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上限「15頭」が一人歩きする環境省犬猫数値規制②一貫せぬ説明、自治体により「引退犬猫」報告の扱いはバラバラ!


1、問題だらけの「監視対象外」説明

 
 犬猫殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟(超党派、尾辻秀久会長)は、従業員1人あたりの飼養頭数制限の対象から繁殖から引退した犬や猫の数を除外したのでしょう?

事務局から寄せられた回答は、以前にも紹介した通り、環境省が定めた動物販売業者等定期報告届出書の書式では、第1種動物取扱業者の商品在庫から「引退犬」は除かれていて、そもそも監視や指導の対象に入っていないからという理由でした。

 しかし、この論法には大きな問題があります。

2、同じ施設内なら対象にすべき

 一つ目は、2021年6月に導入する数値規制の対象は販売業者のみに限定されていない点です。環境省は非営利の譲渡団体など第2種動物取扱業者にも適用する予定です。繁殖用や販売用に限らず、第2種の非営利の譲渡団体も頭数の制限を受けるのですから、施設にいる犬の頭数自体を問うのが自然です。

 つまり、繁殖犬、引退犬、保護犬などの分類は本来、無用のはずです。そんな分類をし始めれば、大型犬、小型犬等もっと別の考慮をしなくてよいのかという議論も当然のことながら起きてきます。公益社団法人日本動物福祉協会(東京・品川、黒川光隆理事長)は環境省に対し、7月に頭数制限案が公表されて以降、繰り返し「同じ施設内」にいる犬猫の頭数を制限するよう申し入れていました。

 同協会が8月28日に公表した資料によると、「頭数制限には、繁殖及び販売以外の犬猫も考慮する必要がある」という8月6日付の要望に対し、環境省は「指摘された問題は承知しているが、そのための良い実践的な案がなく、そこまで明記することは難しいのではないか」と回答していました。

3、「違法処分」の予防が目的?

 環境省の説明の仕方は一定しません。

 筆者の問い合わせには「もともと想定していたものを明確化したものであり、省令案を示した段階で除外したということではありません」(11月11日付回答)と説明していました。

 ところが、環境省動物愛護管理室長は10月7日の中央環境審議会動物愛護部会で、次のように説明していたのです。

 「引退したものについては、これは頭数規制に入れるとなれば、飼養施設からはじき出されるということになります。見えないところで飼われてしまうとか、当然違法ですけれども、そこで処分されてしまうというようなことも起こり得るということで、引退した犬・猫については、今回の飼養頭数の基準の中には、算出には含めない」

 動物取扱業者が、急いで犬猫を減らそうと違法な行為に走らないよう考慮したと明言しているわけです。

 それでも環境省は「ペット業界からの要望を受けて引退犬の除外をしたものではありません」(動物愛護管理室)というのですから不思議です。ペット業界や譲渡団体の状況を総合的に勘案して、環境省が独自に判断して、このようなわかりにくいルールを考えたということでしょうか?

4、広島県は「引退犬猫」を備考欄に記載

 二つ目は、そもそも定期報告の仕方は都道府県によってばらつきがあるということです。環境省も統一的な記入方式を自治体に文書で通知していません。
 
 例えば、東京都や愛知県は、繁殖から引退した犬猫を「販売もしくは引き渡しをした」犬猫とみなして営業用の在庫から除くように文書で指導しています。

 しかし、広島県の場合は「年度中に繁殖を引退し,個人で飼育するようになった犬猫の頭数については該当する記入項目がないため備考欄に記載する」(県動物愛護センター指導課)としていました。冒頭の写真の通りです。

 記入方式を業者に任せて、問い合わせがあればその都度対応している自治体も少なくないようです。実際、群馬県のあるブリーダーは、引退犬も年度末に所有する犬猫の数に残したままにして報告をしていました。

5、ズサンな定期報告、業界実態つかめず

 つまり、環境省が第1種動物取扱業者に提出させている定期報告の内容はズサンなのです。報告先も都道府県宛ですから環境省に直ちに届くわけではなく、業界の実態を環境省が十分につかみきれない原因になっているようです。この際、報告を提出する義務のある業者の範囲や目的、頻度を全面的に見直す必要があるでしょう。

 三つめは、そもそも愛護議連の「引退犬除外」の見解を議連のメンバーやアドバイザーが共有していたかどうかはっきりしない点です。事務局長である福島瑞穂参院議員の事務所からは精緻な説明文が届きましたが、これがいつ、誰の手によって作成されたものなのか、いつの会議で確認されたものなのか、事務局もすぐには答えられない状態なのです。(続)

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