教えて大西さん、ピースワンコのこと㉖大丈夫ですか?「鑑札」無用のドッグラン運営

1、鑑札・注射済票の装着は常識

 犬を思い切り走らせることができるドッグラン。他の利用者がいる場合もありますし、逸走する危険もゼロとはいえません。ふつうは利用にあたってのルールがそれぞれに取り決められています。

 感染症予防などのためワクチンを接種しておくこと、危険などを回避するため飼い主はリードを持参しておくこと等です。

そして、利用ルール以前の「常識」ともいうべき義務が、市町村への犬の登録や狂犬病予防注射を済ませて、その証明である鑑札や注射済み票を装着することです。狂犬病予防法に規定された義務です。

 例えば東京都公園協会が管理する桜ケ丘公園(多摩市)の場合、ドッグランを利用するための登録には自治体が発行する「犬鑑札」と「狂犬病注射済票」が必須です。獣医師が発行した「注射証明書」では代用不可です。

 マナーとしても「犬に鑑札及び狂犬病予防注射済票を装着します」「登録カードを見える位置に身につけます」などを約束することになっています。狂犬病予防法の規定を考えれば、これがふつうのあり方だろうと思います。

2、大西代表を囲む犬たち「無鑑札」か

 さて、合計2800頭もの保護犬を世話しているNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ,広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が運営している神石高原ティアガルテンのドッグランはどうでしょう?

 神石高原ティアガルテン全体は町から指定管理者に選任された神石高原ティアガルテン社(河相道夫社長)が町からも費用を受け取って運営していますが、ドッグランの運営は犬保護事業の延長としてPWJが受け持っています。

 まずこの写真を見てください。

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2019年5月18日、東京新聞夕刊1面に掲載されたPWJの保護犬事業「ピースワンコ」の記事です。

 ドッグランの中で大西健丞代表理事を囲むピースワンコの保護犬たちはどれも首輪をせず、したがって鑑札や注射済票をしている様子がありません。

 その直後、6月にPWJが動物愛護管理法違反容疑で書類送検されることを予期して、そのダメージを前もって抑え込んでしまおうという意図を感じるくらい「美談」に仕立てた記事でした。

3、生後1年未満は狂犬病予防接種不要?

 気になって、神石高原ティアガルテンのドッグランの「ご利用上の注意」を読んでみると、桜ケ丘公園のような鑑札装着義務のことなど一切触れられていませんでした。

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それどころか、狂犬病予防法の理解が疑われるような文言もあります。

「1年以内に予防接種(狂犬病・混合ワクチン)を受けたことが分かる証明書をご提示ください。1歳未満の仔犬は、狂犬病予防接種を受けていなくてもご利用いただけます」

 という記述です。

 しかし、狂犬病予防法施行規則にはこうあります。

第十一条 生後九十一日以上の犬(次項に規定する犬であつて、三月二日から六月三十日までの間に所有されるに至つたものを除く。)の所有者は、法第五条第一項の規定により、その犬について、狂犬病の予防注射を四月一日から六月三十日までの間に一回受けさせなければならない。ただし、三月二日以降において既に狂犬病の予防注射を受けた犬については、この限りでない。

 2 生後九十一日以上の犬であつて、三月二日(一月一日から五月三十一日までの間にその犬を所有するに至つた場合においては、前年の三月二日)以降に狂犬病の予防注射を受けていないもの又は受けたかどうか明らかでないものを所有するに至つた者は、法第五条第一項の規定により、その犬について、その犬を所有するに至つた日から三十日以内に狂犬病の予防注射を受けさせなければならない。

 ややこしい構成ですが、第2項をみても、生後1年未満で予防注射をうたなくていいのは、「所有して30日以内」に限られ、それ以外は法令違反となるわけです。

4、町の委託事業、返上しては?

 繰り返しになりますが、神石高原町や岡山県高梁市にあるPWJのシェルター(犬舎)では、狂犬病予防法で義務付けられた犬鑑札を装着していない犬が多数いるようです。神石高原町や高梁市がそれぞれ確認し、改善を指導しています。

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 2018年に広島県警の捜査で、狂犬病予防接種を行っていなかったり、鑑札を装着していない事例が多数発見され、書類送検もされましたが、広島県や神石高原町はそれらの法令違反は過去のことで、書類送検時点では解消されていると発表してきました。

 しかし、現実はそうなっていないことが今年6月の岡山県高梁市の調査をきっかけに明るみに出て、広島県や神石高原町もPWJにどうやって犬の鑑札装着を促すか苦慮しているようです。ホームページやSNSにも上のような写真が掲載されていて、利用者にも法令違反を唆しているのかと勘ぐりたくなります。

 PWJはドッグランの運営や町役場からの委託で動物愛護啓発活動や犬の保護事業も行っていいます。
 法令を軽視したり、法令について間違った知識を持っているようなら、最寄りの保健所や動物愛護センターで幹部職員を含めて研修を受けたほうがよいかもしれません。大西さん、公費事業から手を引いてはいかがですか?

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