シャカファイは運命を愛し、運命を否定し、運命に生きていた

どうも、輿水畏子(こしみず かしこ)です。

みなさんウマ娘やってますか。私はやってなかったんですけど最近復帰しました。なぜ復帰したのかといえば、つい先日実装された新規ウマ娘、ファインモーションの育成ストーリーを見るためです。

ファインモーション。ウマ娘が流行ってしばらくした頃から、この子の存在はなんとなく知っていました。なぜかといえば知り合いのオタクがずっと「シャカファイ!!!」と騒いでいたからです。エアシャカールとファインモーション、この組み合わせがカップリングとしてすごいらしい。風の噂でそういう話を聞きつつ、「とはいえ育成実装もされてないしほとんど資料ないじゃん。オタクが騒いでるだけなんじゃないの?」という点がずっと引っかかり、いまいちシャカファイの波には乗れずに過ごしてきました。

その状況が一変したのが、ファインモーションの育成実装です。
求めていた「資料」がついにやってきました。しかも先んじてファインの育成に突撃していった方々を見る限り、マジで「シャカファイは幻じゃなかった」らしい。ここまできたらもう黙して見ているわけにはいかず、早速ファインをお迎えして育成に臨みました。今回はファインの育成ストーリーへの感想です。ネタバレあるのでお気をつけください。

運命を愛したファインモーション

ファインの育成ストーリーの感想を端的に言うとすれば「本当にシャカファイだった……」です。

それはシャカファイの絡みがたくさん見れたとかそう言うレベルの話ではなく、ファインの育成ストーリーの根幹の一つがシャカファイの話だったというレベルのモノでした。本当にそれでいいのか。とはいえ、ファインの育成ストーリーにこれほどまでシャカールが絡むようになった原因は、ファインの気質によるところがあると思っています。

その気質とは、ファインが「己の運命に従うことを、欲望レベルで望んでいる」というモノです。「運命」という言葉は、ファインの育成ストーリーにおいて重要な頻出単語でした。ファインには「将来は祖国の礎とならねばならない」という使命があります。そのため、ファインが日本で過ごせる期間は3年きっかりと決まっており、トゥインクルシリーズの3年間が過ぎればファインはレースに生きるのを辞め、祖国へ帰り、使命の元に生きる未来が待っています。これが「無理やり決められた定めであり、ファインはそこへ抗いたいと思っている」ならば、ファインの育成ストーリーは全く違ったものになっていたでしょう。

ですが、ファインは「運命を愛して」いました。彼女は「美しい自己犠牲」の下に祖国に殉じようとしているのではなく、自らが祖国のために生きる未来を真に己が望みとし、そこに向かって走ることをまっすぐに目指している少女だったのです。その覚悟は揺るぎなく、彼女の信念として形作られています。これは本当に丁寧なキャラクターの扱いだなぁと感心してしまう部分でした。ゆえに、ファインモーションは非常に芯が強く、道を違えない少女であると描写されていました。もちろん、育成ストーリーの終盤ではファインにウマ娘らしい「走り続けたい」という望みが生まれ、二つの欲望がぶつかり合う展開となるのですが、一方でファイン自身の覚悟が固すぎるため、彼女単体では物語に「揺らぎ」が生まれづらい構成になっていました。

運命を否定したいエアシャカール

そんなファインの物語に「揺らぎ」を与える存在。それこそがエアシャカールです。シャカールのキャラクター性を一言で表すならば「データ至上主義」でしょう。公式サイトのシャカールの紹介文でもこの文言が出てきます。

アナーキーなデータ至上主義者。頭も性格もキレキレで、アバウトな勝利ではなく、ロジックによる絶対的な勝利を追い求める。何度計算しても、三冠には7cm足りないと出ており、自分の計算に対する自信と絶望を抱えながら、一縷の可能性を探し続ける。

公式サイトの紹介文からして重くてスゲー。さて、ファインが運命を愛するように、シャカールもまた運命を信じる者でした。シャカールの信じる運命とは「データから計算された揺るぎない結果」です。レースにおいて、データは嘘をつかない。そこから導き出される予測もまた逃れえぬ「運命」である。自分が導き出した計算結果という運命からは逃れられない。シャカールは運命を信じつつ、自分の運命を否定したいと願い続けていました。

そんなシャカールが見出した「一縷の可能性」こそが、ファインモーションでした。シャカールはファインのデータに「ゆらぎ」を見ます。そんなファインが走り続ければ、データが導く結果を超える何かが見出せるかもしれない。「神の言語」である数字を覆すモノが存在するならば、それはシャカールにとって自身の運命、足りなかった7cmをも覆す福音に他なりません。しかし、ファインには祖国のための使命があり、その運命に従う限りファインのレースは3年で終わりを迎え、走り続けることはありません。シャカールもそのことを知っており、ファインが3年で走るのをやめ、データ通りに結果が収束していくことを予測しています。一方で、シャカールは希望を捨てることができませんでした。

ここで二つの願いがぶつかります。運命を愛し、運命に殉じたいファインモーションと、運命を信じ、運命を否定したいエアシャカール。ファインの願いは単純明快で、運命に生きることです。一方で、運命を否定したいシャカールにとって、自分が見出した希望であるファインが運命に殉じることは、すべてが運命通り進んでしまうこと、つまり希望が潰えることを意味しています。だから、シャカールはファインが運命から逃れることを願っている。育成ストーリーにおけるシャカールの姿は、もはやファインに縋っていると言っていいレベルでした。

「お前なら全部、ブッ壊してくれンのか……?」
「……なら、仮にだ。もしオレが頼めば……お前は走り続けるのか?それがオレに必要だって言ったら?お前はオレの神になってくれるのか?」
「そしてお前はあがかない。残酷なモンだな。お前にはーーいっそ”走りの才能”なンて、なかったほうがよかったのに。」

シャカールの台詞からは、どうにかしてファインに運命を否定してほしいという願いと、ファインの覚悟に対する絶望が滲み出ています。「ファインに”走りの才能”なんてなかった方がよかった」という独白は、走りの才能と自分の使命の中で揺れるファインを慮ったものでもありますが、同時にファインの走りに魅せられた人達、ひいては自分の未来の悲しみを予期した台詞でもあるでしょう。そしてシャカールは、ファインが自らの神にはなってくれないと悟ると、今度はファインの神になろうとします。ファインが自分の運命を否定してくれないならば、シャカール自身の手によってファインの決意と運命を覆すしかない。3年目、ファインの最後の年の有馬記念で、シャカールはファインに自らの走りを、足掻きを魅せ、それによってファインの気持ちを揺るがそうとするのです。

「お前には無理だった。だから……オレがやる。ーー全部、ブッ壊す。神の言語も、お前の信念も、オレが潰す。」

自分の信じた希望が運命を否定しないと知ったシャカールは、最後にもう一度、自分自身で運命に立ち向かいます。この信念の再起はファインのストーリーの中でも好きな場面です。運命に絶望していたシャカールが、ファインに希望を見出し、ファインと共に過ごす中で希望を裏切られながらも、同時にファインのお陰で運命に立ち向かう力を手にすることになる。この構成はシャカールにとって本当にファインが大きな存在であること、二人の関係性が運命的であることを象徴しているようです。

ちなみに、ファインの最後のレースは選択制になっており、シャカールが出場する有馬記念に出ないという選択も取ることができます。でも私はまだ怖くてその選択ができてません。Twitterで有馬に出ない時の話のスクショは見ましたが普通にシャカールの姿が辛くてしんどかったです。ここまでの構成を作っておきながら有馬に出ない、シャカールの決意が届かないようにも見えてしまう選択肢を残しておくサイゲくん悪魔か?

ファインとシャカールが共にいることもまた運命

さて、シャカールがファインに大きな希望と絶望を抱いていることは前述の通りですが、一方でファインからシャカールへの想いはどうなっているのでしょうか。

端的にいえば、ファインはシャカールにもまた「運命を感じて」いました。ファインはシャカールが絶望に面していることも、その絶望を打ち破ろうと足掻いていることも知っています。シャカールことをどうして好ましく思っているのかと問われ、ファインは以下のように返答します。

「一番は、尊敬できる子だから……かな。たとえ絶望が訪れても、決して考えることをやめない。とても賢くて、かっこいい。そういうところが好きだなあ。」

そんなシャカールが自分に希望を抱いていることをファインも承知しています。それどころか、ファインはシャカールと出会った時から、シャカールが運命に抗う希望として自分を求めることを予期していたのです。

「だって初めて会った時から知っていたもの。この人はいつか必ず、私を必要とする。ーーだから、傍にいてあげなくちゃって。」

ああ、これを運命と言わずなんと言おうか。シャカールと同じように、ファインもまたシャカールへ運命的な想いを感じていました。

それでは、自分を必要としているシャカールのためにファインが自分の使命を捻じ曲げるのか。答えはNoです。印象的なのは3年目の夏合宿のやりとり。

「もう、揺るがねェんだな。お前は、筋書き通りの役を演じる。」
「うん。ごめんね、神さまにはなれないよ。」

これがファインの凄いところであり、シャカファイが見ていて辛くなるところでもある。ファインの覚悟は本当に生半可なものではなく、運命を感じているシャカールという相手のためでさえ、自分の道を折れることを良しとしませんでした。ファインに縋り続けたシャカールと、そんなシャカールの姿を、願いを承知で、そのことに運命を感じながらも、自分の決意を違えようとはしないファイン。育成ストーリーで描かれたこの関係性は、我々が全く知らなかったシャカファイの姿でした。シャカファイしんどいな〜〜〜〜〜〜。

ですが、ファインは折れなかったからと言って何もシャカールに与えなかったわけではありません。なぜならばファインは運命を愛しているから。自分を求める運命の相手に対して、ファインは自分の運命の中でできることを精一杯に返そうとするんです。先ほどの夏合宿のやりとりの続きが以下です。

「けれど、とびっきりの役を演じるよ。キミの心も躍る走りをする。それで……天使くらいにはなれない?」

これぞ愛。もう本当にファインの在り方は愛としか言えない。度々述べていますがファインは揺るがない少女であり、自分の望みにまっすぐ生きる姿勢を貫いています。その望みの中で、自分なりのやり方で人々に自分という存在を刻みつけ、シャカールをも救おうとするファインの言動は、シャカールからは「傲慢」とすら言われます。自分の道を進み続け、周囲を振り回し、傲慢なほどに望みを果たそうとするファインと、そんなファインに振り回されて、希望と絶望を味わって、最後は自分の脚で立とうとするシャカール。シャカファイという関係性の良さがここに詰まっています。最後の有馬記念のやりとりに、そんなファインとシャカールの全てがぶちまけられます。

「私ね、きっと願っていたんだ。この日が来ることを、レース場という場で、キミと走ることを。だって最後の相手は一緒に始まってくれた、キミが良かったから。」
「ドキドキしないなんて、無理だよ!だって今のキミは、すっごく高潔……。いいよ、全部ぶつけて?私にキミの熱をちょうだい!」
「はッ、それが本性かよ。そっちの方がマシだ。悟ったような面で、笑いやがって。……イラついてたンだよ、お前には。」
「ふふ、おかしいなぁ。それってラブレターにしか聞こえないよ?」

やっぱ有馬回避すんの辛くね?

シャカール、良かったね!!!!!

さて、育成の最終レースを超えた後、ファインモーションは前々から決めていた通り、3年の期限を守って祖国へと帰ることになります。運命は変わらず、ファインは使命を全うし、シャカールは有馬記念をもって引退宣言を出します。結局のところ、ファインは鮮烈な思い出だけを残し、全ては予定調和に収まってしまうのか……。

そう思った直後、ファインが復学します。

「日本親善大使」の肩書と共に、祖国へ尽くす使命を日本で、走り続けながら果たすために。

運命を愛し、運命に殉じたファインが選んだ道は、その運命の中で結末を変えることでした。こんな鮮烈な決断があるか???それは誰よりも傲慢に自分の望みを選び続けたファインモーションという少女にとって最もふさわしい道でもあるでしょう。ファインモーションさん本当に揺るがなくて凄すぎる。

そうして、ファインとシャカール、運命の二人はもう一度邂逅を果たします。ここに至り、シャカールの希望は世界に届きました。ファインは自らの運命に従いながら走り続けます。シャカールのデータが予測していなかった、運命を乗り越えた未来に立ち、シャカールは引退宣言を取りやめ、また運命に抗う決意をするのです。本当にシャカファイ、運命の二人だよ……。

「そーか、結末は変わってたンだな……!なら引退する意味がねェ。予定変更だ。……今度こそ全員のドタマブチ抜いてやる!」
「今はもう、違う道筋が見えてる。……楽しもうぜ、ファイン?」

いや本当にシャカール、良かったねって感動しっぱなしでした。正直私はシャカールの方に感情移入しまくってたので、育成ストーリー通してシャカールのことがかなり好きになってましたし、そんなシャカールがファインと共に「違う道筋」を描けたことに、本当に感謝しています。

……とまあここまで書いてて思うんですけど正直もはやどっちの育成ストーリーなのかわかんねえよ。シャカールの育成ストーリーどうなるんだろ。コワ〜〜。

シャカファイは「運命」

以上、ファインモーションの育成ストーリーを通じてみたシャカファイのあり方について感想を述べてきました。やっぱり二人は「運命」の組み合わせだったと思います。それは運命的な出会いを果たしたという意味でもあり、運命へ殉じることと運命を否定することを願い争った二人であるという意味もあり、最後は予測された未来を乗り越えて、新しい運命の元に生き続ける二人であったという意味も篭っています。いずれにしても、シャカファイを語るのに「運命」という言葉は避けては通れないでしょう。最初は知り合いが騒いでるな〜くらいの認識だったカップリングが、履修してみればこんなにも激重な組み合わせでなかなかしんどいですが、私も完全にシャカファイに魅了されてしまった側なので、今後も二人の展開を見守り続けたいと思っています。

あと完全に余談になるんですけどファインの育成ストーリー中に姉として登場したピルサドスキーさんめちゃくちゃいいキャラしてましたよね。妹を残してレースの世界へ出奔してしまう奔放さ、その裏で妹のことを悔恨としてきちんと残している律儀さ、トレーナーへの「気の強い方が好みでね」という態度、そこからつながるエアグルーヴさんへの絡み方、仄めかされる愛しい僚友の存在と美味しいところめちゃくちゃ持ってたし。ピルサドスキーさん実装されねえかな。せめて3Dアバターだけでもできないか?シンデレラグレイみたいな感じで直接名前は出さない方式でも……サイゲくん!!お願いします!!!

さて、それでは私は来るべきシャカール育成実装まで震えて眠ります。さようなら。

追記

私は大のイメソンオタクであり、推しや推しカプのイメソンを年中募集しています。シャカファイのイメソン、お待ちしてます……(シャカファイじゃなくてもいいよ)
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