第23回「22j TERRACE（つつじテラス）」駄菓子＆ビールは大人だけの楽しみ｜ パリッコ
☆NEWS!
本連載が単行本になりました。連載時には掲載できなかった写真を多数追加収録、読むだけでほろ酔い、夢見心地の旅気分が味わえる、書籍ならではの充実の一冊です！
2020年9月25日（金）発売。四六判並製、184ページ、オールカラー。定価：本体1600円＋税。全国書店様にてお求めください！
数年前、僕の住む西武池袋線の石神井公園から埼玉方面へ3駅下った東久留米という街に縁ができ、頻繁に通っていた時期がある。
東久留米は、駅を挟むように「黒目川」「落合川」の二本の川が流れていて、どちらも規模は大きくないけれどとても美しい。川辺には公園や広場などもたくさんあり、夏場は子供たちが川遊びをしていたりする。こんなに自然豊かな場所が家から数駅のところにあり、この年になるまで気づかなかったなんてと、初めて知ったときはけっこう衝撃を受けた。
それ以来東久留米は、用事がなくても散歩に行ったり、ときには折りたたみ椅子をたずさえてチェアリングに行ったりする大好きな街になった。
つい先日も、まさにこの連載『天国酒場』の単行本作業がひと段落し、久しぶりにのんびり川沿いでも散歩したい気分になった。それで何気なく、WEBで東久留米近辺の地図を眺めていたところ、どうも気になる店を見つけてしまった。
僕のあまり行ったことのない駅北側方面の黒目川沿いに、「22j TERRACE（つつじテラス）」という店があって、カフェマークのアイコンがついている。クリックして情報を見てみると、「駄菓子屋を併設したカフェ」というようなお店らしく、なかにはビールの写っている写真もある。あまり調べすぎても楽しくないしと、僕は勢いで、お店へ行ってみることにした。
◆緑豊かな「黒目川」
駅から線路沿いに5分も歩けば、こんなのどかな風景が広がっている。川沿いにさらに5分ほどのんびりと歩いてゆくと、その店は、静かな住宅街のなかに突然現れた。
◆ここが「22j TERRACE（つつじテラス）」らしい
平日の真昼間だったけど無事営業中のようで、まずはレジカウンターへ向かってみる。すると、やった！ 各種ドリンクメニューのなかに「ハートランドビール」があるぞ。今日あるフードメニューは「ロコモコサンド」と「とりとチーズサンド（イタリアン風）」、二種のサンドイッチのみのようだ。どちらにも惹かれるので、単品でひとつずつ注文できるのが嬉しい。
◆手作りサンドイッチとビール。これは間違いない
◆加えてこのシチュエーション
手作りの、ボリューム満点だけど優しい味わいのサンドイッチがものすごく美味しい。最近思うんだけど、サンドイッチってひとつでもいろんな味が楽しめて食べやすく、ものすごく優秀な酒のつまみじゃないですか？
川に向かった開放的なテラスには、めっきり秋めいてきた心地よい風が吹き抜ける。聞こえるのは木々のざわめきと、片隅に置いてある子供用のメダルゲーム「超能力くらぶ」から1分に一度くらい流れる「君にも超能力がある」というセリフのみ。その不思議な感じも含め、ふわふわとなんともいえない天国感を味わえる店だ。
女性オーナーのじゅんじゅんさんによれば、この建物はもともと、ある陶芸家のアトリエで、現在テラスになっている場所には茶室があったのだとか。それを「粋だなぁ」と眺めていたら、ある日茶室が取り壊され、建物が売りに出されているのを目にする。じゅんじゅんさんは当時、会社勤めを終え、第二の人生として、地元の子供たちのために駄菓子屋をやりたいと考えていた。そこで思いきってここを借り、4年ほど前に誕生したのが、22j TERRACEというわけだ。
◆店内の駄菓子屋スペース
今ではすっかり、放課後の子供たちやママさんが集まる憩いの場。なので、僕のような酔っぱらいはこういうエアポケットのような時間にひっそりと利用させてもらうのがちょうどいいのかもしれない。それでもお酒を置いているのは、じゅんじゅんさん曰く「私たちが好きだから」で、なんとも嬉しく、頼もしいお言葉だ。実際、冬場にはホットワインを出したり、日にち限定で酒場的な営業をすることもあるそう。
◆駄菓子＆ビールは大人だけの楽しみ
思わず駄菓子を買ってしまったので、不可抗力でビールをもう1本注文。駄菓子飲みって、思いだした頃にやるとたまらなく楽しいんだよな。
ちなみにこの場所、単に駄菓子屋をやるだけではもったいない広さだからと、娘さんがやりたかったというカフェも併設されたのだとか。家族経営の駄菓子屋兼カフェ。子供の頃にこんな場所が近所にあったら、きっと一生忘れられない思い出の店になっただろうなぁ。
◆まぁ、大人の僕もこれから通わせてもらいますけど
22j TERRACE（つつじテラス）
住所：東京都東久留米市氷川台1-1-15
電話：042-478-2728