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愛媛県上島町、ピースウィンズへの「ふるさと納税」打ち切り、災害救助船の長期係留も不可能

PWJ支援の是非、町議会で応酬
 
 認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が現代アートセンター(CCA)を建設するといって無人島の町有地を買収するなどしている愛媛県上島町で16日、町議会の本会議が開かれました。

 PWJは上島町の名前も使って「ふるさと納税」の寄付を募ったり、最近購入した災害救助船の係留地確保を要求したりもしていて、複数の議員が一般質問でPWJに対する町役場の考え質しました。

 「ふるさと納税」の寄付でPWJを支援することの是非を問うた寺下満憲議員に対し、町役場総務課はPWJへの「ふるさと納税」による支援を2020年度限りで打ち切ると表明しました。

資金不足で事業化メド立たぬ事業も

 また、PWJが計画している「ピースワラベ国際高等学校」や「現代アートセンター」の建設は、資金不足で事業化のメドが立っていないとPWJから町役場が説明を受けていることが明らかにされました。

 PWJが所有する災害救助船が町内に長期係留できる岸壁の確保を希望している問題についても、町役場担当課は「すべてもの揚げ場として整備されている岸壁なので、長期間停泊できる施設ではない」として母港化は困難とする見解を表明しました。

 この船舶は現在、広島県尾道港の岸壁に係留中ですが、17日に期限が切れ、以後の係留地が未定ということです。

「ふるさと納税」でPWJ支援は条例逸脱

 ふるさと納税によるNPO支援は、条例では町内に主たる事務所を置くNPOに限り認められています。PWJは本部が広島県にあるにもかかわらず、町内での活動実績があるとして主たる事務所があるNPOに準じた特例扱いを受けていました。

 しかし、条例違反の疑いがあるとする筆者の記事を受けて、前町長時代の2019年12月の議会でもすでに担当の総務課長が「条例上疑義がある」と見直しを示唆していました。

 その後、大西健丞氏は町役場との話し合いでグループのNPO法人瀬戸内アートプラットフォームの本部を上島町に移転することを約束しましたが、PWJは本部を移せないと伝えていて、町役場内では「ふるさと納税」支援打ち切りも選択肢にのぼっていたようです。

 両団体とも今年度は上島町のふるさと納税で寄付を募るプロジェクトは行っていません。そうした事情もあってPWJに対する特例的な扱いも2020年度限りで打ち切ることにしたものとみられます。

災害救助船の係留は目的外使用

 一方、PWJを支援する立場から濱田高嘉議員はPWJが中古客船を購入して災害救助船に改造した「いぶき丸」母港を上島町内に確保してあげたらどうか、と提案しました。

 濱田議員によると、PWJはもともと客船だった同船舶を今夏、香川県観音寺市から購入した後、尾道市因島の造船所で救助船として改修したそうです。

 9月以降、数回にわたって上島町内の岸壁への係留許可が更新されましたが、町役場側は2週間ごとの更新時に「もの揚げ場なので救援船としての係留は目的外使用にあたる」と注意喚起し、本来の目的に使用する必要から退去を求めたそうです。

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 濱田議員は、PWJが上島町と災害時の協力協定を締結していることを理由にPWJ船舶の係留可能な場所を提供するよう迫りました。

 しかし、町側は「上島町は法治国家だ」(上村俊之町長)として、荷上げ用岸壁の目的外使用を続けようとするPWJ側の希望を拒絶しました。

町長選直前に前町長が協定締結

 町役場の説明によると、町役場がPWJと協定を結んだのは2020年10月22日で、当該船舶が係留を始めて1ヶ月半も経過した時点だったことも明らかにされました。

 上島町では10月25日に町長・町議選が行われて、前町長の宮脇馨氏が落選し、元職の上村俊之氏が当選しました。協定は町長選前に駆け込みで前町長がPWJと結んだものでした。

 筆者が閲覧した「ヘリコプター及び船舶による災害等緊急時の支援に関する協定」によると、上島町が支援を要請した際には船舶の係留場所を提供することとなっていますが、PWJが要望するような長期係留場所を提供する義務はないようです。

 また、支援は有償で、PWJは「航空機又は船舶が活動可能な場合は支援を行う」とあり、町役場にメリットがあるものとも言えず、上村町長は議会答弁で精査が必要との見解を示しました。

 筆者がPWJの地元、広島県神石高原町役場から情報公開制度を利用して入手した「ふるさと納税」を利用したPWJの今年度事業には、災害救助船の導入や活用をうたう事業はありませんでした。上島町も救助船の活動計画については説明を受けていないということです。

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