広島県動物愛護センター②野良犬・野良猫が9割、殺処分削減へアクション・プラン


 広島県がPPP/PFI方式による県の新しい動物愛護センターの建設に取りかかるため、アドバイザリーの公募を始めました。

新しいセンターは民間資金で建設し、2023年度開所を目指します。県食品生活衛生課のサイトで関係資料は公開されています。ゼネコンなどが運営会社になる可能性もあります。建設業界ではそこそこ関心を集めているようです。

 https://www.kensetsunews.com/archives/381659

 この件は後に詳しくお知らせするとして、県動物愛護センターがどのような取り組みをしてきたのか、その歩みを振り返ります。

 前回の記事(このシリーズの①)で紹介したように、広島県が保健所業務を再編して県動物愛護センターが設置したのは1980年です。

野良犬など飼い主がいなかったり、何らかの事情で買えなくなったりした犬猫を収容するための定時定点引き取り事業も始まりました。

 定点引き取り方式は、飼い主のいない犬猫を減らすことに一定の効果があった半面、まるで動物をゴミのように扱い、犬猫の命を大切にする動物愛護に反するシステムだという批判がありました。

 広島県の動物愛護業務強化検討会は2014年9月、その定時定点引き取りの廃止を含めて、犬猫殺処分を減らすための対策をまとめました。新しい動物愛護センター建設もこの検討会の報告がもとになっています。公開で行われた検討会の資料をもとに広島県の取り組みを紹介します。

 検討会の委員は、県食品生活衛生課長、県動物愛護センター所長のほか、元動物園長、県会議員、獣医師会役員、動物愛護団体ら民間有識者を含めて7人でした。

 2011年度(平成23年度)の広島県の犬猫殺処分数(8340頭)は、都道府県で最多となりました。検討会の報告書は「犬猫の殺処分数の削減が本県の喫緊の課題」としています。

 大都市圏と違って、広島県には飼い主のいない犬猫の割合が高いのが特色です。動物愛護関係者と県の連絡組織である動物愛護管理推進協議会の作業部会の資料によると、2012年度に県内4つの動物愛護センターが収容した犬猫8972頭のうち87%が「飼い主不明」という状態でした。

 その作業部会は、犬猫の殺処分を減らすには野良犬・野良猫対策を重視すべきだとして、地域における野良犬(野良猫)対策協議会の設置、地域猫活動の推進、引き取る犬猫に関する情報収集などの取り組みを提唱し、2014年3月に県が改定した動物愛護管理推進計画にも盛り込まれていました。

 2012年度の県動物愛護センターのデータによると、定点引き取り頭数(犬猫合計)で最も多いのは、向島(むかいしま)、因島(いんのしま)など島嶼部が多い尾道市の同27頭でした。続けて県北の中心、三次(みよし)市の25頭、その東隣の庄原市の23頭などとなっていました。

 身近なところに引き取り場所があることで、以下のような問題が生じていました。

・気に入った野良犬・野良猫にエサやりを続けて、産まれた子犬や子猫を定点引き取りに出す

・不妊去勢手術をせず外飼いしている猫が産んだ子を野良猫として定点に出す

・不妊去勢手術をせず外飼いしている犬と野良犬の間に生まれた子を定点に出す

 人間の身勝手で子犬、子猫が動物愛護センターに持ち込まれ、殺処分に回されてしまうのです。

 定点引き取り先で、県の動物愛護専門職員が立ち会うことができない場合、終生飼養を指導して飼い主に翻意を促すことが難しいばかりか、野良犬・野良猫の親がどこをすみかにしているかなどの情報を集めることもできません。

一番問題なのは、飼い主のいる犬や猫も「飼い主不明」とごまかして定点に持ち込まれてしまうことです。

 2013年9月からは改正動物愛護管理法が施行され、引き取り拒否も可能になっていますが、法施行を境に飼い主からの犬猫持ち込みが激減し、減った分が「飼い主不明」として持ち込まれていることがデータからもうかがえました。(表参照)

 
 島嶼部や山間部には、交通不便な場所も多く、定点引き取りを廃止することへの抵抗もありました。「動物愛護センターまで持ち込むとなれば自治体や住民の負担が重くなり、犬猫の遺棄を増やす結果になるのではないか」と心配する声も当然のように上がります。

 しかし、検討会は動物愛護管理推進計画に盛り込んだ野良犬などの対策をしっかり実行していけば、定点引き取りをしても犬猫の遺棄は増えないと考えたのです。

 定点引き取りを念頭に、地域猫活動の推進、野良犬対策協議会の設置、モデル事業のスタートなど数多くの対策をアクションプランとして取りまとめています。

 検討会の報告を受けて、県食品生活衛生課が2014年10月にまとめた「殺処分削減に向けた取り組みのモデル事業について」でも野良犬協議会や地域猫のモデル事業について詳しく説明しています。

 これらを、殺処分への「入口」に向かう犬猫を減らす対策とすれば、殺処分を回避する「出口」の対策といえるのが譲渡活動です。

 検討会は譲渡や返還の活動を広げていくため、古い動物愛護センターの設備には限界があるとして、センターの新設を提唱しました。


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