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教えて大西さん、ピースワンコのこと⑯「宣伝」よりも「情報公開」を真剣に

1、譲渡申請書の開示には手間がかかる

 「一度に多くの開示請求があり、短期間に開示決定等をすることが困難である」

 広島県動物愛護センターから県情報公開条例の規定に基づき、行政文書の開示決定を1カ月遅らせて欲しいという通知が来ました。本来なら7月31日までに決定すべきところ、上記の理由により、8月31日まで期間を延長するという内容です。

 請求内容は以下の2件です。

 「2017年度、2018年度における収容犬に対する団体・個人からの譲渡申請書類一式(先日開示された2019年度分と同じ分類でよい)」

 「2016年度以降、県動物愛護センターが保護した猫を犬猫みなしご救援隊に公用車により搬送した記録一式(車両の利用時間、猫の頭数等の記録を含む)」

 広島県内での野良犬や野良猫の殺処分が「ゼロ」となっているのは、犬に関しては、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町)NPO法人動物愛護団体エンジェルス(滋賀県高島町)、猫に関してはNPO法人犬猫みなしご救援隊(広島市)の3団体に動物愛護センターが収容している犬猫をまとめて引き渡しているからです。

2、団体依存は持続可能なのか?

 PWJは2016年4月から「殺処分対象の犬を全頭引き取る」と宣伝してきましたが、2019年1月に「適正飼養」が可能な範囲で引き取る方針に転換し、自治体からの引き取り数に上限を設定しています。

 起訴猶予となったものの2018年に大西健丞代表理事の自宅やPWJ事務所などが広島県警の家宅捜索を受け、狂犬病予防違反が確認されたことが路線変更のもとになったに違いありません。PWJが「全頭引き取り」によって広島県の「殺処分ゼロ」を実現できた期間は思いのほか短く、2019年度には終焉していたのです。

 いずれにしてもPWJの失敗を受け、エンジェルス犬猫みなしご救援隊を含めたNPO3団体による大量引き受けが、「犬猫の殺処分ゼロ」を含めて持続可能な動物愛護モデルといいうるのか検証が必要です。

3、団体別集計表の開示を拒む

 広島県は登録団体や個人に対する譲渡状況を毎年、月別に集計しているわけですが、「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」として、集計情報を非開示扱いにしています。

 エンジェルスのように問い合わせれば、過去にさかのぼって各地の愛護センターからの犬猫の引き取り状況や個人向けの譲渡状況を教えてくれるところもあれば、大西さんのPWJ/ピースワンコのように一切回答してくれないところもあります。

 そこで先日、ダメでもともとという気持ちで、広島県動物愛護センターに2019年度の団体・個人からの犬譲渡申請書の受付状況に関する行政文書を開示請求したところ、申請書類がすべて開示され、集計により団体別の引き取り状況を確認することができました。

 そしてデータを分析した結果、愛護団体による引き取り頭数の大幅な減少を知り、その理由を広島県に質問したところ、県動物愛護センターが譲渡方針を今年1月末に変更し、「譲渡適性なしと判定されたら譲渡を中止し、安楽死させている」という事実も明らかになったのです。

 驚きでした。そこでより詳しく検証しようと、過去にさかのぼって、猫も対象に県動物愛護センターに対する譲渡申請書の写しの開示を求めたわけです。

 ところが、申請書類の枚数は膨大です。しかも、個人名や印影など黒塗りして隠す作業にはかなりの時間を要します。現場の仕事に追われている広島県動物愛護センターが短期間でそうした事務仕事をこなすことは難しく、開示決定を通知する時期を1カ月先に延ばすというお知らせが申請者(筆者)に届いたのです。

4、団体自ら活動の詳細公表を

 しかし、厚かましいようですが、そもそも団体別に集計した資料を公表できていれば、愛護センターの職員も私も黒塗りや集計・推定に無駄な時間を使わなくても済むはずです。プライバシー保護を徹底すべき個々の申請書という生情報に興味があるわけではありません。

 調査する側からいえば、県や市の動物愛護センターに登録して犬猫を引き取る愛護団体が自らその状況を公表してくれていれば、県に資料を請求する必要はなくなり、分析がもっと楽になります。滋賀県の動物愛護団体エンジェルスのようにPWJ/ピースワンコも引き取りや再譲渡、収容に関する情報を全部公開してもらえないでしょうかね。

 ピースワンコに関しては、引き取り総数から譲渡数を差し引いた頭数が収容頭数と一致しない「行方不明の800頭」という問題が生じて以来、残念なことに引き取り頭数の累計が公表されなくなっています。800頭も計算があわないということはあってはなりません。

 この数のワンコたちが死亡したのか、逸走したのか、詳しい事情を知りたい人が大勢いるのですが、その検証を妨げているかのようなPWJの姿勢には首をかしげざるを得ません。

 「全頭引き取り」という方針が2019年から「引き取り頭数に上限」という方針に変わっていたことを知らない支援者も多いと思われます。それが引き取り頭数の変化にどのように表れているのかも確認したいと思っています。

 2019年度の広島県動物愛護センターでの犬の殺処分は前の年度の3倍に増えていますが、これは愛護センターが譲渡適性なしと判定し、ピースワンコも引き取らない犬が増えたことが主な要因だと思われます。

 広告費をかけて「殺処分ゼロ」の宣伝するよりも、活動の実態についてもっと正しい情報の公開を進めて欲しいと思います。

 PWJが引き取りを控えているため、わざわざ遠方の滋賀県からやってくるエンジェルスが引き取らなければ、殺処分の数はもっと増えたはずです。そしてそのエンジェルスも少ない人数と予算でいったいいつまで広島県からの犬の大量引き取りが続けられるのか疑問です。

5、公用車で猫を団体に運ぶ

 広島県動物愛護センターは県外にあるという理由で、琵琶湖ほとりにあるエンジェルスのシェルターを訪問したことすらないようです。滋賀県に現地調査を依頼しているそうですが、何百頭もの犬の譲渡を任せる先の資格調査としては手ぬるいといわざるを得ません。

 当のエンジェルスの林俊彦代表さえも「一度はシェルターを見に来て欲しい」といっているくらいです。広島県から関西に送られる野良犬たちをどんな場所で一時保管し、個人飼い主に譲渡しているか見ていれば、ピースワンコのシェルター立ち入り調査の際の参考にもなるでしょう。

 猫の保護活動に関しても、広島県は「犬猫みなしご救援隊」に過度に依存しているという声をあちらこちらで耳にします。

 広島県から開示された行政文書の中に「広島県動物愛護センターは職員が公用車を使って猫を引き取り先の団体まで搬送しているが、税金と特定団体にのみ使用するのは不公平だ」という手紙がありました。

 愛護センターは「殺処分対象の猫の搬送については、県全体の利益のために実施しており、特定の団体への利益供与とは考えていない」と回答していましたが、とても奇異な印象を抱きました。個人や他の団体にも同じ対応をするのでしょうか?

 犬猫みなしご救援隊の2018年度(2019年8月期)事業報告書を読むと、①終生飼育活動として「一般家庭から犬8頭、猫1673匹、その他1匹を引き取りました」②譲渡活動として「広島市動物管理センターから犬46頭、猫2339匹、タヌキ1匹を引き取り、その後今まで引き取った動物たちを含め新しい家族へ犬39頭、猫748匹を譲渡しました」などとあります。

 シェルターでは、猫をいったい何頭(匹)飼っているのでしょうね。

 従業員1人当たりの犬猫の飼養頭数を制限する環境省の数値規制は、犬猫の販売業者や繁殖業者のほか、非営利の譲渡団体にも準用する方向だと聞いています。

 「全頭引き取り」などという看板を掲げていていたPWJ/ピースワンコや犬猫みなしご救援隊は、新しい数値規制をクリアできるだけの十分な施設とスタッフを擁しているのでしょうか?とても気になります。

 環境省が7月10日に公表した規制案をもとに、PWJを含むNPO自身の側から犬猫の収容やシェルター運営の現状を公表して欲しいと思います。

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