短歌 3月【静電気】【自由詠】

第182回「短歌ください」に送った短歌20首です。


【静電気】

義母の飼う猫が体をすりつけて私に溜まっていく静電気

髪の毛を立たせるために下敷きを母親は子に買い与えてる

ピカチュウを肩に乗せてるサトシでも静電気除去シートに触れる

IKKOが人差し指を揺らめかせ静電気掻き集めてくれる

この街で鳴ったすべての静電気繋ぎ合わせて第九を奏でる

大切な人の差し出す大切な右手に落としてしまう雷いかづち

静電気許せず訴訟起こしてもドアノブに完敗してしまう

右腕が繊維の森を駆け抜けて左腕もと手招いている

静電気与える相手がいるという冬でしたとてもあたたかい冬

いつまでも一緒にいたいというようなビニール思いっきり振り払う


【自由詠】

カーテンの長さが足りず隙間から漏れた朝日で暖かい床

網棚に忘れ去られた朝刊が何周目かの新宿に着く

ポイ捨てをされても偉いよ牛乳は 不届き者の骨を丈夫に

暖色の乾いた音で満ち溢れ鳴らせずにいる初春の蛙

豆菓子を皿に落としてカラカラと食欲知らせるコメダ珈琲

中華屋の店先で麺が上下するディスプレイ麺の色が剥げても

冷蔵庫開けて俺から逃げていく水道修理の電話番号

米研ぎで徐々に濁っていく水に今日の明かりが漂っている

魂の重さが21gないような日に入れるバスボム

海底に沈んだ電話ボックスの浮いた受話器をフックに戻す

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