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教えて大西さん、シビックフォース代表理事を辞めた理由⑥グループ蝕む、安易で危険な資金流用(最終回)

APADジャパンも代表者交代 

 内閣府NPOホームページで、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)のグループ団体の1つ、佐賀市に本部を置くNPO法人アジアパシフィックアライアンス・ジャパン(APADジャパン)の最新情報をチェックしてみると、ここも公益社団法人Civic Force(シビックフォース、東京都渋谷区、根木佳織代表理事)と同じように事務局長の根木佳織氏が代表者に就任していました。

 APADジャパンのホームページで「団体概要」の欄を開くと、代表理事はまだ大西健丞氏のままになっています。これは更新が遅れているだけなのでしょう。内閣府のサイトの最終更新は12月24日となっていました。代表者交代はつい最近のことと思われます。

 APADジャパンの定款では、「代表理事はこの法人を代表してその業務を統括する」とあり、理事の互選で選出されることになっています。根木氏が理事になっていなかった場合は、総会での議決を経て、互選ということになります。PWJと同じく1月末決算の法人ですから、任期途中での代表交代ということになります。

 いままで、新しい法人を作るたび、すべて代表者に就任し、その地位を手放さずにきた大西健丞氏のやり方には、無理が生じているようです。そして、だれかに諭されたのか、大西氏が兼任した代表ポストを徐々に手放していることを歓迎したいと思います。

利益相反制限、公益法人より厳しく

 公益社団法人シビックフォースでは、最大3億円の資金をPWJに貸し付けるにあたって、本来公益目的の事業に使うべき資金を確実に回収するため、借り手、貸し手ともに代表者が大西健丞という同一人物であることの解消、返済計画の明示、担保の設定などが議論になりました。

 利益相反取引に関しては、公益社団法人よりもNPOの方が規制は厳しく、厄介です。公益社団法人でも、理事の競業や利益相反取引は理事会承認が必要ですが、NPOの場合はそうした契約を結ぶ前に以下のような手順を踏まなければなりません。

・総会で当該契約の締結にあたって法人を代表する「特別代理人」の候補者を選任する。

 ・所轄庁(内閣府、都道府県等)に「特別代理人選任請求書」を提出する。

 もちろん、理事長以外に代表権を持つ役員を選任していれば、その役員が法人の代表者として契約を締結できます。以上は内閣府の解説を参考にしました。

 実際、PWJが特別代理人を選任した例をみてみましょう。

PWJ理事を「特別代理人」の候補に

 まずは、2017年4月19日(水)に開催されたPWJの通常総会議事録からの抜粋です。

「特定非営利活動法人瀬戸内アートプラットフォーム(SAPF)への貸付金に関連してSAPF所有の土地・建物に抵当権を設定するため、理事山本(長瀬)理夏を特別代理人の候補者に選任することが提案され、全会一致で承認された」

 総会は東京都渋谷区にあるPWJ東京事務所で開かれました。審議事項は2016年度決算報告など5つ。そのうちの1つが特別代理人候補の選任でした。出席者数は18人で正会員総数(27人)の3分の2でしたが、書面による参加が14人だったので、実際に出席した正会員はたった4人だけでした。

 この総会決定を受けて、理事の1人である長瀬理夏氏は承諾書を大西健丞代表理事に渡します。PWJはこの総会議事録、承諾書の写しも含めて広島県に特別代理人選定を申請します。

 そして、広島県は2017年5月9日付で湯崎英彦知事の名前で「申請の通り選任します」「被選任者名 長瀬理夏」とする指令書を発出します。NPOは所轄庁である県の了解なしに利益相反取引を行うことは禁じられているわけです。

選任前に貸し付け実行済み

 ところで、PWJによるSAPF向け融資はいつ実行されたのでしょうか?実は特別代理人の選任よりも2年近く前、2015年9月30日付でPWJは6千万円をSAPF向けに貸し付けていたのです。利息は年率2.2%でした。

 これでは利益相反の弊害を取り除くことにはなりません。抵当権設定は知事による選任が完了した2017年5月以降ですから、それ以前はPWJによるSAPF向け貸し付け6千万円はどのような貸し倒れ防止策をとっていたのでしょうか?もし、この貸し付けが無担保、無保証ということであれば、NPO の資金の使い方としては極めて危険で不適切と考えるべきでしょう。

 この借り入れ目的は、ゲストハウスの購入だと思われます。愛媛県上島町の無人島の豊島(弓削豊島42番地)にある元・高級ヴィラ「風の音」です。登記簿情報によると、2015年10月29日付で「合同会社風の音」からNPO法人瀬戸内アートプラットフォームに所有権が移転していました。「ふるさと納税」で高額寄付した人を招待するための宿に使う目的でした。

 しかし、「ふるさと納税」でゲストハウスに客を受け入れる事業も振るわず、SAPFは2019年にヴィラを投資家・村上世彰氏ファミリーの資産を管理する会社に売却しました。SAPFが村上氏から受け取った売却代金はPWJから借りた資金の返済に回ったとみられますが、PWJによるSAPF向け融資はなお1千万円ほど残っています。

APADジャパンの資金不足を補填

 代表者が大西健丞氏から根木佳織氏に交代したNPO法人アジアパシフィックアライアンス・ジャパン(APADジャパン、佐賀市)の資金繰りも要注意です。PWJから融資や寄付という形で資金提供を受け、何とかやり繰りしている状態のように見えるのです。

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 PWJは2018年5月31日に2千万円を年利2.388%でAPADジャパンに貸し付けています。担保や保証の状況は不明です。そして、1年後の2019年5月19日に回収しました。しかし、同日付でPWJはAPADジャパンに対し「捜索救助チーム育成事業」名目で2800万円を寄付しました。

 APADジャパンの決算は2019年1月期2300万円の債務超過でしたから、この寄付はそれを帳消しするのにちょうどよい金額です。2020年1月期はPWJなどからの寄付金でかろうじて当期正味財産増減額が2450万円ほどの黒字となり、債務超過から実際に抜け出すことができたのです。

 債務超過が続くと、金融機関との取引が困難になりかねません。それは2017年度に債務超過に陥っていたPWJが2018年度に現代アート作品の鑑定評価額を利益に繰り入れてでも債務超過を解消したことを思い起こせば、2期連続の債務超過がいかに法人経営にとって深刻な問題であるかわかります。

 APADジャパンは、PWJからの寄付という資金補てんがあってかろうじて命をつないでいる状態だとみることができます。しかし、そのPWJの資金繰りも、公益社団法人シビックフォースから借り入れた資金で支えられているのです。東日本大震災の時に多額の寄付金が集まったシビックフォースの余裕資金なしにPWJもAPADジャパンも満足な活動はできない実情のように思えますが、いまも4億円程度保有している財産を公益目的の事業に使うことが期待されているシビックフォースの資金が、実は都合よくPWJグループの金づるとして利用されているのだとしたら、非常に残念であり、また危険なことであると思います。

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 奇妙なことに、PWJはシビックフォースからお金を借りている立場にもかかわらず、2019年8月30日付でシビックフォースに対し2710万円を「西日本事業及び北海道事業」という名目で寄付しています。APADジャパンを含めて3法人が災害緊急支援「空飛ぶ捜索医療団」(ARROWS)を展開するために連携していることを訴えようとしているのだと思いますが、シビックフォースに実際、どの程度、業務遂行能力が備わっているのか、よくわかりません。外部に委託する事業が多いのです。

 APADジャパンが代表者を大西健丞氏から根木佳織氏に変更したのは、PWJとの利益相反関係の解消という点は歓迎すべきことです。しかし、資金繰りが厳しいPWJから再びAPADジャパンに貸し付けや寄付が行われる可能性があって、それに備えての代表者交代なのかも知れません。両団体の代表者がことなれば、形式上は利益相反が解消できますが、担保や返済保証などの設定状況も詳しく明らかにされなければ、妥当な取引かどうかを判断することはできません。

 大西氏が設立し、代表を務めてきた公益社団法人シビックフォースのほか、PWJ、APADジャパン、瀬戸内アートプラットフォームといったNPOは、代表者や理事、家族、幹部職員との取引が目立ちます。会員である幹部職員にも短期間、かなりの金額を貸していますが、それが何に使われる資金なのか、一般金融機関からの借り入れを促すことができなかったのか等々、もっと詳しく説明して欲しいところです。

 グループ内を循環するおカネも、社会貢献活動を応援する寄付金や助成金がもとになっています。それぞれが使命をもって活動する法人なのですから、安易に貸し借りや身内同士の寄付に使ったりするのは好ましいことではありません。

ふるさと納税で高級ヴィラ運営?

 ところで、NPO法人瀬戸内アートプラットフォーム(SAPF)は2020年6月に主たる事務所を広島県神石高原町から愛媛県上島町に移転しました。移転は上島町の「ふるさと納税」による支援を受け続けるためと思われますが、2020年度は上島町の名を借りての寄付集め(ガバメント・クラウドファンディング)は行っていないようです。

 SAPFは返礼としての宿泊サービスを提供するゲストハウスを村上世彰氏の関係する会社に売却してしまって、高額寄付者向け宿泊サービスを展開できなくなったのでしょうか?

 村上世彰氏が創設した村上財団に問い合わせたところ、財団から以下のような返信がありました。

 大西氏は、これまでいろいろと協働させていただいた中で立派な人物だと思っておりますし、ヴィラ風の音は、2007年ごろから何回も訪れており、その後買い取ってほしいと頼まれた際に、いろいろ思い出もあるところなので、個人資産として購入をいたしました。方針としては、利用したいとおっしゃられる方や方法があれば「ぜひどうぞ」というスタンスでおります。

 SAPFさえやる気があるなら、ゲストハウス「ヴィラ風の音」を村上氏から借りて、ふるさと納税向けに利用することは不可能ではないようです。

 ただ、1泊数十万円もの寄付を求めることが「ふるさと納税」の趣旨に沿ったものなのかどうか、それを非営利事業と呼んでいいのかどうか、大いに疑問に思います。このゲストハウス事業、もともとは、失敗して経営から外されたとはいえ、大西健丞氏が妹を社長に据えて、株式会社として儲けを目的に始めた観光事業でした。

 高級ヴィラとして再生したいのなら、「ふるさと納税」からの交付金などあてにせず、大西氏は銀行や投資家からお金を借りて、自分のふんどしで勝負すればよいのです。

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