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科捜研物理のお仕事

交通、火災、銃器、音声、画像。
あらゆる物理現象のあるところ。

……

科捜研の物理(工学)分野のお仕事について詳しく解説します。

はじめに

元科捜研物理の方が書かれているブログ「科捜研になろう」に「科捜研の業務【物理科(工学系)編】」という記事もありますので、そちらも参考にされてください。

1.交通

交通事故に関して、速度鑑定や衝突エネルギーの計算などから、事故の様態を解析します[1]。こちらの総説を読むと雰囲気がよくわかると思います。
街頭の監視カメラとドライブレコーダーの普及により、従来の解析に加えてカメラ映像の解析も大きなウェイトを占めるようになっています。

2.火災

火災の原因調査も科捜研物理の仕事の1つです。放火の疑いは無いか、タバコの不始末など過失は無いか、電気配線のショートは無いか。
火災はときに複数の犠牲者を伴うことも多く、中でも放火となると重罪です。
消防と協力して行われますが、火災は件数も多く、科捜研物理の主要な仕事の1つと言えるでしょう。

3.銃器

海外ドラマでお馴染みの銃器犯罪ですが、国内でも銃器が使用される犯罪はしばしばあります。組織犯罪のほか、モデルガンの改造や自作銃などのニュースを見かけます。改造や自作の場合、その威力が問題になります。
また、銃刀法では、刃物も規制されており、同様に鑑定の対象となるでしょう。

4.画像

交通でも触れましたが、監視カメラが普及しているほか、多くの人がスマートフォンを所有しており誰もがカメラを持っている現代では、犯罪に関する何らかの画像・映像が記録されているケースがあります。
カメラ画像の補正、鮮明化、計測など、ドラマのイメージが強いですね。
コンピュータ技術の向上とともに発展を続けている分野です。

5.音声

人の声はそれぞれ固有の声紋をもっており、個人の識別が可能です。
脅迫や誘拐など、日本のドラマでもよく見かける印象があります。
電話やICレコーダーによる録音、映像に記録された音声など、こちらも記録・分析される機会が増えていると考えられます。

(余談)

科捜研物理の分野はいずれもコンピュータやソフトウェアの技術と密接に関連しており、画像や映像の解析はもちろん、交通事故解析などもコンピュータによるシミュレーションが用いられるなど、情報技術も必須となってくるでしょう。
関連して、科捜研以外の専門家が関わることの多い分野でもあると思います。画像・映像の技術はもちろん、各種ソフトウェアの開発など、大学や民間企業で行われていますし、事故調査など民間でやっている機関も多くあります。

リンク

[1] https://doi.org/10.3408/jafst.r020

よくネタ元にしている法科学技術学会誌にも物理分野の論文は掲載されていますが、物理の守備範囲の広さやそれぞれの専門性のため、専門分野ごとに分けるとあまり数がありません。可能なら各分野の専門誌を探すほうが望ましいと思われます。

例えば以下のようなものがあります。
科捜研以外を含めた各分野の雰囲気は掴めるかもしれません。

日本交通科学学会誌
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcts/-char/ja

日本火災学会論文集
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/kasai/-char/ja


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科捜研情報noteの記事一覧
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