食材宅配競争の盲点

経済紙である日本経済新聞の編集部門には、株式売買禁止のかなり厳しい内規があります。株式投資の経験もなく企業分析の記事を書くのもなかなか大変な作業ですが、これまでにも広告部門でインサイダー事件が起きたりしたので性悪説での対応がこれから先も続くことでしょう。

私は今年はじめに日経を辞めたので、頭の体操と少ないお小遣いの大化けを目的に株式投資をスタートしてみました。対象は、出荷する生産者に知り合いが多い宅配のオイシックスラ大地と、海の向こうの新聞、ニューヨーク・タイムズです。

オイシックスラ大地は、購入時点からアナリストたちが株価について「過大評価」と言っているのがわかっていましたが、案の定ズルズル値下がり。ニューヨーク・タイムズも円高で円換算価値は目減りしていて、株式投資の難しさを実感しています。

きょうは大井町でそのオイシックスラ大地の株主総会があったので出かけてみました。
「取締役に生産者の声を代弁できる人がいない。経営統合で登録生産者は4千人に増えたということだが、嫌になって辞める人もいると聞く。生産者の代表を2、3人取締役役に入れたほうがいいのでは?」
そんな質問をしてみました。

高島社長の回答は「悪くいうひとはいるものです」とつれないものでしたが、他の株主からも生産者との関係の希薄化を懸念する声が上がっていました。株主総会を欠席した農業団体代表からも「大地を守る会やらでぃっしゅぼーやのように生産者を支援するはっきりとした姿勢がない」という批判的な意見を聞いていました。

 これから効率のいい物流網の構築を含めてアマゾンや宅配のパイオニアでもある生協などとの競争が激しくなっていくと思います。

オイシックスは、老舗の大地を守る会、そしてらでぃっしゅぼーやを実質的に吸収統合して、グループの売上高を急増させています。出席者にはもれなくクッキーやジュースの手土産が渡されました。オイシックス・ラ・大地はおそらく「単価が高い加工食品」の「製造宅配」を理想としているのかもしれません。

 安心安全な生鮮野菜を中心とする食材の調達を増やし、待ち望む消費者のもとに届けていくというビジネスモデルは、物流コストの上昇で限界にきているのかも知れません。しかし、肝心の農業生産者とのネットワーク強化をおろそかにしていると、それをもとに作る加工食品も伸びが止まってしまうのではないかと心配します

これまでの売上高増加は単純に経営統合と加工品の比率上昇によるものです。根っこにある生鮮野菜の供給が減るとき、成長にブレーキがかかります。アメリカのIT企業みたいな無配当、株価上昇期待で資本を調達していく作戦は壁にぶち当たるのではないでしょうか?

オイラ大地による外国でのM&Aなどをみていても、付加価値が高い事業にリスクを冒してでも出ていかなければ成長が止まってしまう、という焦りにようなものを感じてしまいました。

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