ここが知りたい!ピースウィンズ・ジャパン「内輪の人々」とのおカネの流れ②報酬と給与は別モノ

その2、給与としての役員に対する支払い

 役員名簿では理事全員が無報酬になっているのですが、「役員等に対する報酬等の状況」という文書には、C理事とD理事の2人の報酬額が書き込まれています。

 NPO法の解説サイトによると、「報酬」は理事等の役職についていることへの対価なのに対し、「給与」は働くことへの対価なので、理事であっても法人のために働いて受け取ることができるわけです。

 法人税法上は、給与だって役員報酬と分類されるそうで、上記の文書では理事に支払った給与の状況を報告したものだと考えられます。

 広島県県民活動課に尋ねたら以下のようなコメントが返ってきています。

 「第4表付表1では、役員に対する報酬又は給与の支給等について記載するように求められていますが、「役員に対する給与」を記載する欄が設けられていないことから、「1役員報酬の支給」欄に「役員に対する給与」も含めて記載することが望ましいとされています」

 2017年度はC理事1680万円とD理事984万円、2018 年度はそれぞれ1440万円と854万円です。

 比較するのが妥当かどうか、迷いますが、それぞれ独立行政法人国際協力機構(JICA)の理事、課長に相当するくらいの年収水準です。

 ボランティア活動は無償という思い込みを抱く人がいまも少なからず残っていますが、それは間違いです。有償であった方がスタッフも集まりやすく、事業も長続きするはずです。

 NPOの創設や普及の過程で、ボランティア活動に対する一般社会の認識はかなり変わってきました。

 ただ、いまだ賃金の支払いに苦慮する法人が多いのも現実です。PWJの理事2人だけを抜き出せば日本のNPOとしては極めて恵まれた報酬を受け取っているといってよいでしょう。

 セレブの真似をして、クルーザーを操縦したり、ヘリコプターで知り合いを離島に案内したりする費用を個人で捻出するには、まだ少し足りないくらいかもしれません。

 しかし、PWJの提出文書を読む限り、重要な理事にはNPOの職務に専念するにふさわしい給料がPWJが集めた浄財から支払われています。

 それにふさわしい仕事を行っていることを世間が納得する形で示して欲しいものです。

 さて、それでは、一般のスタッフの収入はどのくらいなのでしょうか?

 2019年4月22日付で広島県知事あてに提出されたPWJの「認定特定非営利活動法人等の役員報酬規程等提出書」には、PWJの「賃金規定」も添付されています。

 規定によると、「基本給は全員20万円とし、改定はしない」ということです。

 基本給とは別に役職手当、職能給、経験給、危険地手当、扶養手当、調整手当が加算されて基準内賃金となり、さらに通勤手当が支給される仕組みです。

 経験給は1年ごとに5千円で最高5万円、扶養手当は子供1人につき2万円です。賃金は毎年2月1日に見直し、団体に業績によっては賞与を支給することもあるということです。

 実際のところはどんな支給状況なのでしょう。

 認定NPO申請に必要な「第4表付表1」という文書には、給与を得た職員の総数及び総額も記されていて、2018 年度は276名、5億8012万円となっています。

 職員1人あたり210万円程度の年収です。

 正規の職員であれば、採用されたその時点で基本給20万円は保証されているので、年収は最低240万円はあるはずです。諸手当を含めて年収300万〜350万円は受け取っていそうな感じです。

 1人あたり給与がそれよりかなり低いということは、多くの職員が非正規雇用のパート、アルバイトのスタッフということなのでしょう。

 昨今の人手不足を考えれば、若い世代が定着するのにはちょっと厳しい職場かもしれません。

 ちなみに2014年度は73名、1億6034万円で1人あたり219万円でした。

 シェルター付近で、犬を散歩させているPWJの高齢スタッフを見かけたことがあります。

 平均収入が下がっているのは、犬の世話をするピースワンコ事業が拡大して、短時間勤務のスタッフの割合が高まっているからだと思われます。(続)

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