忘れないこと

久しぶりに開いた。
書きたいことはたくさんあったけど、どれも忘れてしまった。
生活をすることと考えることのバランスを取らなければ、と少し焦っている。
大事にしている「とりとめないこと」を見過ごし忘れるような大人になりたくない、と17歳の頃の私の声が聞こえる。

当時と同じくらい髪が伸びた。
痛いくらい自意識過剰で壁を作って人を遠ざけていたくせに、毎日傷ついていた。ナイーブな少女は大人になり、社会に適応するため折り合いをつけられるようになった。
苦労して入った会社で数年働けているし、絵を描くこともできている。帰る家があり、大事な人がいる。
今の幸せはあの頃の私が一つずつ選んで築き上げたものだ。
痛々しく正直だった時期も含めて、順調な人生だと思う。まだまだ未熟だけれど、少しずつ大人になってる。


でも大人になってもどうしようもできないことがたくさんある。
そのうちの一つは、大事だった人のことを忘れられないこと。
相手にとっては私に思い出されること自体余計なお世話で何かと思われても困る、と鬱陶しがられることは想像できる。ただただ私の勝手。
日記だから、と言い訳をする。


元気ですか。
同じ場所に住んでいますか。
家族とは仲良くしていますか。
ごめんなさい。今でもほんの少し心配です。

私は未だに思い出します。
気づいたときには聴こえるギター、明け方のキウイの味、誰にも気づかれない意地悪と思いやり、強く、途切れることない音色。
辞書を忘れた英語の授業、一緒に歌いながら歩いた帰り道、シャワーの音まで入った電話。
一緒に作ったケーキ、何時間もした恋の話、いつでも受け入れてくれたあなたの家。

あなたたちが私を好きでいてくれたから、私はあの時も確かに幸せでした。
あまりにも懐かしく尊い時間だったから、思い出すと切なくなります。
誰かと関わり生きていかねばならないのに、その関わりを終えることはとても辛く、忘れ難いものになります。
これは執着でしょうか。
あなたたちは私とは別の人生を歩み、私の知らない人と出会い、もう想像のつかない別の暮らしを始めている。私とは少しも交わらない道。

どうか私の知らない場所で、私に知らされることなく幸せでありますように。
もちろん、幸せを願うことで許されたいなんて思っていません。私もこの気持ちをどうしたら良いか分からず、ずっと持ってしまっています。
あなたは忘れて良いけれど、あのとき私を幸せにしてくれたことを私は忘れません。
ありがとう。

この季節は別れを思い出してしまう。
春の風は、私の気を少しおかしくさせるのかもしれない。
ビョークの声も春の風に似ている。
ライブ素晴らしかった。
私は今すごく幸せだと思う。

まとまりのないことを書いてしまった。
交換日記のこと忘れてないよ。
5月になったら柏餅を買って食べようね、柏。

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