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Butterfly Effect〜日本の未来に届く風〜

2020年3月7日そのメッセージは届いた。

それは前年に「鴉」という我々が主催する書家のバトルイベントにスポンサーとして協賛いただいた大西京扇堂の大西さんからだった。

「これから、夏に向けて、アーティストさんとのコラボ商品なんかもチャレンジしたいなぁと思ってまして…ぜひまたお力お貸しいただけましたら幸いです」

その時はまだコロナ禍という悲壮感もなく、情報も薄い僕らは「単なる流行りの風邪かインフルエンザ」くらいのノリでこの出来事は終息し、また元の時間が流れていくものだと思っていた。

大西京扇堂
天保年間(一八三〇年~一八四三年)創業と伝わっており、 現当主は九代目を襲名。当時は屋号を大和屋と称し大和屋庄兵衛 を名乗っていましたが、明治期になって「京扇堂」と改名。古くより東海道の終点三条大橋近くに位置し妙心寺、知恩院、南禅 寺など各宗本山の御用達を務め寺院扇を納める かたわら、内外観光客の多い立地のため舞や 茶道、一般の扇子などあらゆる扇子を扱うようになる。そんな歴史ある老舗の扇子屋さん。

場所が京都ということもあり、当時はインバウンドの外国人観光客需要で賑わってもいる扇子屋さんだった。

まずは会って話をすすめないとはじまらないと考えた僕は、3/18に第一回目となるアーティストを7名集めたキックオフのようなミーティングを僕たちのオンラインサロンメンバーでもある日本酒酒場キャンプという居酒屋の2Fで開催。

当時はまだ東京でのリアル開催のアートイベントに出展しようという計画もあり(まだそれくらい危機感が薄かった)その出展する1点もののアート作品と量産する作品(こちらはネットで販売)みたいな企画だったと思う。

そこからすぐにアーティストは扇子のテンプレートに原画やデジタルデータで作品をつくりはじめた。これがだいたい夏くらいの出来事。そこからサイトも立ち上げて8月のお盆商戦に間に合わせる、そんな計画だったように思う。

ここからコロナが徐々に姿を見せ始める。

夏を境に一気に世界中で広がりはじめたコロナウィルスは日本でのインバウンド顧客を奪い、さらに外出して会食や会話をすることも予断を許さない形になっていった。

大西さんの方でも扇子の売り方として、「SDGsの時代にこどもたちに使わせたい道具を伝統工芸の力で」伝統工芸品新商品開発企画コンペというのがありまして、抗ウイルスの京扇子で、子供むけに動物の顔で提案してみようなあとふと思いまして…」

というようなコロナ対策としての扇子の売り方と両睨みの戦略になっていく。扇子で口を隠し飛沫を防止する、そんなやり方だった。

アーティストの作品を扇子にするプロジェクトは商品化も含めて困難をきわめた。扇子をキャンバスにする1点ものはその形状からなかなかアートとして価値ある雰囲気をつくりづらく、また量産物にいたっては、プリントする際にさまざまな障壁が立ちはだかった。

商品撮影ができる段取りが整いはじめたのは、12月20日。カメラマンを手配し撮影が終わったのが1月の半ば。

まだ商品として完成していない作品も数点あり、そのくらいすべての段取りを狂わせるコロナの猛威だった。

残っていた商品を撮影し、そこからサイトにあてこんでいく。

当初サイトは完全独立したLP形式のキャンペーンサイトのようなイメージをもっていて、そこから独立したBASEのような販売カートを設置し販売していく予定だったが、そこで取られる販売手数料を考えていくととても大西さんの制作に利益がでる構造ではないと判断し、急遽大西さんのもつECサイトの方に商品を登録してもらい、そこにリンクでつなげるという方法を選択し、お客さんにはより安価に、大西さんにはより利益が残る構図を描いた。

商品登録が終わり、販売の目処がたったのが7月の半ば。サイトを微調整しようやく9/1の12時から販売が開始されるサイトがこちら

通常バタフライエフェクトというのは、あまりいい意味では使われない。けれど僕はこの蝶々の羽くらいの風が、日本の未来、伝統産業や老舗のお店の未来に届くような風になるといいという想いをこめた。そう考えると扇子が蝶々の羽にみえなくもなかった。

参加してくれたアーティストは書家や画家、イラストレーターなど多種多様なメンバー12名。その半数以上がクリエイターのオンラインサロン「CREA/Meetup」のメンバーが名乗りをあげてくれている。

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1年の間にすっかり世の中は形を変えてしまった。人の顔はマスクで覆われることがデフォルトになり、イベントは軒並み中止にせざるを得なくなり、大人数で笑いながら会食することもできなくなった。

そんな中、何度も倒れそうになったこのプロジェクトがそれぞれの諦めない心で1年越しに形になった。1年もの熟成された思いのこもった作品が扇子という名のキャンバスをかりてアート作品となった。

鴉やKRAFKAという伝統産業をエンターテイメントやイベントの形にして実験的におこなってきた弊社だったけれど、その思いが先のイベントを通じてこうしてまたひとつ結実し、世の中にでていくことは喜びでしかない。

楽しいことや喜びに満ち溢れたニュースが少なくなった世の中で、みなさんの家庭や空間に幸せの風をとどけるようなそんな作品になっていたら嬉しいなと思う。

ぜひ今日の12時にこちらをご覧ください。日本はまだまだ捨てたもんじゃないよ。


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