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岡山県開示文書で読むピースワンコの諸問題⑤「岡山県で収容犬を増やさないように」~指導に逆行、施設拡張続ける


1、収容能力、当初50頭が800頭以上に


 認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が岡山県動物愛護センターに届け出た順に、岡山県高梁市西山地区でのピースワンコの保護犬シェルター(収容施設)拡大状況を確認してみましょう。

 2017年8月30日 ロッジ犬舎 最大飼養頭数50頭 高梁市西山地区で西山キャンプ場などを運営する地元の観光振興組合経由で借り受けた市有地に出来た最初の犬舎です。愛護センターは便宜上、ロッジ犬舎と呼んでいます。

 2018年3月23日 堆肥場跡地犬舎 最大飼養頭数150頭 高梁市西山地区の民有地(堆肥工場跡地)に新設。堆肥場跡地犬舎と呼びます。ロッジ犬舎から2キロ程度離れているため、施設の増築ではなく、新しい施設として岡山県の求めに応じて第二種動物取扱業届出書を提出しています。

 2018年8月9日 ロッジ犬舎、最大飼養頭数150頭に 2018年11月1日 堆肥場跡地犬舎、最大飼育頭数300頭に

 2019年4月1日 堆肥場跡地犬舎、最大飼育頭数400頭に
 
 2020年3月1日 堆肥場跡地犬舎、最大飼育頭数700頭に


 届出書や変更届を整理すると、高梁市内2カ所の犬舎の収容能力は合計して最大850頭程度ということになります。

 2017年3月の高梁市議会では、保護犬の収容頭数の見通しについて50頭~60頭程度と市側は見通しを述べていました。しかし、現実の問題としては、当初想定の10倍以上の規模の犬舎が登場しているわけです。

2、「全頭引き取り」で能力超過


  岡山県は保護犬をピースワンコに引き渡していませんので、ほぼ全頭が広島県動物愛護センターなど広島県内で保護、収容されていた犬です。

 2016年4月からPWJ/ピースワンコは「広島県内での犬の殺処分ゼロを実現する」として、広島県内の動物愛護センターから殺処分対象の犬を全頭引き取るようになりました。

 大西代表理事がのちに東京新聞の取材に答えて説明したところでは、年間1000頭引き受ければよいと想定したのに対し2016年度1400頭、17年度1800頭も引き取っていました。

 広島県神石高原町の犬舎では収容しきれなくなり、越境して岡山県にも犬舎を作ることになったのです。


3、譲渡も追い付かず、高梁市に隔離

 
 譲渡困難とされる犬もすべて引き取るのですからシェルターに滞留するのは当然の帰結でした。実質的には、譲渡しにくい犬を高梁市に移送し、隔離したのではないかと思います。

 2018年4月6日、跡地に完成した新しい犬舎を立ち入り検査した岡山県動物愛護センターの職員に対し、ピースワンコの責任者はこんな状況説明をしていました。

 「広島県と岡山県の施設で合計3000頭ぐらいいる。当初広島県で始めた頃よりだんだん増えて、現在は年間1300頭くらい入ってくる」

 「少しでも犬を出すため、湘南譲渡センター他4カ所で譲渡を行っているが間に合わないため、今回、新たな施設を建て、新規の届出をした」

 「施設を増やすばかりではなく、奈良県・九州に譲渡センターを作り、出来るだけ早く犬を出す予定になっている」

 「犬の登録は、神石高原町で登録している。また、狂犬病予防注射はスタッフ(獣医師)が行い、実施後に済票の交付を受けている」


 2018年前半といえば、ピースワンコ本部のある広島県神石高原町では収容頭数の急増で狂犬病予防注射が思うように進まない状態が2017年から続いて、大混乱が続いていた時期です。


4、狂犬病予防法違反の発覚防げ
 

 2017年12月末、狂犬病予防法違反で告発する動きが表面化して、PWJ幹部が親しい広島県幹部に相談を持ちかけていたことも前回紹介した通りです。エリート医系技官として厚生労働省から出向していた田中剛・医療がん対策部長(当時)の指示で食品生活衛生課や動物愛護センターは、法令違反だらけのピースワンコの世話に追われていました。

 広島県警が6月21日にPWJの事務所や代表理事自宅などを狂犬病予防法違反の容疑で家宅捜索して、ピースワンコの法令違反を県庁ぐるみで隠ぺいして、なかったことにしようとする企ては水泡に帰しました。しかし、岡山県動物愛護センターが立ち入り検査をした4月上旬の時点では、法令違反の表面化を回避できると広島県、PWJもまだ期待していたのでしょう。

 広島での県ぐるみの隠ぺい工作を知ってか知らずか、岡山県はピースワンコの施設拡張の動きを警戒していたようです。


5、なつきにくい犬の収容を計画

 「現在完成している犬舎は24部屋で、約4000万円かかっているが、ふるさと納税がうまく行っており、補助金をもらっている。将来、事務所・倉庫・犬房16部屋を増築予定である」 

 「ここの敷地(西山の堆肥場跡地)は広いので、将来は増築やドッグランを作る予定である。この施設に収容する犬は、野犬50%、元飼い犬50%(どちらも人になれていない犬)の割合で入る予定である」 

 饒舌なピースワンコ責任者の説明を岡山県動物愛護センターの職員たちは、呆れ顔で聞いていたに違いありません。 

「図面の施設がすべて完成したら連絡すること。また立入に来させてもらう」 

 「新たな施設を作るときは事前に連絡相談して欲しい」

  「岡山県で収容犬を増やさないようにすること」 

 2018年4月6日の立ち入り検査の最後にそう言い残して、西山犬舎を後にしました。

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