106【良い質問とは?】編集者が語る・自分が得するための最高の質問のつくり方
世の中には、「すごい人」がいる。
先駆者、大先輩、大家。
偉い人。大師匠。
生ける伝説。レジェンド。
有無を言わせない、圧倒的な実績。
講演をすれば人がたくさん入るような、
超がつくほど人気の、実績のある人が、
世の中にはいる。
ある時たまたま、何かのめぐり合わせで、
「その人に会って」「話を聞ける」機会が
訪れることがある。
手垢のついた言い方なのであまりこういう言い方はしたくないが、
事実としてその日は、
あなたの人生が変わるかもしれない、重要な日になる。
その人の言葉が、存在が、見えている世界が、
自分の根底の価値観をひっくり返す。
そういうことが、起きる。
たった1日、1時間で、5分で、そこから先の何十年が変わるかもしれない。
それが、「すごい人」の持つ力だ。
一般的に、その「すごい人」と会える機会は、人生に一度きりだ。二度目はまず、ないと思っていたほうがいい。
だから、その一回を、絶対に逃してはいけない。
あなたはそのシュートを、スマッシュを、スパイクを、ストレートを、一打を、
絶対に、確実に決めないといけない。
●必要なのは、「質問」の力。
では、そのチャンスは、
一体いつ、訪れるのだろう。
それは1ヶ月後かもしれないし、
1年後、3年後かもしれない。
もしかすると、今日や明日急に、ということだってありえる。
だから僕は、来るべきその一瞬のために、
貴重な自分の時間を使って、全力で、
「ある力」を日々磨いている。
それが、「質問」の力だ。
僕は編集者として、「すごい人」に会う仕事をしている。
「すごい人」と話をして、そのすごさを本にまとめて出版して、
世の中に届ける仕事だ。
だから僕は、
「すごい人」への質問を、毎日のように考えている。
毎日毎日、鍛錬を積んで、練習している。
これは、僕が調べ、考え、実践で何度も成功と失敗を繰り返して身につけた、
現時点で最高の【質問の技術】である。
「すごい人」と会うときはもちろん、仕事でも、会社の飲み会でも、日常生活でも、デートでも、合コンでも使える。ぜひ、最後まで読んでみて欲しい。
●①「質問」なんて、いらないんじゃないの?
もし、僕が、
現世で誰かに、このように言われたとしよう。
ほう! そうかそうか。
これを聞いた僕は、
きっと現世では、この反応を受け取った後、
その人の顔を見て、笑顔でこう言うだろう。
別に、好きにしてくれて構わない。
だが、この記事を読もうと思ってくれている人は、
たぶん、そんなことを思っていないだろう。
もし思っていたとしても、少なくとも、その先を知りたがってくれているはずだ。
だからもしあなたが、以下のように訊いてくれるなら、
僕は正直に、自分の考えていることを伝えたい。
↓
●自動で出てくる情報の質は、自動で出てくる程度でしかない。
質問の効果。
それはつまり、
だ。
質問という刺激を与えることで、
「すごい人」から、何かが出てくる。
つっつく場所・方法によって、アウトプットが変わるのだ。
世の中には「聞かれたら答える」くらいの情報がたくさん存在する。
でもそれは、別にわざわざ言わない。
聞かれたら言うくらいの、ちょっとコアな、ちょっと細かい、ちょっと内緒にしておきたい話だ。
そもそも多くのすごい人は、わざわざ自分語りをしない。
でも、すごい人の自分語りは本来、社会的な効用が大きいことばかりだ。眠らせておくのはもったいない。損失と言ってもいい。
だから、自ら語らせずに質問で引き出そう。
「せっかく聞いてもらったから答えますけど…」というきっかけを、すごい人に与える作用もある。
逆に、
ボーッとしていても自動で出てくる情報は、自動で出てくるなりの、軽さや、平坦さ、均質さがあるといえる。
普通の人には言わないことを、しゃべってもらうには、
それくらいのアクションが必要だ。
●質問すると、その人だけが得をする。
ちなみに、この「情報を自在に引き出せる」の効果はバカにできない。
当たり前のようだが、
自分がほしいものだけを、受け取ることができるのだ。
みんなに合わせている話から、
「自分のためだけにカスタマイズされた話」を手に入れられる。
つまり、端的に言ってしまえば、
「質問すると、質問した人が得をする」のだ。
●「すごい人」は、別にあなたと話さなくてもいい。
そもそもの前提として、
「すごい人」は、別に、あなたのために話をする必要がない。
なぜか。
これは、「すごい人」側の立場に立ってみるとよくわかる。
まず何より、面倒だ。
もちろん話しても別に構わないのだが、話したとしても、その「すごい人」が何か得するわけではない。しかも、相手のアタマのレベルがわからないから、理解してもらえるかもわからない。
それに、私的だったり、秘密だったり、ナイーブな内容、細かい部分、わざわざ公共の場ではわざわざ話さない。ディープな内容だと、全員が理解できるかもわからない。
1から10まで、なんでもかんでも話してくれる、超サービス精神旺盛な人もまれにいるが、それはレアケース。
1回会って、もう一生会わない人のために、
普通はそんなにしゃべらない。
すごい人は、別にあなたと話す理由がない。
だから、あなたが「すごい人」の話を引き出さないといけない。
時間の価値も、立場も、天地の差があるのだ。
「すごい人」にとって、あなたの価値は、ほぼ0だ。
聞く側は、ここからスタートしてほしい。
●良い質問をする技術。
さて、前置きが長くなってしまったが、
ここからは、以下の質問に答えていく形で、話を進めていきたい。
それぞれ、先に簡単に答えておこう。
●②「良い質問が思いつかない/作れないんだけど、どうしたらいいですか?」
→普通に知識不足。調べなさい。
なぜ、質問は難しいのか。
それは、言ってしまえば、
今のあなたに「質問を作れるほどのアタマ・知識がない」からだ。
ではここでたとえ話。
同じように、
いくつか例を出してみたい。
疲れたのでこれくらいにするが、
ぜひ、気になる相手だけにでも、質問を作ってみて欲しい。
何が言いたいのか。
要は、
「知識がないと質問は絶対に思いつかない」
ということだ。
このように、質問が出ない原因の大半は、
「知識がない」ことだ。
興味があっても、知らないと質問は生まれない。
逆に言えば、興味がなくても、質問は「知識の量」さえあれば作ることができる。
だから、「すごい人」と会う前には、
とにかくその人の全てを調べておくことをおすすめする。
●③「うまい質問をするコツはなんですか?」
→事前情報を、適切な範囲で開示すること。
一生懸命つくった質問でも、空回りしてしまうことがある。
中でもありがちなのは、
である。
超、もったいない。
この原因は何か。
それは、「ピント調整の甘さ」である。
質問者の欲しい情報と、「すごい人」が下りてきてくれた回答の視座が合っていないのだ。
このとき質問者側は、得てして、
「大した回答をもらえなかった」という感想を持ちやすい。
ただ、これは、あまりに傲慢な態度だ。
「すごい人」に責任を押し付けてはいけない。
断じて違う。
それは、質問者側の、あなたのコントロールが甘いからなのだ。
そこで有用なのが、
【事前情報の適切な開示】である。
開示すべき情報は2つ。
である。
たとえば、質問の仕方をこのように変えてみてほしい。
↓
いかがだろうか。
こちらの知識・立場を示すだけで、質問はここまで、精度が上がる。
適切な範囲の自己開示は、相手に【話すときの照準】を定めてもらう効果がある。
前の質問「お客様対応のコツを〜」であれば、正直、何を回答しても質問に答えたことになる。だから、「すごい人」は手を抜いて、適当にぺらぺら喋るだろう。
でも、変えた後の質問であれば、「すごい人」は、
と思ってくれるはずだ。
真面目にやらないと、質問に答えたことにならなくなってしまう。
それは普通にありえないので、ちゃんとレベルに沿った回答をしてくれるだろう。
「すごい人」は、大量の情報を持っている。
だから、質問の仕方で、その情報の照準を、適切な箇所に絞ってもらうのだ。
ちなみに、これを実践すると、
質問が長くなりやすいことに留意したい。
そのため、要点は必ず冒頭の一文で伝えよう。
そうしないと、ただ「長い質問だな…」と思われてジ・エンドになるので、気をつける必要がある。
●④「編集者ひつじさんが、ふだんしている質問はなんですか?」
→A:To BeよりTo Do。B:仮説ストラックアウト。
ここからは、わりと独学の技術ゾーンになる。
これから変わっていく可能性もあるが、今のところわりといいので、紹介しておく。
(なお、この他にもたくさん、テクはある)
A:To BeよりTo Do
【その人が考えていることではなく、「実際にやっていること」を聞く】
「すごい人」は、大まかに、
の2種類に分かれる。
雑な(本当に粗雑な)分類だが、「すごい人」の大半は、
このどちらか、もしくは両方の性質を持っている。
一般的に、「すごい人」の【性格・考え方】=ToBeは、
理解できて、参考にすることができたとしても、
いざ自分がやってみようとすると、真似・実践できないことが多い。
それは、その人がすごかったからできたこと。
普通の人が真似するには、再現性が低すぎることがある。
一方、「すごい人」が【やっていること】=ToDoは、真似ができる。
だから、「実際に何をやっているのか」を聞けば、
再現性の高い何かを手にできる可能性が高い。
B:仮説ストラックアウト。
【「自分だったらこうするんですが、あなたはどうしてそうしたんですか?」と聞く】
これは、その人の「考え方」「ものの見方」を聞くための、絶好の方法である。
すごい人の凄さは往々にして、
「Aという事象を観察・体験したときの思考プロセス」
に現れる。
この質問法は、この性質を応用して、
「すごい人」のすごさをあぶり出す、いわば対照実験的な手法である。
日常シーンで言えば、以下のような例が挙げられる。
この例のように、「同じものを見ている」「経験している」ときには、
考え方の違いが浮き彫りになりやすい。
価値観・ものの見方・考え方の違いがより鮮明に現れるのだ。
この現象を、質問に活かそう。
つまり、何をすればいいか。
答えはシンプル。
「すごい人」の思考と、実際の行動をなぞってみよう。
「すごい人」がやった「すごいこと」を、
一回、自分で憑依して、やってみるのだ。
すると、違和感が出てくるはずだ。
など。
(出てこないなら、憑依が甘い。)
それを、そのまま伝えるだけだ。
これは、かなり効く。
自分と「すごい人」のどこが違うのかを、
ダイレクトに受け止めることができる。
一度でもやってみれば、その効果がわかるはずだ。
ぜひ、試してみて欲しい。
●⑤「質問するときに、心がけていることはありますか?」
→相手を、いい感じに、悩ませること。
僕が質問するときに心がけていることがある。
それは、質問相手に「即答されない」質問をすることだ。
理想は、一瞬、もしくは数秒、考えてもらう時間があるくらい。
このあたりに照準を定めている。
これには少しワケがある。
一般的に「即答されてしまう質問」は、
あまり良い質問とは言えない。
なぜなら、その質問は、
・すでに答えたことがあった
もしくは
・過去の引き出しを探り当てた
パターンだったからと予想できるからだ。
でも、即答できないで考え込む質問の場合は、
その「すごい人」が、これまでまだ経験していない質問だった可能性が高い。
そうすると、何が起きるか。
きっとあなたは、こう言われるだろう。
いま、奇跡が起きたのがわかっただろうか。
あなたがした「自分が得をするための質問」によって、
あなたが「すごい人」から、お礼を言われたのだ。
僕はこれを、【質問の理想形】だと考えている。
質問する側とされる側という一方通行の関係が、
両方得をした、Win-Winの関係に変わる。
与える⇔与えられるだけの関係から、
Give and Takeの関係に変化したのだ。
このとき、質問の効用は双方にとって最大化する。
僕はいつも、ここを目指している。
「いい質問をする」技術を磨くことは、徹底したワガママ追求であると同時に、
実は、他者の役にも立つ、犠牲者のないコミュニケーションなのだ。
これは、いわば、エコ・フレンドリーな営みとも言える。
もしかすると、
一度きりしか会えないはずだった「すごい人」との、
「二度目」のチャンスも、出てくるかもしれない。
●「この記事に、質問はありますか?」
以上だ。いかがだっただろうか。
勢いで書いたにしては8000文字に迫る勢いで、僕自身、結構驚いている。
さてここで、あなたにお伝えしたいことがある。
僕はこの記事を、【自分でつくった質問】に沿って、構成した。
どういうことか。
勘のいい読者の方なら気づいているかもしれないが、つまり、この記事は、
僕の質問によってつつかれた刺激に沿って、作られた記事なのだ。
したがって、この記事は、
「僕が書きたい」「書いても良い」と判断したことしか載せていない、「いつもの話」オンパレードである。
つまり、「自動で出てくる程度の質」の情報しか、僕は載せていないのだ。
僕は毎日、これ以上のことを考えて、やってみて、
失敗と成功を繰り返している。
もし少しでも興味があれば、
ぜひ僕に直接、質問をしてきてほしい。
それが、あなたにも、僕にも、社会にも優しいエコ・フレンドリーなシステムの醸成につながる。
僕はそう信じて、今日も問いをつくっている。
■参考書籍
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?