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岡山県開示文書で読むピースワンコの諸問題④2017年12月26日の謎~岡山県が立ち入り検査したその日、広島県は「電話」指導で済ませていた

1、4カ月で収容能力の限界に

 岡山県動物愛護センターが認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)に抱いた好印象は、短期間で疑念へと変わっていきました。

 第二種動物取扱業届出の現地確認のための立ち入り検査は2017年8月末でした。それからわずか4カ月後の2017年12月26日の立ち入り検査のもようをご紹介しましょう。

 8月末の時点で、合計30頭とされていた収容犬は約50頭に増えていました。収容施設の能力の限界です。全頭が神石高原町で犬の登録をした状態のままでした。狂犬病予防注射も神石高原町で済ませていて注射済票の交付も受けているということでした。

2、狂犬病予防法の遵守を指導

 登録や注射を済ませていても、狂犬病予防法で義務付けられている犬への鑑札や注射済票の装着がなされていませんでした。岡山県動物愛護センターは全頭に鑑札等を装着するよう指導しました。

 譲渡に向けてトレーニングをしても「なかなかうまくいかない」という現実もあり、正式事業開始前から5カ月も西山犬舎にいる犬もいることがわかりました。法律の規定に基づいて、愛護センターは30日以上、高梁市内で飼養する場合は高梁市に現在の鑑札と引き換えに登録変更することも指導しました。

 8月の検査時の説明では、西山に収容する犬は全頭マイクロチップを装着しているということでした。しかし、実際にはマイクロチップは、譲渡する犬にしか挿入しておらず、西山犬舎にいる犬にはほとんど入っていないということも判明しました。

3、犬収容頭数はスタッフ数に見合った数に

 すでに施設の収容能力(50頭)の限界に到達していました。2018年春以降、近隣に犬舎を増設することも計画中とわかりました。

 愛護センター側は、施設や頭数が増えるのであれば、事前に相談するよう申し入れました。西山地区で飼養する犬の頭数は施設の規模や施設を管理するスタッフの数に見合ったものとするようあらかじめ指導しました。

 岡山県動物愛護センターは、スタッフ1人あたり上限30頭を目安に動物取扱業者を指導しています。スタッフが増えないのに犬の収容頭数が増え続けることを危惧したのでしょう。

 現場でのやり取りの中で、PWJが広島県神石高原町のスコラ高原に新設したばかりの犬舎は、1000頭収容可能な施設をスタッフ20人とボランティアで管理していることも判明しました。

 ピースワンコ側からは岡山県動物愛護センターが収容する犬の譲渡がうまくいかない場合は引き取ってもよいという意思表示がなされたようですが、愛護センター側は「岡山県で保護した犬は、個人や団体の登録ボランティアで譲渡できている」として断りました。

4、唐突な電話による口頭指導

 ところで、なぜ、岡山県動物愛護センターは仕事納めも近い12月26日にピースワンコ西山犬舎を訪問したのでしょう?

 実はこの日、ピースワンコにとっては運命が暗転した決定的な日なのです。筆者も何度かnoteで紹介したことがあります。広島県動物愛護センターがこの日、ピースワンコに対して、確認できる範囲では初めて、狂犬病予防法の義務を履行するよう指導したのです。

 ところが広島県の指導はとても唐突で、奇妙なものでした。広島県神石高原町に複数あるピースワンコの犬舎に立ち入り検査したわけでもないのに指導しているのです。

 情報公開された広島県動物愛護センターの監視台帳には「telにて口頭指導」と書かれていました。検査もせずに、しかも電話で指導するということは通常ならありえない対応です。

5、ピースワンコ告発の動き

 今回、岡山県が開示した行政文書の中に、2017年12月27日に県動物愛護センター所長が外部の情報提供者に電話で対応した内容が記録されていて、このナゾが解けました。

 冒頭の写真をご覧ください。そこには、非開示扱い(黒塗り)となっている外部の人からとみられる情報として「昨日、狂犬病予防法違反等で広島県動物愛護センター及びピースワンコ・ジャパンを告発した」と書かれていました。

 その後に「岡山県動物愛護センターが施設に立入した結果等の問い合わせに対して一部回答した」とあるのは、その外部の情報提供者とのやり取りの中で、前日に行ったばかりの岡山県の検査の内容について情報を共有したということでしょう。

 通常、動物愛護センターが検査に有無やその内容について問い合わせに答えることはありません。しかし、情報提供者からの情報をもとに岡山県動物愛護センターがピースワンコ西山犬舎に立ち入り検査したのなら一定の情報共有がなされたことにも納得がいきます。

 つまり、ここから推測できるのは、外部の情報提供者は、広島県や岡山県にあるピースワンコの犬舎内で狂犬病予防法の義務が守られていないことを知っていて、両県の動物愛護センターに改善を指導するよう繰り返し求めていたのではないかということです。

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6、広島県に泣きつくピースワンコ

 そして、その情報提供者は当然のこととして広島県警など関係機関にも告発しようと動いていたに違いありません。

 2017年12月26日は、まさにこの情報提供者がピースワンコの狂犬病予防法違反を広島県警に告発しに出向いた日なのでしょう。

 両県の動物愛護センターには警察への告発の予告もあったのではないでしょうか?

 これを受けて、ピースワンコの法令違反を長い間、見て見ぬふりをしてきた広島県動物愛護センターは急遽、電話をして指導した事実だけを残そうとしたのでしょう。

 ピースワンコ運営団体のPWJ幹部はその後、厚生労働省からの出向者で、PWJ役員とも旧知の仲である田中剛・県医療・がん対策部長に電子メールを送って、現場の愛護センターの頭越しに県との話し合いの場を作ることを持ちかけました。そして、田中部長はその働きかけを受け入れました。

 一方、岡山県は外部からの情報提供に驚いて、まさかという思いで現地調査をやり直したに違いありません。8月の検査では把握していなかった広島県神石高原町でのピースワンコの犬の収容状況を聞き出そうとするなど、問題の深刻さに初めて気が付いた様子が伝わってきます。

 以後、岡山県はピースワンコの施設増強に対して強い拒絶反応を示すようになります。(続)


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