教えて大西さん、ピースワンコのこと㉗英国在住のヘルス政策専門家・渋谷健司理事の役割は何でしょう?


1、ドッグラン注意事項の間違い


 神石高原ティアガルテンのドッグランは、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、神石高原町、大西健丞代表理事)の保護犬事業部門ピースワンコが運営しています。

 そして、このドッグランの「利用上の注意」にこう書いてあります。

 「1年以内に予防接種(狂犬病・混合ワクチン)を受けたことが分かる証明書をご提示ください。1歳未満の仔犬は、狂犬病予防接種を受けていなくてもご利用いただけます」

 特に後段の「1歳未満の仔犬は、狂犬病予防接種を受けていなくてもご利用いただけます」という点が法令違反を誘発する恐れがあることは前回ご紹介しました。

 神石高原町環境衛生課は29日、神石高原ティアガルテンのドッグランの責任者を役場に呼び、法令に反する内容を盛り込んだ「利用上の注意」を訂正するよう指導したそうです。

2、県・町の指導も馬耳東風?

 ピースワンコはドッグトレーナーの養成コース「PRPDOGスクール」を毎年度開講しています。大西代表理事夫人の大西純子さんがトレーナー、講師として生徒たちを指導していて、「狂犬病予防法」も学ぶことになっています。しかし、お粗末なドッグラン利用にあたっての注意事項をみる限り、ピースワンコの身内に講師をまかせていいのか疑問です。

 代表理事以下幹部職員やスクールの講師は、広島県動物愛護センターか保健所に行って、譲渡を受ける団体が当然理解しておくべき法律の内容についてしっかり研修を受けたほうがよいでしょう。

 PWJのピースワンコには、狂犬病予防法に関してもう一つ看過できない問題点があります。法律で義務付けられた鑑札や狂犬病予防注射済票をシェルターに収容している犬に装着していないという問題です。

 彼らは犬の情報を記録したマイクロチップを体内に埋め込んであるからとか、鑑札を誤飲する恐れがあるからという理由を並べて、鑑札を装着してこなかった言い訳をしているようですが、狂犬病予防法違反を免れることはできません。

 上の写真のように、ピースワンコのホームページやSNS上のドッグランに関する情報発信でも、通常なら鑑札を取り付ける首輪をしていないワンコの写真がたくさん登場します。広島県動物愛護センターや神石高原町役場は、狂犬病予防法の義務だとして鑑札などをちゃんと犬に装着するようにPWJを指導しているというのですが、こうした写真を目にすると、PWJは「馬耳東風」のようですね。

 PWJが鑑札装着しない犬をホームページに堂々と掲載しているのは、「日本には狂犬病はないから、神経質にならなくていい」と内心考えているからではないでしょうか?鑑札を付けない限り、ピースワンコの犬もここで遊ばせてはなりません。

3、ワンコ担当を自認する渋谷健司教授

 私が疑問に思うのは、大西健丞代表理事から誘われて、2014年4月以降、PWJの理事を務めている渋谷健司氏(元東京大学医学部教授、現キングス・カレッジ・ロンドン教授)の役割です。

 渋谷氏は、公衆衛生・保健学の専門家で、新型コロナ対策についてもWHO事務局長上級顧問の肩書などを使って、テレビをはじめとする日本のメディアに頻繁に登場し、PCR検査の徹底を訴えていたのをご記憶の方も少なくないでしょう。

 昨年春に東大を退職し、英国に研究拠点を移したはずですが、「無報酬」のPWJ理事職には引き続きとどまっています。

 大西氏と渋谷氏は塩崎恭久元厚労相を通じて知り合ったようで、大西健丞氏の著書「世界が、それを許さない。」(2017年、岩波書店)によると、塩崎厚労相時代に設置された「保健医療2035」策定懇談会の座長(渋谷氏)と委員(大西氏)という関係でもあったようです。

 大西氏の著書に収録されているPWJ20周年イベントでは、犬好きの渋谷氏が「ワンコ担当理事でいいですか」と断ったうえで大西氏から依頼された理事就任を引き受けた経緯も紹介されています。

 「ワンコニャンコというのはやっぱり社会の弱者であって、結局彼らを助けるということは、回り回って自分たちに返ってくる。日本の場合はセーフティネットが非常に弱いですし、ワンコニャンコを助けるスキームも、ちゃんとお金をまわすしくみをつくることによって、自分たちの医療もなんとかなるんじゃないか。そういう思いで一緒にやっている」

 渋谷氏はイベントでそのように語っていました。

 しかし、感染症の専門家でもある渋谷氏が担当を自認するピースワンコの狂犬病予防法違反をそのままにしていることが解せません。自慢のドッグランの利用上の注意にしてもそうです。

4、渋谷氏に提言作成費600万円支払い

 渋谷理事は、まさか狂犬病予防法を読まずにピースワンコの会議に出席しているのでしょうか?もし、その責任を果たせないのなら渋谷氏は退任したほうがいいと思います。

 PWJ理事としての渋谷氏の報酬はゼロですが、彼はPWJから提言を作る業務の委託を受けて、かなり高額なお金を得ています。

 2018年3月から2019年1月までで574万0353円、2019年2月から同4月まで28万7588円です。合計602万7941円を渋谷氏が「ヘルス政策提言事業外注費」として個人で受け取っているのです。


 NPOの理事が報酬をうけとるには様々な制約があります。利益相反になりかねないので、理事との金銭授受を伴う取引は財務諸表で明らかにし、説明責任を果たします。

 決算資料では「ヘルス政策提言事業外注費」とあるだけで内容をうかがい知ることは極めて困難です。ふつう、実験を伴わず、リポートを作成するくらいの研究に600万円超の費用を渡せば、かなり分厚いリポートが期待できそうです。

 情報として開示されていても内容が十分にわからないので、渋谷理事に対する「ヤミ報酬」ではないかと疑うひとも出てくるかもしれません。PWJはこの提言が一体どのように活用したのか、その内容を含めてしっかりと情報開示して欲しいと思います。

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