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第24回「等々力レストハウス」缶ビールのつまみは、避暑地のような風景とかき揚げそば| パリッコ

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 今はなき伝説の店「たぬきや」をはじめ、多摩川沿いが天国酒場の宝庫であることは以前にも書いた。そんな、僕のなかでは“聖なる川”である多摩川だけど、我が家のある東京都練馬区との接点はなく、「多摩川は遠きにありて思ふもの」と勝手に思いこんでいた。
 ところが先日、僕がもっともよく使う西武池袋線と相互乗り入れしている東急電鉄の路線に、「多摩川」なる駅があることを発見。地図を見てみると、その名の通り多摩川のすぐ横に位置している。と、いうことはだ。なんと、我が最寄の石神井公園駅から多摩川までは、乗り換えなしに1本の電車で行けてしまうというわけだ! これは意外だった。
 となれば気になるのは、多摩川駅の近くに天国酒場はないのか? ということ。さっそくGoogleマップを拡大縮小したり、3D表示にしてぐるぐると角度を変えてみたりと執拗に探してみると、嬉しいことに、いくつかのそれらしき店が見つかった。
 なかでも、多摩川駅から多摩川を神奈川県側に渡り少し歩いた場所に「等々力緑地」という大きな公園があり、そこにぽつんと建つ「等々力レストハウス」という店が気になる。よし、さっそく行ってみることにしよう!

 等々力緑地は、多摩川、および隣の新丸子駅から、それぞれ徒歩15分くらいの場所。多摩川沿いというよりは、ほんの少し陸の内側にある。Jリーグチーム「川崎フロンターレ」のホームスタジアムだという陸上競技場をはじめとした各種のスポーツ施設が充実していて、「等々力緑地釣池」という釣りができる池があったりもするらしい。そのほとりにあるはずの等々力レストハウスを目指していると、確かに水辺が見えてきた。

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◆多くの釣り人が釣り糸をたらす「等々力緑地釣池」

 近づいてみて驚いた。その風景は、「釣池」という言葉からなんとなくイメージしていたスケールを大きく超え、まるで湖のようだ。電車1本で来られる場所に、まだ知らぬこんな場所があったんだな。まるで旅先にでもいるような気分になりながら、池のほとりを進む。するとその先に、一部の隙もない「天国酒場オーラ」を放つ店が、確かに建っていた。

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◆間違いない……

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◆新たなる天国酒場に足を踏み入れる瞬間の興奮!

 昼時をとうに過ぎた店内に入ると、先客の姿はなく、ただ静かな時間が流れていた。

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◆店内スペース。右側には大きな厨房

 広々として開放感のある店内。大きな窓からはゆらゆらと木漏れ日が差しこむ。長い歴史を物語るような飴色の壁は、もはや芸術品だ。

 メニューのラインナップは、立ち食いそば屋を想像してもらえればわかりやすい。各種天ぷらに、そば、うどん。それから、カレーやカツ丼、定食などのご飯ものが少々。基本は食事処だが、我々酒飲みにとって嬉しいのは、缶ビールと日本酒、それから、おでんの存在だろうか。

 正統派つまみのおでんでしっぽりと飲むのもいいけれど、僕は立ち食い系のそばに目がない。それをつまみに飲めるなら、まずはぜひとも堪能したい。というわけで今日は「かき揚げそば」を選ぶことに。

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◆そう、こういうそばがいちばん好きなんです

 出汁の香りが強烈、かつしっかりと味の濃いつゆと、優しいそば。バキッとハード目に揚げられたかき揚げと、輪切りねぎの一体感。ズズズとつゆをすすり、まずはそれをつまみにビールをごくり。お次はそばとかき揚げ、どっちをつまみにしてやろうか?
 ひとりでそんなことをしてるだけでも最高に楽しいのに、窓の外には水辺の風景。あぁ、なんて幸せなんだろうか。

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◆静かで、贅沢な時間

 そしてかき揚げそばの醍醐味といえば、時間経過とともにもろもろと崩れた天ぷらと、つゆ、そばの渾然一体で間違いないだろう。

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◆これぞかき揚げそばの真骨頂

 あんなにもエッジの立っていた衣が、いまや為す術なくつゆにその身をゆだねきっている。たっぷりの油が混ざったつゆは、ジャンクなコク深さを増している。それらをそばに絡めてずずっとすすっては、ビールで爽快に洗い流す! 高級な寿司や天ぷらとはベクトルが違えど、日本人に生まれて良かったと心から感謝したくなる時間を堪能させてもらった。

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◆ふぅ、ごちそうさまでした

 この店、通常の営業時間は午後4時半までだが、園内の競技場でJリーグのナイターが開催される日は7時まで延長営業をするそうだ。また、釣池で釣りの大会がある日なども大変にぎわうらしい。今日のような静かな魅力も良かったけど、店内が大にぎわいになっている様子も、また見にきてみたいな。


等々力レストハウス
住所:神奈川県川崎市中原区等々力1-1
電話:044-733-2724