誓約書の点検怠る?PWJ監視甘い愛護センター 広島県開示文書から

その4、犬の譲渡申請及び愛護誓約書

 少し、脇道に話題がそれます。しかし、保護犬の様子をきちんとモニターするためにはとても大切なことのように思えるのです。

広島県動物愛護センターで捨て犬を引き取るときは、個人、団体を問わず、犬の譲渡申請及び愛護誓約書に署名することになっています。

 誓約書には、狂犬病予防法に関連して2つの重要なこと、つまり犬の登録を受け、鑑札を犬につけること、そして、狂犬病予防注射を受けさせ、注射済票を犬につけることも盛り込まれています。
 
 そして、いつ登録し、注射したか、動物愛護センターに連絡することになっていて、誓約書には、センター側が登録日、注射日を書き込む欄まで用意されているのです。

 この申請、誓約の手続きはNPO法人として一度に数十頭規模で引き取ることも多いピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の場合も例外ではありません。

 例えば、2017年12月30日午前2時過ぎの医療・がん対策部長メールでも紹介したように、PWJは12月28日に合計35頭の犬を県動物愛護センターから引き取りました。その際に写真のような文書に署名をして、約束を守ることを誓います。

 しかし、開示された書類をよく見ると、申請者の住所が神石高原町の「上豊松」だったり、同町の「近田」だったり、様々です。中には実在しない住所だって書き込まれたものもあります。大西代表の名前も書いたり、書かなかったり。飼育場所を空欄としているケースもたくさんあって、命ある動物を受け渡すにあたって取り交わす文書としてはとてもいい加減な印象を受けます。

また、県愛護センターがPWJから連絡を受けて書き込むべき、登録日や注射日がすべて空欄になっていることに気が付きます。事後的な報告を受けていないのでしょうか?
 
 この点は非常に重要なので、電話で県動物愛護センターに問い合わせると、団体の場合は少ない頭数を想定して用意した記入欄には書き込めないので、別途「譲渡報告書」を提出してもらっているということです。

 そうならば、譲渡申請書類も団体向けに別の書式を用意すればよいと思うのですが、個人の飼い主に直接譲渡することを想定した書式を使い続けているのです。つぎはぎ式で最後には何のための書類かわからなくなってしまうお役所仕事の典型例かもしれません。

 譲渡報告書には、犬の特徴や性別、新しい飼い主となった人の住所、氏名や電話番号も記載して動物愛護センターに送ってもらうことになっています。譲渡の都度、一頭ごとにまめに連絡する団体もあれば、2~3カ月分まとめて報告してくる団体もあるようです。愛護センターの課長さんの話では、PWJは後者のようです。

 神石高原町への犬の死亡報告の提出もそうですが、30日以内という法定の報告期限を守れないケースが2019年度に入ってからも後を絶ちません。個人向けの再譲渡や事務処理の能力が整わないまま、収容頭数だけが膨らんでしまったのでしょう。

 PWJが書類の作成もままならないくらい能力以上の背伸びをして活動しているとしても、広島県動物愛護センターは提出されるべき報告を読むだけで、狂犬病予防法に関連した手続きを怠っていることを把握できていたはずです。少なくとも第三者に噂が広まる前に気づく立場にあるのです。

狂犬病予防法違反に関しては、愛護センターが業務をなまけたか、PWJの法令違反に気がついていて見ぬふりをしたか、いずれかの可能性が大きいと言わざるを得ません。 そして神石高原町への死亡犬報告状況を見る限り、いまもそうした状態が続いている可能性があるのです。

 県動物愛護センターの犬・猫譲渡要領によると、団体の場合はたくさんの犬を同時に引き取る際、それぞれの個体情報を電子データにより提出することもできることになっているのですが、PWJの場合は別表に手書きして提出しているようです。間違いが起きる元はこんなところにもあるのかもしれません。

 犬の死亡に関しても県動物愛護センターは速やかに届け出ることを求めています。しかし、それは譲渡報告書とは別の収容状況報告という形で受け取ることになっていて、広島市や福山市など独自に保健所を持つ自治体や個人からPWJが引き取った犬も含まれているため、最終的には立ち入り調査の際に台帳を調べることで確認するしか方法がないようです。

 譲渡申請と同時に提出する誓約書の最後の12項目はこんな内容です。

12 その他、動物愛護センターの指示に従います

 本来、県動物愛護センターは全権を持っています。コンプライアンスを後回しにする団体には、犬を譲渡しない、という選択をすることもできるのです。

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