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愛媛の無人島に現代アートセンター、パートナーも知らぬ事業計画を町役場・議会に提出~NPOピースウィンズ・ジャパン

1、無人島の町有地を払い下げ

 認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が愛媛県上島町から無人島の土地2万8千平方メートル余りをおよそ9百万円で払い下げを受けることが正式に決まりました。

 この土地は、宿泊も可能な研修・交流施設だった旧・豊島コミュニティセンターの敷地です。PWJが町役場や議会に提出した計画では、すでに昨年無償で町から譲り受けた旧・豊島コミュニティセンター建物を改修し、「豊島現代アートセンター(仮称)」として利用することが条件になっています。

 現代アートセンターの機能は、ライブラリー、ギャラリー、創作スペースの3つです。

 

 資料をご覧いただければおわかりのように、北九州市にある「現代美術センター・CCA」が所蔵・管理する作品集や書籍、展覧会カタログなどを展示する一方、CCAとの連携により世界の若手アーティストらを招聘し、作品制作のため島に長期滞在できる場とし、作品の販売も仲介する、ということです。

2、北九州市は関知せず

 事業パートナーは、PWJの観光・芸術部門といってもよいNPO瀬戸内アートプラットフォーム(愛媛県上島町、大西健丞理事長)、CCA北九州、上島町の3者の名があがっています。

 展示品提供など基本的な事業の協力者となる北九州市の現代美術センターCCAはいったいどんな組織なのでしょうか?

 ホームページ等の説明によると「非営利の公的学習・研究機関として北九州市の助成により1997年5月に開設」された組織で、任意団体です。さまざまな拠点、アーティスト・研究者との緊密なネットワークを築きながら現代美術の新しい発想・発見を生み出す拠点になっているということです。

 CCAはCenter for Contemporary Artの略で、文字通り「現代アートセンター」という意味です。

 助成金を出している北九州市の文化企画課とCCA北九州の双方に問い合わせたところ、北九州市からは「CCAには年間3800万円の運営事業費を助成している。上島町との事業に市としてお約束したものはありません」という回答でした。

 CCAのディレクターで美術評論もてがけている中村信夫氏からも電話で回答があり、「そんな話になっているとは全然知らなかった」ということです。

3、個人として夢は語り合う

 ただ、「大西氏とは昔からの仲良しで、私もいずれリタイアするときが来るから、豊島のような場所に施設ができるならこれまで個人で集めた所蔵品などを無償で提供してもいいという話は何年か前からしているのは確かです」ということです。

 つまり、中村氏は過去20年余り、北九州市からの助成でコレクションの展示や芸術家・研究者の交流行事などを手がけてきたものの、他にコレクションをいかせる場所があるなら移してもよいと思ってはいるようです。

 しかし、現時点で北九州市を離れることが決まっているわけではなさそうです。PWJ代表理事の大西健丞氏と交わしたのは口約束ということでしょう。

 中村氏は1997年当時、末吉興一市長(当時)の支援を受けてCCA北九州を始めたようですが、末吉氏は2007年に引退しています。

 自治体にありがちなことですが、市長交代の結果、前市長時代に始まった事業として予算等の面で影響を受けたようです。それでも市の協力自体は続いています。愛媛県上島町が土地の払い下げを決めた「CCA豊島」については市役所と話し合ったことはないようです。

 大西氏ともあくまで個人として夢を語り合ったようですから、町から土地を買い取り、今期から「CCA豊島」開設に向けた改修工事が進むところまで来ているとは全くご存じありませんでした。

 もちろん「夢があっていい。実現するといいですね」ともおっしゃるので、中村氏はこれから受けるであろうPWJの大西氏からの事業計画の説明などによっては、協力する気持ちは十分にあるようです。人生の大半を現代アートの研究や収集に取り組んできた専門家としての夢でもあるのでしょう。

4、NPO側のガバナンスに懸念

 筆者が驚くのは、町役場や町議会の全員協議会などに提出した事業計画などの資料について、重要なパートナーであるCCA北九州やそのパトロンである北九州市役所にまったく説明していない点です

 公有地などの払い下げを受けたり、ふるさと納税交付金を受けたりするNPOの仕事の進め方、ガバナンスのあり方として、いかがなものでしょうか?
 
 事業の成否の鍵を握るキーパーソンといっても過言ではない中村氏も知らない間に「CCA豊島」の建設を目的として上島町で町有地払い下げが決まったことで、中村氏が北九州市でCCAを続けるにあたって支障をきたすことにならなければいいと願うばかりです。

 PWJの計画では、旧・豊島コミュニティセンターを現代アートセンターに改修する費用は2億円程度で、企業からの寄付金などをあてるということです。

 しかし、中村氏は2億円で改修できるかどうか懐疑的でした。詳しく事業計画を聞いていないのですから当然と言えば当然ですが、町会議員らにも配布された事業計画に信ぴょう性があるのかどうか疑わしくなってしまいます。

5、自己資金なきパトロン

 PWJや瀬戸内アートプラットフォームが「ふるさと納税」の高額寄付者を招待していた豊島ゲストハウス(ヴィラ風の音)は、昨年2月に投資家・村上世彰氏のグループ会社が買い取っています。

 PWJグループは、保護犬(ピースワンコ)部門以外の事業が赤字で資金力が足りないからです。PWJはパトロン頼みのパトロン、お金のないパトロンなのです。

 瀬戸内アートプラットフォームは昨年、この豊島を「アートの聖地にする」という事業のために「ふるさと納税」を募りましたが、目標200万円に対し112万円しかあつめることができませんでした。

 「ふるさと納税」に期待できないので、企業からの寄付に方向転換です。再び投資家・村上世彰氏に資金援助を依頼するのかもしれませんね。

 篤志家がいるのは結構なこととして、目標額にみたない「ふるさと納税」はいったい何につかったのでしょうね。

 個人の善意が無駄に終わることがないよう、町役場も議会も十分に事業の進捗をチェックして欲しいと思います。


 


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