VVSを通じて6人のパフォーマンスを考えた

はじめに

2月から始まったSixTONESのドームツアーが4月22日の東京ドーム公演で千秋楽を迎えた。SixTONES、関係者の皆様、そしてファン、みんなお疲れ様でした。

今回はVVSツアーを通じてSixTONESの6人それぞれに思ったことを、パフォーマンスを中心につらつらと記録。
先に断っておくがメンバーによって文字数に差がある。大変申し訳ない……。
ちなみにこの記事を書こうと思ったのは、猪狩蒼弥さんのせいである。彼があんなに熱量を爆発させたVVS感想をブログに上げなければこんなことにはならなかった

簡単に筆者プロフィールを。
SixTONESでは髙地担。他、嵐(大野)、NEWS(加藤)、KAT-TUN(中丸)、HiHi Jets(猪狩)を担当している。
コンサートだと演出や照明、スタッフの動線を見ていることも多数。ライブのセットリスト内のストーリー性とかもたまに考える。歌が上手い人が大好き。生音が大好き。
特効と水が上がると手を叩いて喜ぶ。
ペンライトの打点が年々高くなる一方、ペンライトの扱いが雑になってきているのが反省点。

ジェシー

「SixTONES」の表紙を飾る男。
それは、このグループが彼の存在抜きではできなかったという歴史もあるが、とにかくSixTONESのパフォーマンスの中で彼の占める割合がデカすぎる。
まずは歌。主旋律はもちろん、曲中にアクセントを残す「Yeah」や「Woo」という掛け声。完全に喉と身体を自由自在に操る術を知っている。CDの音源通り?そんなのつまらないだろう?と言わんばかりのアレンジ。君はその手にいくつ武器を持っているんだろうか…と、思わず「同じ『人類』なんだ、よな?」何度も頭の中で考えてしまった。
ダンスでは長い手足を使ってダイナミックに。あとは普段のおちゃらけはどこにいった?と思うかのような、妖艶な動きをこれでもかとトッピングしてくる。「DRAMA」だったろうか、下半身から指で身体をツー、となぞる動きをした時には「何やってんねん」と思わず突っ込んでしまった。もちろん筆者がそういう露骨な振り付けや動きが苦手というのもあるんだが、まさかそんな直球投げてくるとは思わなんだ。「うわ!やらし!」と思いつつ、多分パフォーマンスとして彼はわざわざやっているのでちゃんと「やらし!」と受け止めたが。
そんな彼の表現には、時々「陰り」や「狂気」といったものの片鱗を感じる時がある。人間の本能が持つ暴力性というか。
普段は理性でリミッターをかけて隠れている本質を、甘い言葉で暴いていくような。
まるで「ピエロ」のよう。
ステージでくるくると姿を変える彼を見て、そう思った。

京本大我

「気高さ」という言葉が似合う。
そして、こちらを見透かすような強い目の持ち主。中途半端な気持ちで向かい合ったらその迫力であっという間に倒されそうだ。
すっかりラジオでのカオスっぷりで「京本さんは変」というイメージでいたけれど、あれは彼のほんの一部であった、と自覚させられる。
彼の歌声はどこまでも突き抜けていく。
だから、「ここだ!」というところで、彼の声が響くと曲が締まる。
毎ターン、ボスにコンスタントにダメージを与えるのがジェシーだとしたら、一撃必殺で倒していくのが京本さん、みたいな。
でもトゲトゲしすぎでもなく、鳥のさえずりのように上品に突き抜けた声と歌い方をする。おそらく響かせ方のおかげで上品さが増しているのだと思う。

松村北斗

「直径1メートルの範囲を自分の空気にしてしまう」人だと思った。
それはダンスと身体の動きから直感的に思った。
彼はどちらかというと「憑依系」の動き方をする。ダンスでさえも「演じている」、そんな錯覚さえ起こる。
彼の周りだけ、時の流れが変わるような。空間が切り取られているような。でも、6人がフォーメーションで踊る際にそれは微塵も感じない。点在して踊る曲と、集まって踊る曲で、がらりと変わる。
本編最終盤の曲で、たまたま北斗側に入っていたので、彼を見ていた。そもそものガタイが良いので余計動きが大きく見える。それだけで動きは華やかになり、こちらに何かを訴えかけるようなダンスをすると思ったことは忘れないだろう。そのダンスと動きはとても加藤シゲアキに似ているとも思ったので、加藤担が松村担になるのも、とても良く理解できる。私はそうではなかったが……。

髙地優吾

「こんなに歌は上手かっただろうか」
「こんなにダンスは上手かっただろうか」
この一年近く彼を意識的に見て来たことを踏まえて、福岡公演後に真っ先に浮かんだ感想だった。
福岡2日目の「Alright」。
曲と曲の繋ぎ方と、この曲がイントロ無しで始まるため、1発目のジェシーが本来のキーではない音を取った。ハモリで入る京本さんはそのキーで合わせて入った。2人目の北斗もそのままのキーで続いたが、3人目の髙地さんは、原曲のキーをしっかり当てた。3人目まで来ると伴奏もつくので、キーを修正してこれるとは思う。ただ、複数人で歌い繋ぐ以上、前の人の声を聞いているのは絶対で、自分の中で「この音だ」と固めていなければ結構難しいと思っている。
何よりも声の安定性も増していた。デビューして4年目を迎え、歌い込みの賜物であるとも思うが、常日頃の積み重ねがようやく花開く形になったと感じている。
彼のすごいところは、ビブラートをつけないところだ。曲の表現の一つとしてビブラートはよくあるが、彼はずっと真っ直ぐ素直に歌う。
そもそもSixTONESというグループはダンスを全面に出しているわけではない。揃ってないと言われることもしばしばある。
髙地さんはダンスがずば抜けて上手い、というわけでもない。昔は苦手意識が強く、やらなくていいならやりたくない方の人間だ。
実際彼を意識的に見て来たこの一年にリリースされたシングル、「こっから」と「CREAK」のMVを見ると、結構ドタバタと忙しなく踊っている。
あまり踊り込めていなかったり、振り付けの向き不向きだったり、そういうこともあるが、今回のライブでは、そんな細かいことを吹っ飛ばして、「こんなに流れるように踊れるのか」と驚嘆してしまった。
筆者はがむしゃらに力強く踊る人より、軽く飛ぶように流れるようにしなやかに踊る人が好きだ。それは、初めて好きになったアイドルが大野智だったから、というのが大きいと思う。髙地さんは大野さんほどの無重力さはなかったけれど、体重を感じさせない、手の先まで神経の通った動きだった。この「神経が身体全体に通じている人を見た」という感覚は、塚田僚一のダンスを見た時に感じたものと似ていた。ダンスを見ていてストレスを感じない人に久しぶりに出会った。
はやみねかおる氏の「めんどくさがりなきみのための文章教室」を最近読んだ。これは文章や小説の書き方の話だが、「先人の文章を真似していくうちに、個性は滲み出るもの(筆者要約)」と書かれていた。これはアイドルのパフォーマンスにもピタリと当てはまるだろう。わたしが髙地さんを見ていて「個性が無いわけないだろう」と思うのは、パフォーマンスの節々に滲み出た個性を感じるから。正直なところ、彼の歌とダンスには「飛び抜けた個性」は感じにくいが、視点を変えれば、「『飛び抜けた個性がない』という個性」ではないか?シンプルイズベスト。
歌もダンスも削ぎ落とされたものを見せてくれるが、飛び道具だらけのSixTONESの中で、それは確かな「髙地優吾」の強みで、武器になっているのではないか?
SixTONESという六重塔で、心柱さえ担っている存在だと思う。

森本慎太郎

天真爛漫。純真無垢。
広いステージを駆け回り、会場全体にアイドルが魅せるキラキラを届けてくれる。
そんな存在だと改めて実感した。
だからこそ、モニターに抜かれただけで黄色い悲鳴が轟く。
声が上がった瞬間は思わず驚いたが「モニターに抜かれただけで声が上がる」というアイドル性・スター性に興奮した。好きなものを前にした時の心の昂まりが、そのまま何かしらの反応にあらわれる、という光景ほど尊く美しいものはないと思っている。
SixTONESが良くも悪くもアーティストに振り切らないのは、彼の存在が大きいと思った。
特に彼の声質はキャラメルボイスと評されるように、甘めである。それはとてもアイドルに向いている声質なのだ。そして、芯があるしっかりした発声。それ故に彼もまた、曲中で主旋律をはれるし、下支えのパートもどっちもいけるのだ。
彼のダンスは見ていると元気が出る。エネルギッシュだ。そして軽快。
森本慎太郎を見ていると自然と顔が綻んでしまう。それは彼の持つ最強の武器だ。

田中樹

SixTONESをSixTONESたらしめる存在として一番大きいところを占めている、と勝手に思っている。
もちろん、ラップというわかりやすい武器もあるが、彼の声質とダンス・動きが「SixTONESってこんなイメージだよね」というパブリックイメージに当てはまっている気がする。
彼の声質は細く、擦れが強く、とにかく耳に残りやすい。ユニゾンパートでも聞き分けがつく。先日、彼の出ているドラマ「アクマゲーム」の初回でいきなり新曲が挿入歌として解禁されたが、その時も彼の声で判別した。そして、彼は自分の声質の特徴を理解していて、わざと喉を潰して歌っている。よりダミ声に近くなり、曲によってはノイズのようになりそうなのだが、それがいいフックになって、SixTONESの曲に立体感を足しているのだと思う。
さて、彼は結構適当に踊っている。よく彼のことを知らない人からしたらその時点で「イメージに合う」と思うのではないか?
実際、東京初日の「House of Cards」で、髙地さんと樹を見比べていたら、腕を上げる振り付けで高さが全く違くて笑ってしまった。
正直なところ、SixTONESは誰が一番振付師に忠実に踊っているのかを知らないので、なんとも言えないのだが……。
ここで一つの疑問が浮かんだ。
「田中樹は、本当に適当に踊っているのか、アイドルを演じる上でわざと適当になっているのか」
本人からしたらはた迷惑な質問だろう。
しかし、この2つの違いはとても大きな違いだ。
ジュニアの時の映像では適当だと思うことはあまりなく、彼のアイドル論的にも後者の確率が高いと考えた。
個人的には髙地さんの次に樹が好きなのだが、うっかり彼のそういう思想に触れてしまった気がした。「田中樹って興味深い」というとんでもなく深い落とし穴を踏んでしまったような。
最後に蛇足だが、彼のラップを聴くたびに、「猪狩蒼弥さんは本当に彼の弟子だな」と思うし、猪狩のラップを聴いても「樹のラップと言い方、発声がそっくりだ」と思っている。

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