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教えて大西さん、ピースワンコのこと⑫引き取り頭数に上限~2020年日本の犬の殺処分ゼロの目標は消滅?

1、保護頭数を増やさない

 2019年4月15日に開催されたNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)通常総会資料が手元にあります。2019年度(2019年2月~2020年1月)事業計画のうち保護犬事業(ピースワンコ)部門をみると、次のように書かれていました。

 「広島県の犬の殺処分ゼロの維持を目指しつつ、月々の自治体からの犬の引き取り頭数に上限を設ける」(筆者注①)

 「2018年度に前年の2倍以上に伸びた譲渡をさらに促進し、年間を通してシェルターでの保護頭数が増えないようにする」(②)

 「狂犬病予防注射が遅れた問題では、捜査対応に万全を期すとともに、新たな問題を生じさせることがないよう、法令順守をさらに徹底する」(③)

 「獣医師地の体制を拡充し、狂犬病予防注射やワクチン接種はもとより、避妊・去勢手術なども自前で行うことで、医療費の増大に歯止めをかける」(④)

 「頭数を一定以下に保つことで、犬にとってより望ましい環境を維持し、飼育スタッフの心身の健康にも配慮する」(⑤)

 「また、廃棄物の処理や排水など、周辺環境への影響も考えたシェルター運営に努め、地域住民とのトラブルが起きないようにする」(⑥)

 「災害救助犬、セラピー犬、里守り犬などの育成に引き続き取り組み、殺処分をなくすための世論喚起や動物福祉に関する啓発活動にも力を入れる」(⑦)

 以上の活動方針は、会員ら関係者以外には非公表となっているのか、ホームページ等で探しても見あたりません。

2、結果報告は不十分

 2019年度に実際どのように活動したかを記した事業報告書にはどう書かれているでしょう。こちらは、PWJがまだ公表していませんが、所轄官庁広島県のNPOサイトで閲覧・ダウンロードが可能です。
 
 「2016年4月から続く広島県内での『殺処分ゼロ』が2019年度末で1400日を超えた」(筆者注①の「引き取り上限」に言及せず)

 「また、今年度の譲渡・返還数は648頭になり、これまでの累計で2000頭を超えた」(筆者注②のシェルターでの保護頭数に言及せず)

 「県や他の保護団体との協力を強め、収容頭数の増加を最小限にとどめる一方、野犬のトレーニングを強化し、譲渡数を伸ばすことに努めた」(筆者注②、⑤、⑦に対応するとみられるも具体的な説明なし)

 「引き続き施設やデータ管理の改善、発注の効率化など、運営体制の強化に取り組んだ」(該当なし)

 同じ2019年度の事業なのですが、計画で説明する話題と実績で取り上げる話題が異なるので、計画の達成度をつかむことができません。

 大西さん、NPOにとっては寄付やボランティア作業などで活動を支えてくれる市民の支持が命です。もっとわかりやすく、改善してみてはどうでしょう?

3、全頭引き取りは断念

 まず①について。広島県食品生活衛生課による説明では、PWJ/ピースワンコは、殺処分対象を全頭引き取るという方針を2019年1月から「適正飼養」ができる範囲内で犬を引き取るという方針に変更していました。2019年度は最初の事業年度になるわけで、事業計画にはそうした方針転換を裏付けるように「引き取り頭数に上限」とか「シェルターでの保護頭数が増えないように」という文言が出てきます。

 PWJ/ピースワンコは主にインターネット広告で「ふるさと納税」やサポーター会員を勧誘していますが、引き取り数に上限を設けている等の説明はありません。しかし、かれらは殺処分対象になった犬を全頭引き取り、救う」という2016年度からの方針は維持できず、事実上終了しているのです。

4、引き取りは1回15頭まで

 情報公開請求で開示された広島県動物愛護センターへの団体・個人の譲渡申請書によると、ピースワンコからの申請は2019年度(センターの事業年度は4月から翌年3月)57件ありますが、一度に引き取る頭数は最高15頭でした。たいていの場合は13-15頭となっていて、15頭が1回あたりの上限だとみられます。

 申請ベースでの引き取り頭数を集計すると636頭となり、譲渡・返還数(648頭)とほぼ同じペースです。②でいうピースワンコのシェルターでの保護頭数が増えないよう譲渡できる範囲内に引き取りの上限を設定していることがわかります。

5、安楽死拡大を阻止せず

 広島県はピースワンコの方針転換と連動するかのように2020年1月末に動物愛護センターに収容されている犬の選別を強化し、飼養適性が低い犬をピースワンコなど団体や個人に引き渡すことを中止し、安楽死させる方針を決めました。

その結果、現実に殺処分される犬の数は前の年度の3倍に増えたのですが、ピースワンコは「殺処分ゼロ」が継続していると説明しています。

 ピースワンコが言う「殺処分」とは、多数の犬をガス室に追い込んで一斉に処分する措置のことで、安楽死なら「殺処分」と表現しないようです。

 いままで引き取ってきたようなワンコたちが広島県に譲渡不適と認定されて、殺処分されていることをピースワンコは知っているのですが、それに抗議する様子もなく、ひたすら沈黙を保っています。なぜでしょうね?

 2016年度に広島県の殺処分ゼロを実現し、東京オリンピックが開かれる2020年には日本の犬の殺処分をゼロにする。それがPWJ/ピースワンコが掲げた目標だったはずです。2020年を迎えて、地元広島で殺処分が増えているのは皮肉なことです。

 ピースワンコのシェルターへの収容頭数は2800-2900頭程度で推移しているようですが、これをどのくらいのスタッフや施設で世話をしているのか、あいまいです。

6、スタッフ数90人?100人超?

 ピースワンコのホームページでは、「ワンコのお世話は、ドッグトレーナーや獣看護師、または獣医師など有給スタッフ約90人が担当(2019年3月時点)」と説明されていますが、「雇用や委託等の契約関係にあるスタッフが計100人以上携わっています」(2018年12月5日「お知らせ」)と委託業者の数を含めることもあり、説明の仕方は一定しません。

 また、スタッフの内訳をフルタイム、パートタイムの別や本部や複数あるシェルターごとに示すこともないので、毎日8時間以上働いている人数に換算すると何人いるのかわかりません。

 人を警戒する野犬や病気の犬を多数引き取っていることを考えると、この人数では十分に世話をしきれないのではないかと思えます。動物の扱い方を知るプロがどのくらいいるかも気になるところです。


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