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ピースウィンズ・ジャパン「現代アートセンター計画」への疑念広がる~愛媛県上島町③「情報公開を慎重に」と町役場に依頼~説明責任果たさず

1、取材に迷惑をしている?

 「●●氏の取材には大変迷惑をしている。北九州市にも取材をしている」

 2020年8月31日、愛媛県上島町商工観光課の職員が電話をした際、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)の幹部はそんなことを口走ったそうです。

 ●●は筆者(樫原)のことを指すのでしょう。私は8月21日にPWJと上島町の関係について、いくつかの質問を送っていたからです。

 そのうちの1つは豊島現代アートセンターの建設計画に関わるものでした。

 町が土地を有償譲渡した用地を含む旧豊島コミュニティセンターの改修、再生計画は現時点でどのような状況ですか?払い下げの前提にあった北九州のCCAとの提携による美術関連品の提供、サポートに関しては、町が譲渡議案を決定したあとの時点では「白紙」であると北九州市担当部局及びCCA北九州のディレクターからも確認していますが、その後の状況はいかがでしょう?

 商工観光課職員はこの質問に回答するため、建設準備状況やCCA北九州との提携関係について、PWJに確認を求めたようです。

2、CCAとの提携と言わないで?

 PWJ側は、建設準備の状況について、2020年末から旧コミュニティセンター建物の取り壊し工事に取り掛かり、2021年度から地階ライブラリーの改修工事に取りかかると説明しました。

 計画では「事業パートナー」と紹介したCCA北九州との関係については「CCAとの提携により進めていると公言してしまうと先方へ迷惑がかかる可能性がある。なので、上島町にもCCAとの提携とは言い切らないで、プロジェクトに協力してもらっている程度のニュアンスにとどめておいてほしい」と町役場に対外的な説明ぶりを工夫するよう依頼しました。

 しかし、言い方をどう変えようと、CCA北九州という団体は協力には関わっていないのです。

3、ディレクター個人とのつながり

 上島町議会の藤田徹也議員の情報公開請求に応じて町役場が開示した行政文書から抜粋します。

 CCAから豊島で展示する書籍・資料等の半分の提供をすでに受けている。寄贈になるか、移管になるかはまだわからない。現在はPWJの倉庫で保管している。

 CCAという団体から資料を受けているわけではなく、PWJ■■氏とCCAディレクターの個人的つながりから提供を受けており、情報開示は慎重にして欲しい。

 PWJはそんな申し入れもしています。CCA北九州の協力を得ている等々と説明していても、やはり団体としてのCCA北九州との合意や取り決めはなく、そのディレクターである中村信夫氏が個人的に関わっているだけだったのです。
 
 そのディレクター本人さえも、PWJが上島町役場に提出した計画の内容を知らされていなかったのですから、中村氏と電話でやりとりをした時には私も呆れました。

 ■■はPWJ代表理事の大西健丞氏のことでしょう。そして、上島町役場職員からの電話を受けて説明をしたのは、国内部門を統括する國田博史部長だと思われます。

 國田氏は元朝日新聞記者でしたが、上島町のメモ通りならNPO職員に転じたいまは役場の情報公開を抑え込む側に回っているように思えます。残念なことです。

4、提供資料は個人所有物のみ?

 すでにPWJに託したという展示用資料は、きっと中村氏個人の所有物なのでしょう。なぜなら、CCA北九州が民間団体であるとしても、これまでに累計14億円余りの公費援助を受けているからにはライブラリーなどで収蔵・公開している資料や備品を無断で他の団体に貸したり、贈与したりすることは難しいはずだからです。いずれ北九州市やCCA北九州が確認することでしょう。

 繰り返しになりますが、PWJがまとめた計画書ではCCA北九州が「事業パートナー」として紹介され、以下のように事業の中核を担うことになっています。

・ライブラリー 現代美術センターCCA北九州が所蔵・管理している作品集、アーティスト関連書籍、1980年代以降の主要展覧会のカタログなどを開架展示し、来館者の閲覧に供する

・ギャラリー アート作品の展示スペースを設け、将来的には島を訪れる富裕層に作品を販売するギャラリーとしても機能させる。また、小規模な国際会議や現代アート関連のセミナーなどの開催スペースとしても活用する

・創作スペース CCA北九州との連携により、世界の中堅・若手アーティストを招聘し、島に長期間滞在しながら作品を制作する場を提供。作品の販売を仲介する。


 しかし、CCA北九州が事業パートナーという説明と現実は違うようです。

5、土地譲渡の取り消し求める声も

 このシリーズの1回目で紹介したように、工事着手も資金不足が原因で遅れています。

 上島町役場の職員や町議会議員の間でも、これまでのPWJの説明とかなり違うことを知って驚いたり、呆れたりする声が出ています。

 2020年12月15日の町議会本会議では、ベテランの寺下満憲町議から「PWJに譲渡した土地を町が取り戻してはどうか」という質問も出ました。

 上村俊之町長も「提案書(計画書)の中の内容が明らかに間違っているのであれば、対応の仕方もあるのではないかと思っているので、専門家の判断も仰ぎたい」と答弁しています。

 PWJの國田さん、私の取材で迷惑をするといういい方はちょっとひどいですね。

 迷惑したり、心配したりしているのは、CCA北九州が事業パートナーとして運営に協力する豊島現代アートセンターの開業を信じて、土地を払い下げた上島町役場や住民の方ではありませんか?


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