久々のNHKホールで思ったこと    ~女性活躍の時代~

昨日6/14(金)夜に、NHK交響楽団の定期公演に行きました。NHKホールはコロナ時期に丁度耐震改修していました。私は大阪に単身赴任していましたので、改修後もなかなか行けず、実に5年ぶりに行きました。


NHKホール玄関

私とNHKホール

NHKホールは、たくさん人が入ります
 オーケストラを聴き始めてから早くも42年(なんと長い!)。別に音楽的な才能があるわけでもなく、絶対音感もありません(泣)。ただ吹奏楽と合唱をやっていたこともあり聴き続けました。なぜ聴き続けるのか、というと「音のシャワーと音色の魅力」「時折出会う『神がここに降りてきたのではないか!!』という金縛りにあったような感動」が忘れられず、聴き続けているのであります。
 ※注記:吹奏楽をやっていたのは、運動神経ゼロ、だからです。

 NHKホールは、「紅白歌合戦」や昔は「レッツゴーヤング」(古い!!)をやっていた、いわばNHKの巨大スタジオのようなところです。ここで月に4公演、NHK交響楽団の定期公演を行っています。
 収容人数は3,600名。例えばポピュラーの聖地「中野サンプラザ」(昨年閉館)は2,200名収容でしたので、いかに大きいかが判ります。この大きさですので、NHKホールでもポピュラー系のコンサートはPAを使います。ここのPAはかなりの優れものだそうです。しかしNHK交響楽団の公演は、PAは使いません(と言っています)。クラシックのコンサートは、そういうものだからです(ただしオペラはPA使用の場合あり)。クラシックファンは清く正しい?のです。でも行ってみればわかりますが、来ている「おっさん」は美しくはありません。

たくさん人が入る、ということは。。NHKホールの音響
 たくさん人が入る、ということは、ホールは大きく音はなかなかホールの隅々まで届かない、ということになります。また観客は服を着ていて毛が生えているので、いわば絨毯を敷き詰めている状態に近く、満席に近いほど響きは失われます。
 舞台も空間も大きく観客席も横に広がっている(扇状型)NHKホールは、クラシックファンの間では評判が必ずしも良くありません。
東京周辺にはサントリーホール、すみだトリフォニーホール、みなとみらいホール、ミューザ川崎、芸術劇場(池袋)等々響きが良い約2,000人は入るホールが多数あり、NHKホールより音響が良いからです。(但しこれは聴衆側の話であり、演奏側はまた違うようです)
 ではなぜNHKホールにクラシックファンは行くのか?それはNHK交響楽団(N響)が聴けるからだと思います。

なんでNHKホールに愛着があるか


 N響は日本で一番歴史が古く財政的に安定し一番優秀なオーケストラ、と言われています。ただどこのオケが一番良いかはその人の感性ですので何とも言えません。言えるのは、とにかくどのオーケストラも、「すごいテクニックと音楽的才能を持ちかつ努力をしているメンバー」が、「とてつもなく才能があり努力をしている指揮者」の下で演奏している、ということです。
 レベル的にいえば、独断ですが、N響は世界でも相当な高いレベルと思います。N響以外の東京や関西の、上位のレベルのオーケストラも実力はN響とほぼ拮抗しているのではないか、と思います。海外のオーケストラの日本公演に高いお金を払っていくなら、N響や他国内のオケにいくほうが絶対にお得、です。

 なんでNHKホールにお世話になったのか
 私は高校卒業時の18歳のときはじめてNHKホールでN響を聴いて、以来
最近の5年のブランクを除き、濃淡はあれ聴き続けてきました(年間5~10回位)(もちろんファンの中には更にすごい猛者がゴロゴロいます)
 まさにここで耳を肥やし(肥えたかは別!)、時折感動を味わいました。
正直昔でいえば女性と行くなら、”六本木!”のサントリーホールのような華やかなところがいいのでしょうが、ここに愛着があります。
 ではなぜNHKホールにそんなに昔から来ていたのか?
それは「圧倒的に安い値段で質の高い演奏が聴けたから」です。

学生や猛烈系サラリーマンに優しかった「3階E席」
 
コロナ後に料金体系が変わりましたが、N響のNHKホールの公演は、3階席の奥半分はE席、という区切りで、「自由席」でした。
当時料金は1,500円!!しかも座席数が多いので満席にはよほどの事が無い限りなりませんので、当日券で入れました。
 これは”貧乏学生や若いサラリーマンには懐に優しく、とてもありがたい話でした。また ”猛烈会社員” は超残業や休日出勤がいつあるか判らない(というよりもいつもある)ので、「買ったチケットを流す(棒に振る)事が無く時間ができればふらっと行ける」N響のE席が、大変ありがたかったのです。
 下記がNHKホール3階の「E席」(青の部分)。3階の奥半分がE席です。

  これが3階席から見た風景です(今回の開演前に撮りました) 

 NHKホールにオーケストラファンとして育ててもらった
 御覧のとおり、ステージははるか遠くに見えます。双眼鏡がないと各演奏者の様子は見れません。
 また横に広がったホールのため、音が壁にぶつかって輻射的に広がる
「間接音」が少ない傾向にあります。音響関係の本を読むと、間接音と直接音とが交じることでよい具合に聴こえる、というものなのだそうです。  このホールはどうしても直接音が主になるので、3階まで届く音には限りがあります。

 このようなことから、NHKホールはどうしても3階席の奥のほうで聴くと遠いステージで行われている演奏を聴く、という感覚になります。   (実は、3階席E席でも聞こえ方にかなり差があり良いところもある)

 しかしこのような点があっても¥1500円でN響の演奏が「飛び込み」で聴けるわけですから、贅沢はいえません。何回通ったことか。。。     特にCDでは忍耐力がとても持たない長い曲、演奏会で聴かなければ絶対聴かないちょっとマイナーなマニア的な曲、初めて聴く曲やめったにやらない大曲、などは、熱心に聴いたものです。

 実はNHKホールに初めて行ったのは、現役の大学受験に全部落ちて(織り込み済)、浪人生活を控えた春でした。
 Youtubeでその時の演奏がUPされているのを見つけました。(よいのだろうか?)。1984年3月23日の公演、ブラームスの第一交響曲です。3階席でも感じられた、ものすごい音圧と分厚い冒頭の響き、観客の熱狂、を今でも 昨日のことのように鮮明に覚えています。
日本で最もその実力を評価され愛され崇拝された、マタチッチの日本最後の公演でした。

Brahms: Symphony No.1 /Lovro von Matačić ブラームス:交響曲 第1番 マタチッチ NHK交響楽団 (youtube.com)

今回行った演奏会(沖澤のどか氏/N響)

 今回久々になぜNHKホールに行ったかというと、「沖澤のどか」氏が指揮をするからです。女性で青森県出身の35歳(若い!!)。ベルリン在住で、京都市のオーケストラの常任指揮者(そのオケの多くの演奏会を指揮し運営にも携わる役目)に最近就き、評判でしたので昨年京都で2回聴きました。 
 京都のオーケストラも優秀です。その実力が開花した素晴らしい演奏・色彩感、さわやかなステージマナー、楽員も演奏しながら喜んでいるのが非常によくわかりました。まさにこれからのこの分野の第一人者になる方と思います。
 

 演目は「イベール:寄港地」「ラベル:左手のためのピアノ協奏曲」
「ドビュッシー:夜想曲」でした。
 これはなかなか意欲的なプログラムと思います。なぜなら「最後は派手に終わる」演目ではないからです。一切ごまかしが効きません。

さて、今回の席は?→いつかはクラウン(古い!)ならぬ「いつかは1階」

 さて今回はどの席で聴いたか、というと、1階席の前の方でした。
いわゆるS席です。
 トヨタのCMで「いつかはクラウン」というのがむかーしありました。 私はNHKホールで「いつかは1階」と、3階から1階席をじとーっと見ていたものです。ようやくNHKホールの1階で聴けるうようになったとは、 「なかなか俺もよかったんじゃね、」と思いました(笑)。
 
 問題のNHKホールの音響ですが、今回満足でした。耐震改修で少し何か手を加えたかは判りませんが(見た目は改修前と同じに見えます)。    
 音は直接音主体で、サントリーホールやミューザ川崎などのような「色気」「残響の豊かさ」は薄い感じはしますが、少しデッド(残響が短い)な音も良いな、となつかしさも含めて、思いました。
 今度は2階席、3階席でも近々聴いてみようと思います。

 演奏はとてもよかったです、さわやかな印象もGood
 演奏は、全体的に色彩感があふれた非常によい演奏でした。

 まずN響のメンバーを見ると5年でかなり入れ替わったように見えました。またコンサートマスターがやたらと「イケメン」でびっくりしました。
 
 「イベール:寄港地」は、色彩感があふれる鮮やかな演奏でした。
「ラベル 左手のためのピアノ協奏曲」は写真はイケメン(上の写真の右側)だが現物は毛むくじゃらの大男!のピアニストが、時折腰を浮かせながら(左手のみ)弾く熱演でした。途中で少しオケとの合わせの難所で緊張!の場面もありました。
 「ドビュッシー 夜想曲」は3つの楽章に分かれるのですが、2つ目の「祭り」で指揮者がかなりの高速テンポをとり、これに管楽器が見事に応えていました、さすが!!です。
最後の女声合唱の声が、ホールに静かに消え入り、終わりました。
 

夜想曲の終演後の拍手(最近N響はスマホで終演後は撮影可)

 N響の定期公演を日本の若手が指揮することは稀で、いわば日本の若手指揮者の昇格試験、のような雰囲気があります。今回沖澤氏は初めてのN響定期公演の指揮を執ったということでしたが、沖澤氏が緊張しているのが見ていて判りました。
 演奏後には写真の通り、オーケストラからも拍手を受けていました。
かなり”うるさ方?”と思われるN響の観客(特に1階席観客)も盛大な拍手を送っていました。
”沖澤氏のN響定期公演デビューは成功”、だったのではないでしょうか。
この指揮者は今後目が離せません。

女性の時代

 沖澤氏の指揮を京都で観て今回東京でも観て、思ったことがあります。
 最近女性が特に活躍し、女性が男性以上にのびのびと各界で活躍しているように思います。
 今回の指揮(京都の時もそう思いました)でも、女性特有の柔らかさや マナー、毅然とした指示の際でも受け入れられやすい所作、などがとても印象的でした。私のような初老!の男性も、学ぶべきところが多いように思います。
 私が半年前に入ったコミュニティも、女性が多くおられます。女性の方の人への接し方や色々な説明の内容、言うときは言うけど言い方が達人的である点、などを感じ、とても勉強になります。分野が違っても何か通じるところがあります。
 どちらかというと(かなり)上意下達的な文化の中でどっぷり過ごしてきた私も(未熟であった。。。反省)、これからの人生、まだまだいろいろ学ぶべきこと、成長できることが多い!!と感じています。

日本のオーケストラは今が聴き時

 9月からクラシック音楽はハイシーズンとなります(夏は暑いので)。
最近の日本のオーケストラは、どの楽団も世界的にみても非常に高いレベルにあると思います。東京響、都響、読売日響、東フィル、新日フィル、京都市響。。。また「テクニックでなく心」なのでアマチュアのオーケストラで超感動!することもしばしばあります。

 時折海外オーケストラのライブをFMなどで聴きますが、正直日本のオケのほうが良いのでは、と感じます。海外オケの公演に高いお金を払うなら、国内のオーケストラかな、と思っています。今年はすべての関東のオケを聴いてみようか、と考えています。

 この秋は、知っている曲のコンサートに、足を運んでいるのも一興、かと思います。


 


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