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コロナ前は国会議員2442人が外遊、外務省の在外公館便宜供与集計

批判渦巻く自民党女性局フランス研修


 自民党女性局のフランス研修への批判がおさまりません。内閣改造で入閣も予想されていたという松川るい局長(参院議員)が子連れで参加し、大使館に預けていたことも明らかになって、地元大阪では自民党支部長交代を求める声も出ています。

 消費者問題の取材で私もお世話になったことがある弁護士の紀藤正樹さんは、Twitterで「国会議員の海外視察時に付きそう大使館員の給与も税金です。私人の旅行と違います」とコメントしました。

 いったいどのくらいの数の国会議員が外国に旅行して大使館・総領事館など日本政府の在外公館から便宜供与を受けているか、外務省の内部資料「2019年度便宜供与集計」からご紹介しましょう。

行政文書「便宜供与集計表」を読む

 2019年度と比べて、その後の3年間で日中関係は悪化し、逆に日韓は歩み寄りの兆しがみられるという状況の違いはありますが、コロナ流行前のデータですから平時にどのくらい数の国会議員がどんな国・地域に行っているかを知る手がかりになります。(以下は過去の投稿を一部書き換えた内容です)

 便宜供与とは、日本からの来訪者を出迎えたり、案内したりすることです。会食でもてなす場合もあります。外務省は毎年、この資料を作成して省内で共有していて、行政文書ですから誰でも情報公開請求すれば閲覧、入手できます。

 2019年度に、在外公館の世話になったグループや個人(一行)は21,765で一行人数合計は115,775人もの数に上ります。そのうち国会議員の数は2,442人です。

 便宜供与には官僚や地方議員、さらにはメディアを含む民間人に対するものも含まれており、全体数からみれば、国会議員訪問は2%に過ぎませんが、集計表でも国会議員のみ内訳が示されているように外務省・在外公館側にとっては最優先して対応すべきVIPたちなのです。

台湾訪問者の増加に中国が懸念

 さて、訪問国の首都にある日本大使館を訪問した国会議員の数を抜き出してみると、最も多かったのは中国で117人(延べ349人)でした。次いでタイの106人(延べ200人)、米国の73人(延べ289人)と続きます。中国がトップというのは想像できましたが、タイが米国を抑えて2位とは意外でした。

 もっと驚いたのは、大使館ではなく非政府間実務交流の窓口しかない台湾の台北が第5位の70人(延べ211人)だったことです。韓国の63人(延べ154人)より多く、香港の24人(延べ71人)のおよそ3倍です。

 日本の国会議員が大勢台湾を訪れていることを中国は大いに警戒したことでしょう。2019年、自民党の二階俊博幹事長は4月に経団連、JA全農のトップらを連れて訪中した際、習近平国家主席が会談に応じています。

 二階氏は同年11月にも自民党・公明党と中国共産党との定期対話(日中与党交流協議会)のため訪中を計画していました。国会開会中という日本側の事情で中止されましたが、その舞台裏では、超党派の日華議員懇談会メンバー19人が10月に台湾を訪問していたため、中国側が「台湾の倍以上の議員の訪問」を要求していたとする報道もありました。

便宜供与、総延べ人数は91万人

 私が便宜供与集計の存在を知ったのは、1990年代初め、外務省の記者クラブ(霞クラブ)に在籍していたころです。当時の資料は廃棄して手元にありませんが、国会議員の訪問先として圧倒的に人気が高かったのはパリと香港だったと記憶しています。美食とショッピングのまちです。バブルの余韻も残り、いま以上に観光気分で外遊する国会議員が多かったのではないでしょうか。

 当時、私は経済部記者でしたが、「新聞で記事にしようか」と政治部に相談したら「天に唾するようなもの」と諭され、断念しました。閣僚の外遊に同行するときなどメディアも在外公館の世話になりっぱなしのことが多いからです。

 それにしても在外公館が世話をする日本からの来訪者は年間11万人、総延べ人数にすると91万人という数、どう考えればいいのでしょう。2019年(暦年)の日本人出国者数は2008万人ですから割合としてはすくないように見えますが、11万人もの人が本当に在外公館の便宜供与なしに訪問目的を果たすことができないものなのか、精査してみる必要があると思います。きっと、旅行代理店が有料で引き受けるべきものが多々紛れ込んでいるはずです。


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