人生図書館

アカシックレコード。

ここは、人生図書館。アカシックレコードなんて呼ぶ人もいるらしい。基本的には、閉架式の図書館で、限られた会員だけが往き来出来る。大多数の人間は、存在すらしらない。

今日も、歴史から消された女教皇がある人の判例を読んでは改善策をつぶやいたり、閻魔さまが連載中の連続小説を読みながら顔を真っ赤にしたり、元人間たちが、恋愛小説よみながら、だから恋愛はゲームにすべきではないだの、三角関係になったら一度は三人で話し合うべきだの、いや、誰かが恋愛から手をひけばいいだけだの、議論をかわしている。

この図書館の主は、名前がない。

一つ確かなのは、誰の心にも、誰の人生にも、主は繋がれるらしいということで、時に心の声になり、時に妄想になり、時に夢となり、時に意思となって、複数の小説を執筆し続けているらしい。

そう、人生図書館は、彼の作品展示場でもあるのだ。

うっかり、彼の小説の登場人物が時折迷いこむ時もあってだな。

おかしな話ではあるが、通常は紛れこめない会員制の図書館に、会員ではない人間が迷って来るときも時にある。

大概、彼らは本の中身を閲覧したあとは、発狂して帰る。だから、覚えていない。

たまに、冷静なやつもいて、帰ったあとで、金儲けに使う人間もいれば、ひっそりと日記という本に書き込む人間もいる。

主は、呼ばれざる客を見付けては観察したりする。

そして、また、主の小説のネタにされていく。

主の小説は、主の思う通りに執筆されているようで、そうでもなかったりする。

ここは、主の激しい後悔のポイントではあるのだが、主は、最初に自分が玉座に座った時に渡されたルールブックに、発狂のあまり、矛盾だらけの文章を書きなぐり、ランダムに繰り返す、これはゲームである、と決めてしまったのである。おかげで、登場人物たちには、制限付きではあるが、自由意思が生まれた。

図書館の主は、何より一人が怖かったし、自分の存在が消える時がもっと怖かった。

永遠に存在を消さないために、そして、永遠に誰か友達が寄り添ってくれるように、永遠に物語を書き続ければいい。

そして、時々、役割を終えた登場人物から、しっかりしてそうな人物を招いて、彼らと語らえばいい。

そうして始まったのが、ここ人生図書館の由来である。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 1,000

サポート代は、わたしの子供たちの育児費用等に使われます。