PWJの要望検討、午前2時の部長指示 広島県開示文書から

◇その3、午前2時16分の部長指示(庁内メールシステム、広島県)
 
  広島県警が狂犬病予防法違反などの容疑でPWJや大西健丞代表の自宅を家宅捜索したのは2018年6月21日ですが、その半年ほど前、PWJは広島県庁幹部に相談を持ち込んでいました。

 「松岡さん、中村さん ちょっと検討してみて下さい 田中」

 動物愛護問題を所管する広島県健康福祉局医療・がん対策部の田中剛部長がそんな電子メールを部下の食品衛生担当監の中村満さんと食品生活衛生課長の松岡俊彦さんに送ったのは2017年12月30日未明です。

広島県が開示した庁内のメールのやり取りからは送信時間が午前2時16分だったことがわかります。仕事納めも終わり、県庁も年末年始の閉庁期間中です。

そんな時間に医療部門も統括する県庁の大幹部、田中部長が書いたメールの用件は一体なんだったのでしょう?

田中部長が部下たちへの指示とともに転送したメールの発信人は、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の幹部でした。発信時間は前日12月29日午前9時22分となっています。

黒塗り部分も多いのですが、部分的に公開されたところだけでもご紹介します。

**田中様

 お世話になっております。ピースウィンズ・ジャパンの●●です。

 6月には局長ともども神石高原町のシェルターまで足を運んでいただき、ありがとうございました。

 保護犬は昨日三原の愛護センターから入ってきた35頭を含めて■■頭近くに増えましたが、おかげさまでなんとか全頭保護を維持できています。年末ぎりぎりに恐縮ですが、狂犬病予防法に基づく犬の登録や予防注射についてご相談したいことがあり、ご連絡します。

 最近ある人が「ピースワンコが狂犬病予防法に違反している」と、あちこちの自治体や愛護センター、警察などに電話をしているようです。

 保護犬1頭1頭に鑑札や注射済票がついていない、という指摘です。

 行政の方には冷静にご対応いただいていますが、引き取り数が相変わらず多く、その世話に必死の状況で、登録や注射が追い付いていないのは事実です。

 神石高原町とも相談しながら、今後なるべく早く進めていきたいと考えております。

(以下15行程度は黒塗り●●が続く)

 できれば年明けに一度お時間をいただき、上記のことを含めた連携の方法などについてお話ができたらと考えています。

 ご多忙とは思いますが、ご検討いただければ幸いです。

 よろしくお願いします。**

 部下たちがこの田中部長のメール指示を知るのは正月休みが明けた2018年1月4日のことです。食品衛生課はさっそく、PWJに電話をして年末に田中部長に送ったメールの内容を再確認して、課内で回覧しました。

このころ、PWJの狂犬病予防法違反の噂が動物愛護関係者らの間で広まり、PWJは神経をとがらせていた様子がありありとわかります。

それにしても、PWJ幹部の連絡先がふだんの窓口である県動物愛護センターも本庁の食品生活衛生課も飛び越して、どうして田中部長なのでしょうか?

謎を解くカギは、広島県三原市にある県動物愛護センターが保管している動物取扱業監視台帳にありました。2017年12月26日に電話でPWJを指導していたのです。監視台帳には、職員の手書きで以下のように記されています。

H29.12.26 telにて口頭指導。狂犬病予防法に基づく登録及び注射を徹底すること、狂犬病予防法に基づく鑑札及び注射済み票を装着すること

 狂犬病予防法の規定は、人間と犬の共生のために飼い主が最低限守らなければならないルールで、それすら守れないのでは動物愛護を語る資格さえ疑われてしかるべきです。
 
 県動物愛護センターはそれ以前に何度もPWJ施設を立ち入り調査しています。度重なる調査でこうした基本的なところでの管理体制の不備に気が付かなったのが不思議なくらいです。それが、外部からの厳しい視線にさらされて、曲がりなりにも狂犬病予防法の規定を守るようPWJを指導し始めたばかりでした。

県庁の田中部長は国からの出向者で、感染症対策の専門家で、公衆衛生の専門家であるPWJ理事渋谷健司東大教授(当時)とも付き合いのある方です。そうしたPWJとつながりもある県庁の部長は、PWJからの依頼を受けて部下たちに一体何をさせようと考えていたのでしょうか?(続く)


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