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吉岡里奈さん個展『カストリ名所十景』開催のお知らせ

カストリ書房の現店舗閉店と移転についてお知らせしました。

現店舗「さよならイベント」として、吉岡里奈さんの個展『カストリ名所十景』を開催します。

DMはカストリ書房店頭でも配布しています。ご希望の方はお声がけ下さい(郵送は不可)
  • 会期:2023年7月8日(土)〜7月16日(日)、11時〜18時(※月火定休、最終日17時まで)

  • 会場:カストリ書房併設ギャラリー(千束4-39-3)

弊店に併設するギャラリーでは、これまで多くの展示機会を頂戴してきました。現店舗での店仕舞いに当たっては、本来であれば、展示されたクリエイターさんをはじめとして、関わって下さった多くの方に、店側から個別にお礼のご挨拶をすべきところですが、現実的にそれも難しく、替わりとなる機会をつくりたいと思いました。

小さいながらも愛着を持って営んできた店舗ですが、退去後は取り壊されるものと推察します。築年はおそらく昭和30〜40年代で、どこか懐かしい造りや摺りガラスなどに反応して下さった方も多くおられました。お世話になった家屋の「さよなら」として相応しいイベントを催したく、吉岡里奈さんに個展開催をお願いして、ご多忙にもかかわらず快く引き受けて下さいました。

イラストレーター吉岡里奈さんといえば、山本周五郎作時代小説の装画や各種挿絵、東京駅で東京土産としてグッズ販売されているなど、唯一無二の画風で活躍されていることは、周知の通りです。

振り返ると、初めて吉岡さんに弊店ギャラリーで個展を開催して頂いたのは、カストリ書房が移転した2017年同年の10月の事でした。

  • 2017年『快楽天国〜ピンクチラシとお色気雑誌の世界〜』展

  • 2018年 同 京都ギャラリーでの実施

  • 2019年『民芸と風俗』展

  • 2020年『㊙茶封筒コレクション』展

  • 2022年『幻の映画絵看板 卓上コレクション』展

その後は毎年のように開催して下さり、歩みを一緒にする機会を頂戴した弊店としては、年ごとに活躍の幅を拡げる吉岡さんの背中を見て、いつも励みとしてきました。

昭和と重なるエロムードが吉岡作品の真骨頂の一つでもあるためか、個展を開催した初期は高齢の男性割合が多く、またこの層に当たる方が、一方的に持論をまくし立てるなど、観覧者の立場を逸脱する場面も散見されました。翌年以降、段々と女性比率が増え、作品を介した吉岡さんのメッセージが確実に伝わっているものと拝察します。

極めて私事で恐縮なのですが、店主の私・渡辺豪と吉岡さんは、単なる偶然ですが、同い年に当たります。吉岡さんと初めてお目もじした頃に重ねた雑談の中で、スーパーで品だしのアルバイトをするなど二足のわらじでイラストレーターを続けてきたことなどを伺い、ご苦労のほんの一部とはいえ、感じ入りました。

振り返って、クリエイター職を目指していた20代の頃があった私は、早々に区切りを付けるでもなく、だらだらと続け、ようやく20代の終わりにクリエイティブ要素皆無の勤め人になりました。見切りを付けた、と言えば聞こえはいいですが、簡単に諦める程度にしかクリエイター職を目指していなかったのだな、と今にして理解すると同時に、かたや同い年の吉岡さんは石に齧り付くようにイラストレーター業にしがみついていたことを知り、尊敬の念を新たにしました。現在の私はクリエイター職でこそありませんが、出版社や書店を営む者として、吉岡さんの姿勢に教わるものが今こそ多くあります。

吉岡さんの個展に足を運んで下さった方から、「カストリ書房と吉岡さんの作品の組み合わせがピッタリ」とのお褒めの言葉を頂戴することが多々あります。望外の言葉です。ただ私自身は前述のようにクリエイターを諦めた人間でもあるので、吉岡さんの作品性についてあれこれと批評する言葉など持ち合わせていません。その意味で私は、これまで一度も吉岡さんの個展を、カストリ書房との組み合わせを前提に捉えてきませんでした。

それを裏付けるように、毎年ごとに個展来場者や作品売上が右肩上がりで増えている事実や、前述の通り、吉岡作品が様々な業界から引っ張りだこである事実からすれば、カストリ書房という枠や器など無関係に、既に愛される作品として広く受け容れられていることは明らかです。

私が吉岡さんと関わる機会を頂戴したいのは、多くの人が評価して下さる吉岡作品とカストリ書房の組み合わせの妙以上に、作り手として吉岡里奈さんへの尊敬の念ゆえです。自分が出来なかったことを他人に託すことは、ややもすると身勝手な押しつけになり得、慎まなければなりませんが、自分にお手伝いできることがあれば…との想いで、吉岡さんの個展を主催する機会を頂戴してきました。

前述の通り、数歩先を行く吉岡さんのテーマ作りと、奇を衒っただけではない作品への落とし込みの技量を前に、毎展とも来場者の驚きと、それ以上の喝采を持って迎え入れられています。弊店がお手伝いできる範囲も決して広くはないのですが、さよならイベントで最後を飾って下さることは、私個人にとっても、カストリ書房にとっても、この上ない喜びです。

沢山の来場をお待ちしています。