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遠くの科捜研を受験するということ

不定期かつ募集が少ない科捜研、たとえ遠くたって募集があるところを受ける人も多いと思います。

そんなとき、知っておく、考えておくと良いこと。

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受験者の視点

科捜研を志して受験する皆さんは、科捜研を知って、調べて、準備して、各科捜研を受験することと思います。

数ある職業の中で「科捜研」であることが重要であり、どこの都道府県にあっても科捜研は科捜研。少ない採用に受かるためには場所を選んでなんていられない!

……という気持ち、よくわかります。私もそうでした。

そして、「地元じゃない人は不利なのかな?」と心配になるのも自然なことです。

ここではその、「不利」とは何か、どんな要因があるのか、採用側の視点から考えてみます。

採用側の視点

警察職員の採用をするのは、各都道府県警察の警務部の採用担当者です。
彼らは警察官や一般の警察事務職員です。

彼らはいつも警察官や警察職員の採用をしていますが、警察官や警察職員の多くは地元の人で、近隣県ならまだしも、わざわざ遠方から受験しに来る人がいるなんて考えてもいません。
もちろん彼ら自身もだいたい地元の人です。
(警察官で全国から人が集まるのは警視庁くらいでしょう)

そんなとてもとてもローカルな彼らは、例えば研究者のような、ポストがあれば全国どこの大学でも行くような働き方を知りません。

また、「科捜研」についてもあまり知りません。
毎年採用するわけでもないので、数年で異動する採用担当者にも経験値が溜まりません。
最近はドラマの影響で知っている人も中にはいるかもしれませんが、科捜研に憧れて人が全国から集まるということを、しっかりと認識できている人は少ないでしょう。

そんな彼らの心配事は、

「この人は辞めずに長く働いてくれるかな」
「この人は警察という生き方に馴染めるかな」
「この人は何か問題を起こしたりしないかな」
「(なんでわざわざこの県に……?)」

などなどです。

また、面接においては採用担当者に加えて、科捜研の人も加わることが多いでしょう。
彼らは採用した科捜研職員と一緒に働いていく当事者なので、

「この人は辞めずに長く働いてくれるかな」
「この人は科捜研という職場に馴染めるかな」
「この人は鑑定・研究に真摯に取り組んでくれるかな」
「(なんでわざわざこの科捜研に……?)」

といったことを考えます。

このとき、地元の人と遠方の人を比較すると、地元の人は既に生活基盤があり、その県の文化にも馴染みがあることから、遠方から来る人と比べて心配事が少なくなります。

また、遠方の人への最大の懸念は、

「採用しても地元で募集があったらすぐそっち行っちゃうんじゃないの?」

です。
たとえ本人にそのつもりがなくても、たとえ地元の人がすぐ辞めても、この心配はついて回ります。

このように、どうしても地元の人と遠方の人でスタートラインには差があります。

したがって、面接においてこれらの懸念や心配事を払拭することが必須です。
これらの心配に絡めた質問もされるでしょうし、そうでなくても、この地に骨を埋める覚悟を示す必要があるでしょう。

全く地元に執着の無い私には想像することが難しいことですが、逆に地元志向の強い人も世の中には多くいて、この間にはまあまあな意識の断絶があります。
私のような人は、地元に執着がない→今後はここに執着する、という論立てになるので、上手い理由付けや説得が必要になりそうです。

遠方の科捜研を受験する場合は、これらの認識の差や採用側の心配事を意識して臨むようにしましょう。

それらさえクリアできてしまえば、遠方からわざわざ受験してくれる熱意がそのままプラスに変わります

その県のことやその県の科捜研のことをよく調べ、自分の本気度をしっかり示せるようにしていきましょう。

マシュマロへの回答

(追記2023/10/14)

質問箱(マシュマロ)に寄せられた質問について回答をツイートしたのでこちらにも引用して掲載します。

https://marshmallow-qa.com/messages/4065a556-f445-461d-851c-70291f49f9c9

私も土地はどこでもいいと考えているので参考になるかわかりませんが、いくつか考えられることはあります。 まず、その想定される質問の意図を想像して考えてみます。

他県出身者を採用するときに採用側が気になる内容から質問の意図を想像すると、たとえば
「来年以降に出身県で募集が出たらそっちに行っちゃうんじゃないか?」
「(その県の立地等どうにもならない要素に起因する不便さや大変さによって)その土地が嫌になって辞めてしまうんじゃないか?」
「親御さんから将来は地元に帰ってくるよう圧力があって辞めてしまうんじゃないか?」
などが考えられます。
そこで、それらの意図を踏まえた上で、「自分がその県で残りのすべての人生を過ごすことができるのか、できると判断しているならその根拠は何か」を考える必要があります。

たとえば、大都市と地方の違いだけを考えても、交通環境の違い(電車のみで生活できるのか、車が必須なのか、通勤に何分かけられるのか,家賃にいくらかかるのか、地元に帰省するのに何時間と何円かかるのか)、人口規模の違い(人の多い環境に慣れられるか、人の少ない環境に慣れられるか)、住人のバックグラウンドの違い(幅広い県から人が集まるのか、その土地の人が地域の大半を占めるか)などの違いが大きくあり、人によってはそこで生活していけるかどうかにクリティカルな影響を及ぼします。
まずはその県の特徴を知り、自分の経験を照らし合わせて考えることで、自分がその土地で生活できると考えられる根拠を示せるか考えてみてください。
たとえば,「自分は大都市も地方も含めて5つの地域に住んだことがあって毎回すぐに適応してきたから今回も適応できる」「地元や住んだことのある地域とその県は(街の規模や環境)が似てるから馴染みがあるし好きになれる」「観光で立ち寄った〇〇沿線のこのあたりが気に入ったのでここに住みたい」など、(その県の立地等どうにもならない要素に起因する不便さや大変さによって)辞める心配が無いことを示せるようにしてください。

最初に述べたように私がそうでしたが、「化学と科捜研の業務にのみ興味がありどんな場所でもその仕事ができるなら構わない。(科学者にはわりとこういう人も多いと信じています)」だけでは、前述のような心配をする相手に対して根拠を示せていません。その土地は業務以外のプライベートを過ごす土地でもあります。
その土地について調べて、実際にそこで暮らすことを具体的に想像してください。どこに住んで通勤してどんなプライベートを過ごすのか考えてみてください。もし将来その土地で結婚相手を見つけたいと考えているのであれば、どんなルートで相手と出会えるか考えてみてください。(知り合いの少ない土地で相手を探すのは結構苦労することも多いと思います)

漠然と「知らない土地に住む」ではなく、それぞれの県やその土地で残りの長い人生を過ごすのだということをしっかりと受け止めて考えることができれば、そのときにはその土地に骨を埋める覚悟が決まっていると思います。あとはそれを言葉にして示すだけです。頑張ってください。

https://twitter.com/kasoken_jouhou/status/1713071167731560665

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科捜研情報noteの記事一覧
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