヨちゃんの思い出話がフラッシュバックしてジョージを認めてもよい気にはなっているが、ジョージにとっての自分自身の存在がどういうものなのかが分からないからだ。シュワルツローズにとって他者は敵であり、弱者は蹴落とすのが定石である。歌を歌うことの出来ないジョージはエィスにとって蹴落とすべき弱者である。
そんな迷いの中、新たな問題が発生する。ジョージの活躍を妬むシュワロ生によるマイクトラブルだ。エィスにとってこのマイクトラブルはジョージを蹴落とす格好のチャンスである。
しかし、このトラブルによりエィスはプリズムスタァ高田馬場ジョージの在り方を目の当たりにすることになるのである。
マイクトラブルに動じることなく、観客に出来る精一杯のショーを送るジョージ。マイクトラブルに気が付いているのであれば、ショーを止めることも出来たはずである。しかし、ジョージはそれをしなかった。観客の前では完璧なプリズムスタァ高田馬場ジョージとして在り続け、一瞬たりともその仮面を外さないのである。そして、歌が流れると信じてショーを続行するのだ。
その姿にエィスはジョージのスタァとしてファンを裏切らない真摯な姿勢に気が付き、自身もそんな高田馬場ジョージの一部であることを認識させられるのである。そして、蹴落としたシュワロ生に対してジョージのスタァとしての在り方の正しさを説き、俺の声を待っていると歌い始めるのである。
ここで初めてエィスは高田馬場ジョージの唄として自分を認め、歌うことが出来たのである。
Joker Kiss!について
Joker Kiss!はミヨちゃんに向けたメッセージだと感じた。では、曲名のJoker Kiss!とは何を意味するのか。キスとは愛情表現の一種である。では、ジョージにとっての愛情表現は何か。
プリズムショーである。
つまり、Joker Kiss=ジョージとしてのプリズムショーということになる。
前々の項でミヨちゃんに凄いプリズムショーを見せることについて下記のように書いた。
もし、このプリズム1が恋心を打ち明ける瞬間だと思って作詞したのだとしたら、JokerKissはたった一人に向けた恋文でもあると解釈できるのである。
上記はサビの歌詞である。先ほどクチヅケ=プリズムショーだと書いたが、クチヅケにはもう一つ意味がある。誓いだ。
それを踏まえて解釈すると、とびきり素敵なクチヅケとは凄いプリズムショーを見せるというミヨちゃんとの約束を指していると考えられる。
JokerKissの歌詞をその解釈で初めから見ていくと下記のような形になる。
カレイドスコープには絶えず変化するものと言う意味もあり、Kaleidoは美と姿が合わさった言葉である。カレイドスコープとはジョージ自身を指しているのかもしれない。ジョージはいつでも覗かれる側であり、覗く側ではない。
ここでは恋の一歩を踏み出すことでデートもムードも君(ミヨちゃん)の望み通りになるように振舞う=君のためのスターになることを歌っている。
君に一番幸せな顔をさせたい=君にとって一番大切な存在である恋人として一緒に歩んでいきたい。
泣かないでよ→(夢みたいと思って)嬉し泣きしないで、出会った日からずっと想いは決まっていた。
成就 常時 夢を見せよう→夢を叶えた僕が君にずっと夢を見せてあげる
このように見ていくと一番の歌詞はミヨちゃんと恋人になるときのことを思い描いての歌詞であるとも見れる。
サビは先ほど書いた通りなので割愛させていただく。問題は二番からだ。
ジュエル=プリティーリズムにおけるPOP、Coolなどのスタァの煌めき属性のこと。どんなキャラクターも変幻自在に演じて君を笑顔にするよと歌っている。一見すると一番と大差のないように見えるが続く二番の歌詞を見ると意味合いが違っていることに気が付くだろう。
甘いノリ=甘いノリ君であるジョージは似合わないと言って後ろ向かないで。
魔法の絨毯、ガラスの靴→このどちらもカップルの間を取り持つ重要アイテムである。それよりももっと似合う何かにビビッと来たい。つまり、間を取り持つのではなく、君の隣にいる存在になりたいと歌っているのである。
キミが思うよりもキミの虜であるから。
つまり、二番からは失恋後の心情を歌っているのである。
そして、キミに向けてカードのように変幻自在に自身を変えながらめくるめくショーを行うのである。
他の何かなら用意できるけど、という歌詞はファンに向けてのものであり、ごめんという歌詞は失恋後も世界で一コだけの恋はずっと変わらない、君ただ一人に向けていることに対する謝罪である。
この歌詞はジョージの決意の表れである。
ミヨちゃんが結婚して触れられない日が来たとしても、数えきれないほどのショーはいつでもミヨちゃんのためにすると誓っているのである。
このサビは前述のサビの歌詞と大きく変わらないが、前述のジョージの決意後の歌詞としてみることでまた違った意味合いが見えてくる。再び、決意表明をしているのだ。
めくるめく時をショーをし続けること、ダンスもチョイスもいつでもミヨちゃんのためにすること、そして約束したとびきり素敵なショーをすることを約束しているのである。
失恋してもなお、ただ一人の女性のためにショーをし続ける男の恋心はまさしく世界が嫉妬する恋と呼ぶに相応しい。
これほど、純粋な愛を込めたショーは多くの女性の心を動かし、 9270カラットという高得点を叩き出したのである。もちろん、高得点の陰にはエィスが跳んだことで4連続ジャンプになったということも考えられるが、プリズムウォッチはときめきを数値化するという単純な技術点を排した採点システムであることや高度なジャンプを跳んだシャインのショーは0カラットであったことから9270カラットという数値は観客の純粋な心の動きを反映していると考えられる。つまり、高田馬場ジョージはチャンピオンに相応しいショーをミヨちゃんに見せることが出来たのである。
キンプリSSSの5話は本川則之という少年が、高田馬場ジョージというスタァになり、約束を果たすまでの物語なのである。