農業とオートノミー

長野市に来ています。善光寺本堂地下で、まるで肝試しのように真っ暗な通路を歩いて「極楽の錠前」に触れてくる修行(お戒壇巡り)など終えました。

3日朝、旧知の地元選出代議士篠原孝さんから電話で叩き起こされ、朝食もそこそこに長野駅前での街頭演説現場に向かったところ、演説終了後に善光寺へ案内してくれたのでした。

篠原代議士とは2日、市内の勤労女性会館ホールで開かれた「信州発!持続可能な農業国際シンポジウム」会場で久しぶりに遭遇しました。埼玉小川町の霜里農場、金子友子さんのFacebook投稿で知り、面白そうなのでバスに乗ってやってきました。

環境負荷の大きな工業的農業からの転換を唱える「アグロエコロジー」の著者、ミゲール・アルティエリUCバークレー名誉教授、南米コロンビア出身でUCバークレー講師のクララ・ニコールズさんの講演やパネル討論を4時間聴きました。

もっとも印象に残ったのはマラウィでエイズ患者らの自立支援のため現地で農業も試みた結果、どうもがいても利益が先進国に吸い取られる現実に気づいて、まず日本で持続可能、自立可能な農業に挑むことにした松本市在住の元開発援助NGOスタッフの斎藤えりかさんの体験談でした。

彼女は都会から長野の農村に移り住んで自然栽培にチャレンジし、収穫から一年たっても腐らない玉葱の栽培もできるようになっているそうです。懇親会でお会いした時、玉葱送って欲しいとお願いしたのですが、まだ在庫があるとうれしい。

斎藤さんがアフリカで感じたことは、南米でも一般的に見られることで、零細な家族農業でも高価な外部資材に依存するあまり借金漬けになってしまいがちなのです。クララ・ニコールズ講師らは「食の民主化」が必要だと説きました。自己決定権(オートノミー)の確保はとても重要な課題です。

オーガニックというと普通は安心、安全という側面ばかり考えてしまうのですが、発展途上国での貧困や食料生産の実情をよく知っておかなければ、単にお金持ちの道楽のように思われてしまうかもしれません。

現にシンポジウムでも何か勘違いしているような発言もありました。東京から移住して、無投票で地方議員になって、まちの学校給食をオーガニックにするよう要望する、という軽さは、高齢化で地方議員のなり手が足りない平和ボケ、衰弱する日本ならではのものではないでしょうか。まあ、動機はともかく、定住に至ればそれはそれで結構なことなのですが。

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