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茨城県産和牛にDNA父子矛盾、現在も調査を続行中

1、宮城、沖縄、山口に続き

 茨城県産牛で種付けに使用した種牛とは異なる遺伝子を持つ子牛の存在、いわゆる父子矛盾が発生したことが茨城県畜産課生産振興グループの調査で確認されました。遺伝子の不一致は昨年宮城県の獣医師による人工授精の不正が発覚して以来、沖縄、山口でも発覚しています。もはや話題にもならないくらいDNA不一致は蔓延しているのでしょうか?

 7月末に筆者のnoteに「茨城県で和牛の父子矛盾が発覚した」という匿名の情報提供がありました。8月2日に茨城県畜産課に問い合わせたところ、県も7月下旬に同様の情報提供を受けて立ち入り調査を実施して、その事実を確認したということです。

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2、市場経由せず相対で売買

 畜産課の電話による口頭説明では、和牛は家畜市場を経由せず、相対で取引されたとのことです。当初「人工授精卵による産子で、牧場での自然交配用の種牛(まき牛)として使う予定を中止し、去勢して肉用牛として飼養されているとのことです」と紹介しましたが、その後、6日になって茨城県畜産課から文書で回答があった際に再確認したところ、「牧場内で人工授精によって生まれた産子で、まき牛として使う予定を変更して、肉用牛として肥育農家に相対で販売した」ということでした。

 牧場から購入した肉牛農家が血統に疑義を抱いて検査を実施して発覚したということです。また、同じ牧場での人工授精による産子、同じ人工授精師が授精を手がけた産子のDNA検査などは「行なっていない」とする説明でしたが、6日付で届いた茨城県畜産課からの文書回答では、「当時AI(人工授精)で交配していた牛については調査を実施することも検討している」としています。

3、質問に対する茨城県畜産課の回答

質問(3日付)に対する回答(6日付)です。全文ご紹介します。

①立ち入り調査の根拠法と、確認された事実を教えてください
・いつ、だれが所有する和牛で、だれがどのような検査(DNA検査)をして、父子矛盾を確認したのですか
・どのようにして父子矛盾の疑いが出たのですか
 → 茨城県常陸太田市の肉用牛農家が飼養する黒毛和種。平成31年3月に市内の牧場から相対により購入。牛の形状から血統に疑問を持ち,和牛登録協会県支部に相談して検査を実施した。

・父子矛盾が生じた原因は何でしたか?
 → 調査を実施中。牧場の保有する同じボンベ内の他の精液の精液を誤って付けた可能性があり、子牛取り違えた可能性も否定できないため母子鑑定の遺伝子検査も実施中。

・当該人工授精師による授精記録・保管凍結精液等の突合作業をされましたか?
  → 授精記録の確認。牧場での生産牛の確認を実施。

・当該授精師もしくは当該農場の出荷牛について「全頭検査」を実施する必要はないのですか?
  → 当該授精師は当時の牧場の職員(H30 に退職)であり,当時AIで交配していた牛については調査を実施することも検討している。

・人工授精師への行政指導、処分はありますか?
 → 人工授精師には事実関係を確認後に必要に応じて法に基づく再発防止に向けた注意と指導を実施することを考えている。

・その事実を公表しましたか?(あるいは公表する予定はありますか?公表は業界向け、一般向け等どのような範囲ですか?)
  → 現時点で公表の予定はない。

②昨年夏、宮城県で大量の父子矛盾が発覚し、市場流通にも支障がでた際、農林水産省は都道府県に現場の点検体制の強化を求めました。茨城県ではどのような措置を講じていましたか?
  → 令和2年3月23日付「和牛血統矛盾に関する対応について」文書により、関係団体を通し、関係者への周知と適正な管理指導を依頼した。
    令和2年6月18日付「自己の所有する雌畜に行う家畜人工授精及び家畜受精卵移植の適正な実施について」文書により、関係団体を通し、関係者への周知と適正な管理指導を依頼した。

③この和牛は茨城県内産牛のブランドを使用していますか?茨城県では過去に同様の不一致は起きていますか?(父子矛盾の件数等を把握していれば、最近2~3年分について件数を教えてください)
 → 当該牛は,本県のブランド和牛「常陸牛」として出荷されることはないものと考えています。また、本県においては,他には父子矛盾の把握はしておりません。

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