環境省「犬猫数値規制」検討会座長を嘲笑うタレント・浅田美代子さん、朝日Sippo・太田匡彦記者の大いなる勘違い
1、適切な準備期間設定求める
来年6月に導入する犬猫適正飼養のための数値規制案は、環境省の「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」がまとめました。
座長は動物行動学を専門とする東京大学大学院の武内ゆかり教授(中央環境審議会動物愛護部会臨時委員)です。
数値規制を導入するにあたって、留意すべきこととして、座長は以下のような提言(動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会座長提言)も同時に公表しました。
・数値基準は分かりやすい反面,それだけで判断できるものでもない。数値のみにとらわれると本質的な福祉が損なわれる危険性も考えておかねばならない。総合的な判断が必要とされる場面も多いことに留意すべきである。
・罰則を伴う遵守基準を設けることで,急激な経営方法の変革を迫られて事業者が破綻・廃業等により飼育放棄や不適正飼養に至る可能性を考慮し,国は適切な準備期間を設けるとともに,事業者や自治体は必要な予防策や対応策を講じなければならない。
新しい規制を導入する際に当然考慮に入れておかなければならない点について論じた、ごく常識的な意見であると私は思いました。
2、座長は流通や愛護の専門家ではない
しかし、そう受け取らない人もいるようです。動物愛護活動家として知られるタレントの浅田美代子さん、朝日新聞Sippoを中心に犬猫記事を書いている太田匡彦専門記者です。
以下、11月12日配信のYoutube番組「どうなる数値規制⁉ペット業界猛反発!私たちにできることとは」から抜き出してみます。Aは浅田美代子さん、Oは太田匡彦記者、Yは進行係の山路徹さんです。
A ちょっと私は、ごめんね、悪口になるのかな、座長どうでしょうねぇ。
Y あ~、東大の
O 大学院の先生ね。
A 彼女が言い出したんですよね、経過措置
Y やっぱり、どちらかというと、業界団体側をみてる感じはありますよね。
A ちょっと、こわいんですよね。
Y 日本の社会がそこまで、まだね、動物愛護の気持ちがこう、レベルが達していないこと言ってたことあるんでしょ。
A そうなんですよ
Y 何を言っているんだと、こんなにみんなでね今回の件についてはね、声をあげているのにね、我々の声を何だと思っているんだと。
A ああいうのは誰が決めるんですか?
Y 人選
O あれは、検討会の委員ですよね、あれは、則久(のりひさ)室長ですね。
A あ、元環境室長か。
O いまの話って、これからも実は関わってきていて、今後、検討会の中で解説書っていうのを作っていくんですね。いま浅田さんがいったように抜け道をどうやってふさいでいくのかっていうのが多分解説書に反映されていくわけですよ。おそらく、座長の問題は、座長の武内先生というのは東大の獣医の先生であって、流通の実態とか、一般市民の方が動物愛護についてどういう風に考えているとか、そういうことについては、まあ、ご本人も自覚あるでしょうけど、当然、専門家ではないわけですよ。
だから解説書を作っていくにあたっては、行政の現場で実際に取締にあたっている人とか、繁殖業者の実態を知っている動物愛護団体とか、それこそ浅田さんのように世論を受け止めてきて来た人たちですよね、そういう人たちが検討会の中に入らないとだめなんですよ。いままでは、数字を決めるのは獣医たちでよかったわけですよ。ある種ね。動物の動きがわかるしね。でもこれからは法律を守らせるか、繁殖業者がどういう人たちかを知らないと、できないですよね
朝日新聞の太田記者から「専門家ではないことを自覚せよ」と促されている武内教授は、検討会報告とは別に座長提言もまとめた狙いについて、検討会が採用を促している「数値」それ自体には科学的根拠があるわけではないこと、理想的な飼育形態のあり方についてはまだ討議不十分であること等を率直に認めるなど、科学者として十分すぎるくらい謙虚な姿勢をお持ちです。
3、浅田さんを検討委員に
浅田さんが武内座長の悪口を言うのは、座長が「経過措置」の検討を求めたからのようですが、「経過措置」の必要を認めない人のほうがむしろ少数派でしょう。
法律違反もおかさず事業を営んできた人たちに設備のやり替えや頭数の制限を実施するのですから、これが農業や漁業、中小企業相手の政策であったら相当な助成金を投入して経営改革を支援するはずです。
動物の短い命を考えれば、1年でも早く全面実施が必要だという浅田さんの気持ちもわからないではありません。しかし、来年6月に全面実施が望ましいというのなら、武内座長らによる環境省の専門家検討会が発足した2018年3月の時点で、せめて1人あたり飼養頭数の目安くらい環境省に示させて、都道府県を巻き込んで試行しておけばよかったのです。
浅田さんや太田記者は今回の数値規制案の原案を作った超党派動物愛護議連のアドバイザーとして議員らとともに政策に影響力を持っていたはずです。規制作りにかかわるものとして、そんな工夫もせず、「経過措置」不要と思う無知こそ恥ずべきです。
4、設備、員数などに経過措置
環境省は以下のように経過措置の検討方向について説明しています
・環境省、関係行政機関、第1種 ・ 第2種事業者等の連携を図り、基準の適用に伴う遺棄、殺処分、不適正飼養等を生じさせないよう、繁殖を引退した犬猫や保護犬猫の譲渡が促進される環境づくりを進める。
・飼養環境の改善を図るとともに、これらの環境づくりを進めるための期間も考慮し、飼養設備の規模、従業者の員数、繁殖に係る基準については、経過措置について検討する。
「我々の声」は天の声と言わんばかりの山路氏といい、浅田美代子氏こそ検討会委員にふさわしいとヨイショする太田記者といい、私は検討会座長の武内教授の謙虚さを少しは学ぶべきだと思います。
そのためには、案外、浅田さんや山路さん、太田記者に現場の専門家として数値規制の「解説書」づくりにかかわってもらうのが一番の名案かもしれませんね。環境省が受け入れるかどうか知りませんが。