広島県動物愛護センター⑥もたれあい?役割分担?広島県がピースワンコ を守る理由

 2018年1月29日付の広島県健康福祉局作成の「論点メモ」に戻ります。

 動物愛護管理業務のこれからの目標として、平成35年度(2023年度)に「犬猫の殺処分が事実上ない状態の安定的継続」、同45年度(2033年度)に「殺処分対象の犬猫がいない状態の実現・継続」を掲げようとしていることはすでに紹介しました。

 動物愛護センターに持ち込まれる犬猫が少なくなり、収容した犬猫については元の飼い主に返還されたり、一般家庭や団体へ譲渡されたりする姿を目指すわけです。

 「平成28年(2016年)8月からは、犬猫の殺処分は事実上なくなっているが、広島県内の犬猫の収容頭数は依然5000頭(97%は野良犬・野良猫)を超え、平成28年度(2016年度)は全国で最多となっており、早急に収容頭数の削減対策を進める必要がある」

 メモにはそう書いてあります。

 数値目標として、県動物愛護センターが収容する犬猫の頭数は別表の通りです。

 2017年9月時点の試算資料とは異なるデータが使われているようですが、2023年度の犬の収容頭数を現状より45%減の860頭、猫は同55%減の400頭とし、合計で49%減の1260頭にする、としています。

 県動物愛護センターの譲渡頭数の現状や増減目標は黒塗りで、明らかにされていませんが、2017年9月の検討メモの段階では、譲渡率が紹介されていて、実績(2016年度)は犬が10%、猫が12%、2023年度目標は犬42%、猫43%と設定されていました。

 重点的に実施する対策として挙がっているのが、市町・住民との協働による野良犬捕獲対策の強化で、現状より年間200頭増やすとしています。猫に関しては地域猫、野良猫TNRによる繁殖抑制を進めます。

 そして、返還譲渡については、NPOとの役割分担を部分的に見直して、「譲渡適正のある犬猫を動物愛護センターで譲渡する」という姿を目指すといいます。

「全頭引き取り団体が譲渡困難な犬猫の訓練等に注力できるようになるため、これまで譲渡できなかった犬猫を譲渡することが可能になり、犬猫の譲渡・終生飼養の安定的なサイクルが継続する」

 譲渡適性のある犬猫を県が移転整備する動物愛護センターで譲渡し、不適な犬猫をNPOが引き取って、訓練でも人と一緒に暮らせるように変わらなければシェルターで終生飼養ということのようです。

 2023年度の直近の目標から2033年度の中期目標の達成まで時系列的に見ると、このようなグラフになるようです。

 広島県の動物愛護政策はこれらNPOを都合よく利用し、依存してもいるのです。

 しかし、そんな都合のよい役割分担が成り立つものなのでしょうか?動物愛護センター移転というハコモノ作りのための論法にも見えます。県にとってかなりムシの良いシナリオですね。

 殺処分対象を全頭引き取っているのは、犬ではNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)であり、猫ではNPO法人犬猫みなしご救援隊です。県の行政文書に繰り返しこの2団体が登場します。

 狂犬病予防法違反や動物愛護管理法違反の容疑で昨年、広島県警の捜査を受けたPWJの場合、問題が生じたのはおもにこの譲渡不適に分類された犬を飼養する現場で起きたものと推定されます。

 広島県は県警による狂犬病予防法違反容疑での書類送検を受けて、PWJへの犬の引き渡しを一時停止しましたが、予防接種や登録の体制が整ったことを確認したとしてすぐに引き渡しを再開しています。

 NPOをあてにするあまり、NPOが行き詰まると、県のシナリオも狂ってしまうのです。

 それ故に、本来なら適度な距離をおくべき動物取扱業者の1つに過ぎないPWJ/ピースワンコと持ちつ持たれつの関係になって、厳しく監督・指導できなくなっているのかもしれません。

 

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